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「愛してる。」
しおりを挟む陽夏のその一撃は陽夏の全ての体外魔力と体内魔力と生命力を使い切った技だったようだ。
陽夏は技によって出来たクレーターの中心地に倒れ込んでいた。
俺はその陽夏に向かって行き、すぐさま陽夏を治した。
「うぅ、あ、ありがとう…………って、やったの!? 終わったの!?」
「…………あぁ、全てが終わったよ。」
本当に、全てが終わったんだ。
俺達を脅かすカルト集団の主である現人神も死んだ。
そして、現人神によって全てのダンジョンが1箇所に集められていたようなので、世界中のダンジョンは全て消えた。
これによって世界には本当の平和も戻ってきたのだ。
ただ、魔法はまだ使えるようだけどな。
「はぁー、良かった、これで一件落着…………ともいかないよね。」
「…………そうだな。」
俺達は死んでしまったコナーの元に駆け寄る。
俺達はその所で思いっきり泣いた。
関係ないはずのモルフィスまで泣いていた。
コナーはもうこんな状態で人に見られたくもないだろう。
俺達は何とか周りにある布などを使ってコナーを巻いて姿が見えないようにした。
「…………それで、どうすればいいの?」
「えーっと、多分俺の事をまた切ればいいと思う。ある程度の能力は僕の元に戻ってきたりもしたし、死ぬ事は無いと思うから…………。だからえっと…………。」
「なに急にコミュ障みたいになってるのよ、そんな話してないわけ、で…………も…………。」
陽夏はそこでこの戦いが始まる前に言ったことを思い出したようで、思いっきり赤面する。
俺は耐えきれずにすぐに指示を出す。
「まぁ、いい、とりあえず俺の事を切ってくれ!」
「あぁ、うん、そうね!」
陽夏は俺の言葉に恥ずかしいからか、物凄い勢いで俺を3枚に下ろすという超人技を披露した。
俺は3人に別れた。
俺とモルフィスとゆうちゃんだ。
ゆうちゃんと俺は思いっきり抱き合う。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
ゆうちゃんはずっと俺の事を抱きしめ続ける。
その上からさらにもう1人俺を抱きしめた。
陽夏だ。
「本当に…………心配したんだからぁ!」
「あぁ、2人とも、本当にごめんな…………。」
俺は2人の頭をポンポンと撫でる。
…………あぁ、本当にこのままこのふたりと一緒に居たい。
だが、もうそれも無理みたいだ。
「なぁ、モルフィス。」
「な、何ですか? 晴輝さん。」
「ははは、そんなに畏まらなくったっていいって、さっきまでの威勢はどうした?」
「いえ、俺はあなた達に酷い事をした罪人です、そんな態度では…………。」
「まぁ、いいよ、一つ頼みたい事があるんだ。」
本当はこいつに頼む仕事は俺がやりたいことだった。
しかし、それももうできない。
「陽夏とゆうちゃん、俺の大切な人を、お前が守ってくれ、俺の代わりにな。…………あ、手を出すのは許さないからな?」
「え? 晴輝、何言ってるの? これから一生私達のことを守ってくれるんじゃないの?」
「うん、お兄ちゃんはこれからずっと私達と一緒だよ?」
「…………。」
俺の頬から涙が流れ落ちる。
「ごめんな、2人とも、俺の体はもう駄目なんだ、色んな人の意識がでたりはいったりしたり、体が何個も分かれたり、挙句の果てにはあの分身体から溢れ出る負の魔力を大量に吸収したんだ、もう俺は、どうやっても死んでしまうみたいなんだ。」
俺だって死にたくない。
生きれるものならこれからずっと生きていたい。
だけど、自分の体の事だから自分が一番分かっている。
俺はもう、長くない。
「嘘…………冗談よね? 晴輝はせっかく元に戻って私達の元に帰ってきたのに死ぬなんて…………。」
「お兄ちゃん、もう一緒に居れないの? やだよ…………。」
「本当にごめんな、もう、俺は動く事すら出来ないんだ。」
俺の体は塵と化していっている。
何とかか内部が先に塵になるようにしているが、もうそろそろ限界だ。
だけど、こんな最後なら悪くない。
俺の大切な人2人に囲まれて、その2人に看取られて死ぬんだ、最高の最後じゃないか。
「…………最後に、最後にもう一度だけ、俺と、キスをしてくれないか? 恋人っぽい事なんて殆ど出来てないけど…………最後にこれだけはしておきたいんだ。」
「…………そんなのいくらでもしてあげるわよ! だから、だから死なないでよ!」
陽夏とゆうちゃんは号泣してくれている。
俺の心がジーンと熱くなる。
そして、俺は2人とキスをした。
紛うことなき最後のキスはどこまでも甘かった。
「2人とも…………愛している。」
俺は涙を流しながら満面の笑みを浮かべる。
「晴輝…………私も、愛してる!」
「お兄ちゃん…………私も愛してるよ!」
2人も涙を流しながらも満面の笑みを浮かべて俺を看取ってくれた。
これで、もう悔いは無い。
2人とも、幸せに生きてくれ。
俺はその想いだけを残して塵となり消えた。
その空間には陽夏とゆうちゃんの泣き叫ぶ声だけが鳴り響いていた。
◇◇◇◇
核の冬。
度重なる戦闘の末、世は塵に覆い尽くされていた。
それでも、ダンジョンが無くなり、平和は訪れた。
その塵を見る度に2人は思い出すのであった。
私達の愛した人を。
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