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 言い方は丁寧だが、やはりそこは貴族だ。
 マリウスは尊大な態度で、あからさまに上から語り掛けた。

「リリス嬢は、れっきとした伯爵令嬢であるにも拘らず、第一王女の専属衣装係など本当に自ら手掛けているのか? しかも、これは妹から聞いたが、第一王子の衣装係も担当する事になったと……そんな話、オレはとても信じられん。お前は真実を知っているか?」

 疑うような物言いにムッとして、アッシュは口を開く。

「お嬢さんには才能が有ります! オレは昔から傍で見ていていたから、それをよく知ってます!」
「昔からだと?」
「ああ、そうだ。お嬢さんがまだクラシス家の領地に居た事から、ずっとだ」
「……それはまた、ずいぶんと長い付き合いのようだな。なら、お前に少し聞きたい事がある。令嬢は、どんなものに興味があるのだ?」
「は?」

「リリス嬢に贈り物をしたいのだが、どうせなら喜ばれるものがいいからな。お前、何か知ってないか?」

 どうやらこの貴族はリリスにがあるようだと察したアッシュは、一瞬口をつぐんだ。
 恋敵に塩を送るような間抜けにはなりたくないが、だからといって、この場の雰囲気を悪くしてはジンに纏わる情報を得られないかもしれない。

 さて、どうするかと思ったら、横から助け舟が出された。

「マリウスよ、今はお前の話を聞くのは後回しだ。まずはこの者の疑問に、真摯に答えなさい」
(師匠……感謝します!)

 本当に、頼りになる仲介役がいて助かった。
 ホッと胸を撫で下ろしたアッシュに、マリウスは渋々視線を戻した。

「ファニーラ国のザザドゥ公の件について知りたいのだったな? ならば、オレの知っている範囲のことで答えよう。ザザドゥ公自身は、既にこの世にはいない。昔、ファニーラ国で反逆の疑いを掛けられて、公の家紋は取り潰しになったそうだ。公の一族は離散し、現在その土地に残っているのは贅を極めた屋敷だけだが、それは我々バーバロザ海軍が上陸と同時に接収して、今は士官用の邸宅として使っている」
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