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アッシュと名乗った青年は、海軍が支給している訓練着を身に着けていない。どうやら、軍人ではないようだ。
まだ若そうだが、いったい何者だろう?
キリウ団長の新しい弟子だろうか?
そんなマリウスの考えが顔に出たのか、向こうから身分を名乗って来た。
「オレは、第一王女専属の衣装係を務めるリリス・クラシス様の護衛騎士をしています。キリウ師匠には、騎士に値するだけの剣技を直接教えて頂きました」
『リリス』の名に、パァっとマリウスの顔が明るくなった。
「ほぉ! リリス嬢の護衛騎士とな!」
「はい。本日は――」
続けて口上を述べようとするアッシュを制して、マリウスは自分の想いを口にした。
「まさかこんな色気もないところで、彼女と繋がりのある人物と出会えるとは思いもしなかった。キリウ団長のお呼びとあっては無視できないと思い、正直言って嫌々来たのだが、その甲斐があったな」
「何だと? こいつめっ」
立腹するキリウに、マリウスは朗らかに笑って応える。
「ハハハハ、ご勘弁を! しかしオレも若輩者の頃には、散々先生にしごかれたものですから。ちょっとは、こっちの気分も察して頂きたい」
無礼ではあるが、正直なその物言いに毒は無い。
故に、キリウは本気で怒る様子もなくフッとだけ微笑んだ。
それよりも、今回の用件は自分ではなくアッシュの方が本題だ。
キリウはさり気なく後ろに下がりながら、アッシュを促した。
「今日は、新米どもの訓練もそうだが……それより、この男の話を先に聞いてくれないか」
「ほぉ?」
いったい何だろうと、興味有り気に見下ろしてくる偉丈夫を前にしながら、アッシュはゴクリと息を呑んだ。
「マリウス提督は、ジンと知り合いなんですか?」
「ジン? ……悪いが、知らない人物の名だ」
「ファニーラ国のザザドゥ公と、ジンが関係あると仰っていたと。オレは、あながたそう言っていたと聞いたんですが」
まだ若そうだが、いったい何者だろう?
キリウ団長の新しい弟子だろうか?
そんなマリウスの考えが顔に出たのか、向こうから身分を名乗って来た。
「オレは、第一王女専属の衣装係を務めるリリス・クラシス様の護衛騎士をしています。キリウ師匠には、騎士に値するだけの剣技を直接教えて頂きました」
『リリス』の名に、パァっとマリウスの顔が明るくなった。
「ほぉ! リリス嬢の護衛騎士とな!」
「はい。本日は――」
続けて口上を述べようとするアッシュを制して、マリウスは自分の想いを口にした。
「まさかこんな色気もないところで、彼女と繋がりのある人物と出会えるとは思いもしなかった。キリウ団長のお呼びとあっては無視できないと思い、正直言って嫌々来たのだが、その甲斐があったな」
「何だと? こいつめっ」
立腹するキリウに、マリウスは朗らかに笑って応える。
「ハハハハ、ご勘弁を! しかしオレも若輩者の頃には、散々先生にしごかれたものですから。ちょっとは、こっちの気分も察して頂きたい」
無礼ではあるが、正直なその物言いに毒は無い。
故に、キリウは本気で怒る様子もなくフッとだけ微笑んだ。
それよりも、今回の用件は自分ではなくアッシュの方が本題だ。
キリウはさり気なく後ろに下がりながら、アッシュを促した。
「今日は、新米どもの訓練もそうだが……それより、この男の話を先に聞いてくれないか」
「ほぉ?」
いったい何だろうと、興味有り気に見下ろしてくる偉丈夫を前にしながら、アッシュはゴクリと息を呑んだ。
「マリウス提督は、ジンと知り合いなんですか?」
「ジン? ……悪いが、知らない人物の名だ」
「ファニーラ国のザザドゥ公と、ジンが関係あると仰っていたと。オレは、あながたそう言っていたと聞いたんですが」
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