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第十二章 波乱の鷹狩り
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食事の場に戻ると、マルク殿下が私をお呼びになった。
「モニク嬢、お待ちしておりましたぞ。あなたも、是非どうぞ」
殿下は、シート上に並べられた料理を指された。
「新入りの料理人が、考案したメニューだそうです。せっかく自然の中で食事をするのだから、植物を活かした料理はどうかと思ったそうで。あなたやドニは植物にご興味があるようだから、召し上がっていただきたくてね」
それでドニ殿下を呼んでおられたのか、と私は合点した。
「わざわざ、お待ちくださっていたのですか? 恐縮です」
私は、元通りドニ殿下のお隣に腰を下ろした。ローズや他の参加者らは、すでにスタンバイされている。国王陛下とエミールは、どこかへ行かれたのか、姿は見えなかった。時間を置いて戻られたアルベール様も、その場にさりげなく加わられた。
「さあ、温かいうちにどうぞ」
ドニ殿下が、私に皿を勧められる。フキノトウのリゾットだった。緑が美しい。
(確かに、春らしくていいわね……)
だがローズは、不満そうな顔をした。
「美味しいのかしら? 何だか、苦そうだわ」
「確かに苦味はありますが、そこがいいんですよ」
苦笑されながら、マルク殿下がスプーンを手にされる。その時、私はドキリとした。殿下がすくい上げたフキノトウに、違和感を覚えたのだ。
(葉の形が違う? あれは……、フキノトウじゃない!)
「マルク殿下!」
私は、殿下の手から、スプーンを叩き落としていた。皆が、あっけにとられた顔をする。
「モニク嬢!? 何を……?」
「皆様も、召し上がらないで! これは、フキノトウではありません。よく似た、毒草ですわ!」
タバインについて調べるうち、私は植物にずいぶん詳しくなったのだ。殿下が召し上がろうとしていたのは、ハシリドコロという毒草だった。誤飲すれば、嘔吐などの中毒症状を引き起こす。量によっては、命を落とす可能性もあるくらい、恐ろしいものだ。
「毒草だと!?」
その場にいた全員が、騒然となる。私は、彼らの皿を見回した。
「すでに、お召し上がりになった方は?」
「一口、食べてしまったぞ!」
「私もですわ!」
数人が、悲壮な声を上げる。私は、彼らの皿を手に取って、観察した。
(これは、本物のフキノトウだわ。だとすれば……)
私は、皆に向かって告げた。
「見させていただいたところ、皆様が召し上がったのは、確かにフキノトウです。でも念のため、これ以上召し上がらない方がよろしいと思います」
「一体、何事だ!?」
そこへ、騒ぎに気付いたのか、国王陛下が戻って来られた。マルク殿下の皿にだけ毒草が入っていたと聞くと、陛下は血相を変えられた。
「これを作った料理人は誰だ!」
「モニク嬢、お待ちしておりましたぞ。あなたも、是非どうぞ」
殿下は、シート上に並べられた料理を指された。
「新入りの料理人が、考案したメニューだそうです。せっかく自然の中で食事をするのだから、植物を活かした料理はどうかと思ったそうで。あなたやドニは植物にご興味があるようだから、召し上がっていただきたくてね」
それでドニ殿下を呼んでおられたのか、と私は合点した。
「わざわざ、お待ちくださっていたのですか? 恐縮です」
私は、元通りドニ殿下のお隣に腰を下ろした。ローズや他の参加者らは、すでにスタンバイされている。国王陛下とエミールは、どこかへ行かれたのか、姿は見えなかった。時間を置いて戻られたアルベール様も、その場にさりげなく加わられた。
「さあ、温かいうちにどうぞ」
ドニ殿下が、私に皿を勧められる。フキノトウのリゾットだった。緑が美しい。
(確かに、春らしくていいわね……)
だがローズは、不満そうな顔をした。
「美味しいのかしら? 何だか、苦そうだわ」
「確かに苦味はありますが、そこがいいんですよ」
苦笑されながら、マルク殿下がスプーンを手にされる。その時、私はドキリとした。殿下がすくい上げたフキノトウに、違和感を覚えたのだ。
(葉の形が違う? あれは……、フキノトウじゃない!)
「マルク殿下!」
私は、殿下の手から、スプーンを叩き落としていた。皆が、あっけにとられた顔をする。
「モニク嬢!? 何を……?」
「皆様も、召し上がらないで! これは、フキノトウではありません。よく似た、毒草ですわ!」
タバインについて調べるうち、私は植物にずいぶん詳しくなったのだ。殿下が召し上がろうとしていたのは、ハシリドコロという毒草だった。誤飲すれば、嘔吐などの中毒症状を引き起こす。量によっては、命を落とす可能性もあるくらい、恐ろしいものだ。
「毒草だと!?」
その場にいた全員が、騒然となる。私は、彼らの皿を見回した。
「すでに、お召し上がりになった方は?」
「一口、食べてしまったぞ!」
「私もですわ!」
数人が、悲壮な声を上げる。私は、彼らの皿を手に取って、観察した。
(これは、本物のフキノトウだわ。だとすれば……)
私は、皆に向かって告げた。
「見させていただいたところ、皆様が召し上がったのは、確かにフキノトウです。でも念のため、これ以上召し上がらない方がよろしいと思います」
「一体、何事だ!?」
そこへ、騒ぎに気付いたのか、国王陛下が戻って来られた。マルク殿下の皿にだけ毒草が入っていたと聞くと、陛下は血相を変えられた。
「これを作った料理人は誰だ!」
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