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第十二章 波乱の鷹狩り

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 料理長以下、居合わせた料理人たちは、真っ青になって顔を見合わせた。

「我々は、何も知りません! 新入りに任せていて……」
「そういえば、あいつはどこへ行ったんだ?」

 国王陛下が、詰め寄られる。

「姿を消したというのか!?」

 ドニ殿下にモンタギュー侯爵、アルベール様は、ほぼ同時に立ち上がられた。他の男性貴族らも、慌てて続く。

「すぐに捜すぞ」
「遠くへは、行っていないはずだ!」

 男性陣が馬にまたがり、一斉に散って行く。マルク殿下ご本人も加わろうとされたが、陛下は押し止められた。

「そなたは残れ。そしてこの料理は、検分させる」

 そして陛下は、私の方を向き直られた。

「モニク嬢。心より、礼を申し上げる。あなたのおかげで、マルクは助かった」
「とんでもありません。もったいないお言葉にございます」

 恐縮しつつお答えしていると、先ほど料理を口にしたと言った夫人が、すり寄って来た。

「ねえ、モニク様。私、本当に大丈夫なのですね?」

 ええ、と私は頷いた。

「私が見る限り、これは本物のフキノトウですけれど。でもご心配なら、医師に診ていただいた方がいいかもしれませんわね」

 冷静を保ってお答えしつつも、私は動揺していた。マルク殿下が、お命を狙われるなんて。これも、ドニ殿下の仕業か。しかし、一体なぜこのタイミングで……。

 その時、森の外れの方から声が聞こえた。

「見つかったぞ!」

 私は、思わず立ち上がっていた。ローズが、仰天したように私を見る。

「お義姉様!?」
「黙って、見てられるもんですか。料理人の口から、真実を吐かせるわ!」

 今度こそ、と心の中で付け加える。上手くいけば、これまでの殺人についても、ドニ殿下を断罪できるかもしれない……。

 私はドレスの裾をたくし上げると、余っていた馬に飛び乗った。ローズや他の令嬢たちと違って、シンプルな衣装で来たから、動きやすくて助かる。私は、馬にハッパをかけた。

「いい子だから、急いでちょうだい!」

 声のした方向へ向かって、懸命に馬を走らせる。果たして、たどり着いた先では、アルベール様とモンタギュー侯爵を中心にした集団が、一人の男を追い詰めているところだった。

(アルベール様、お願いですから捕まえて……!)

 男は、必死の形相で逃げまどっているが、もはや逃げ道は無かった。アルベール様がひらりと馬から降り、男に迫る。――だが、その時だった。

 パァンという銃声が、どこからともなく聞こえた。そして男は、声も無く崩れ落ちた。
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