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 猪突猛進なのは軍人故の行動力なのか?
 脇目も振らずに颯爽と歩く兄の後ろを、妹は慌てて付いて行った。

   ◇

「リリス様、そろそろお時間です。王女様へ最後にもう一度ご挨拶をしたら、退席しましょう」
「ああ、そうね。……それでは皆様、どうぞごゆっくり」

 そっと背後から話しかけて来たジン執事にリリスはコクリと頷くと、椅子を引かれたタイミングに合わせて立ち上がった。

 長居し過ぎず、でも失礼のない尺で退場するのが、貴族の付き合いでは大切だ。
 とくに今回は、贔屓の第一王女を袖にしての出席だ。
 気を遣う事この上ないが、これで、一応は第二王女の顔を立てた事にもなる。

 内心は緊張しているが、でも表面は笑顔を絶やさずに、リリスは終始場を和ませる事に成功した。あとは程よいタイミングで消えるだけだ。

 そのタイミングが、今なワケだ。

「ジン、第二王女様はどうだった?」
「ええ。こちらの立ち位置は、これで充分伝わったようですね。アナスタシア第一王女様は勿論リリス様のメインスポンサーですが、決してマルグレーテ第二王女様の支援までを拒否するつもりはないと」
「本当に?」
「はい。御本人がおっしゃいましたから」

 ジンはどんなツテを使ったのか、そんなプライベートな会話までを王女と交わしているのか。
 あの男好きと名高い第二王女ならば、ジンの美貌の虜になるのも解るが。

「……おかげで助かっているけれど。少し複雑な気分ね」

 溜め息をつくリリスであったが、次の瞬間、至近距離で「近くで見ると、もっと美しいな!」と突然声を掛けられて飛び上がった。

「なっ……!?」
「おお、驚かせてしまったかな? 申し訳ない」
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