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しおりを挟むTriangleの最年長メンバーである明は、あらゆる面で他のメンバーより自由が利く。
例えば、打ち上げにしても、スタッフと一緒に居酒屋やバーで普通に合流することが可能だ。
昨今、アイドルの飲酒や喫煙は命取りである。
でも、成人している明なら大丈夫。
それに、時間帯の問題もある。
未成年は夜八時以降の仕事は制約があるが、二十二歳の明ならば平気なワケだ。
この日も、テレビの収録終わりの打ち上げへ参加出来たのは、明だけであった。
美央や零はそれをズルいと言って羨ましがるが、明にとっては複雑なところだ。
「お前達は、今でこそオレを羨ましがっているが、あと数年したら絶対逆転するぞ? 歳を取るってことは、それだけアイドルの寿命が尽きるのも早いって事なんだからな。だから、オレは今のうちに歌でも芝居でも何でもやって、この芸能界に爪跡を残そうと頑張って足掻いているんだ」
美央はそれでも、抜け駆けだ何だとブーブー言っては膨れている。
零の方は、まだ明の切実さを理解していないようで、不思議そうな顔をしていた。
(まったく、一足先にオッサンになるコッチはたまんないね)
スタッフにグラスを傾けながら、その時のメンバーとのやり取りを思い出して、明は苦笑いをした。
それに気付き、仲のいいADが声をかけて来た。
「アッキー、どうした?」
「いや、ウチのお子様たちは無邪気だなと……ああ、そうそう南さん、今度の月9のドラマ、どうにかTriangleに声が掛からないもんかなぁ?」
「おお! 営業熱心っ!」
「こっちはいつだって必死ですよ。深夜ドラマではオレらの新曲を使ってもらうのは決定したけど、やっぱり深夜より月9の方がインパクトあるでしょう?」
「出演&主題歌を狙ってるんだ。アッキーは野心家だな~」
「みんなそうでしょ」
「ハハ、まぁね。でも、オレただのADだよ? ムリムリっ」
「南さん、Dの吉村さんと仲いいじゃないですか」
「よく見てるね、さすがアッキー! でも、配役に関してはスポンサーも係わってくるから……でもまぁ、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのライジング・プロには、いつ声が掛かっても不思議じゃないし。その流れでTriangleの名前が出るかもね」
「オレたちのこと、宜しくお願いしますよ」
「どうかな~」
ハッキリしたことは言わないのが、業界のお約束だ。
それでも、明は確実に手応えを感じたくて、南に食い下がる。
「Dの吉村さん、去年手がけたドラマ二桁に届かなかったでしょう? 演技派で揃えたけど、やっぱりあの面子じゃあちょっと年齢的に……ねぇ?」
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