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そんなリリスの気落ちしたような様子にいち早く気付いたのは、アッシュだった。
「やっぱり何かあったんですか、お嬢さん?」
「え……いえ、あなたは気にしなくていいわ。それより、新しい職人を手配する話を早急に進めないとね。第一王子の衣装係を任命されたんだし、それなりの技術を持った男性用のパタンナーは必要だわ。募集を掛けたけど、その後の進展はどうなったかしら」
不自然に、仕事モードに入って作業所へ向かうリリスを見遣りながら、アッシュはユリを引き留めた。
「ユリ、お嬢さんに探りを入れてくれ」
「えーと、何をですかね?」
「少し様子が変だ。オレには話し辛くても、ユリなら同じ女同士だし、口も軽くなると思うから」
「了解です」
ユリはアッシュの言いたい事を直ぐに察すると、キリっと姿勢を正し、急いでリリスの後を追った。
◇
「王女のお茶会なんて、緊張するばっかりで全然楽しくなかったんじゃないですか? そりゃあリリス様も貴族ですけど、どっちかと言うと、あたし達庶民の方に感覚が近い気がするし」
大量の型紙を整理しながら快活にお喋りをするユリに、リリスは緊張を解いた様子でフフっと笑った。
「そうね。身分を秘して、庶民に紛れて王都で働いていたワケだし。純粋な貴族ではないわね、私は」
「あ、もしかしてあたしって、かなり無礼な事言ってますか!?」
焦った拍子に棚から型紙を落としてしまい、ますますユリは恐縮した様子になった。
「すみません! ……片付けようとして、余計な事を……」
「大丈夫よ。A1、A2の印し順に、バインダーに入れ直してもらえれば私も助かるから」
「分かりました。今日中に、この束の分だけでも頑張って処理しないと。……この際、ジンさんにも声を掛けて手伝ってもらいましょうか?」
「やっぱり何かあったんですか、お嬢さん?」
「え……いえ、あなたは気にしなくていいわ。それより、新しい職人を手配する話を早急に進めないとね。第一王子の衣装係を任命されたんだし、それなりの技術を持った男性用のパタンナーは必要だわ。募集を掛けたけど、その後の進展はどうなったかしら」
不自然に、仕事モードに入って作業所へ向かうリリスを見遣りながら、アッシュはユリを引き留めた。
「ユリ、お嬢さんに探りを入れてくれ」
「えーと、何をですかね?」
「少し様子が変だ。オレには話し辛くても、ユリなら同じ女同士だし、口も軽くなると思うから」
「了解です」
ユリはアッシュの言いたい事を直ぐに察すると、キリっと姿勢を正し、急いでリリスの後を追った。
◇
「王女のお茶会なんて、緊張するばっかりで全然楽しくなかったんじゃないですか? そりゃあリリス様も貴族ですけど、どっちかと言うと、あたし達庶民の方に感覚が近い気がするし」
大量の型紙を整理しながら快活にお喋りをするユリに、リリスは緊張を解いた様子でフフっと笑った。
「そうね。身分を秘して、庶民に紛れて王都で働いていたワケだし。純粋な貴族ではないわね、私は」
「あ、もしかしてあたしって、かなり無礼な事言ってますか!?」
焦った拍子に棚から型紙を落としてしまい、ますますユリは恐縮した様子になった。
「すみません! ……片付けようとして、余計な事を……」
「大丈夫よ。A1、A2の印し順に、バインダーに入れ直してもらえれば私も助かるから」
「分かりました。今日中に、この束の分だけでも頑張って処理しないと。……この際、ジンさんにも声を掛けて手伝ってもらいましょうか?」
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