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最終章
最終章-5
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だが、ジンの思惑はまたしても大きく外れ、リリスの顔は歓喜で高揚することなく、逆に蒼白となった。
「どうしてそんな事に! 幾ら何でも可哀想だわ!!」
「……可哀想? 君は本気で言っているのか?」
「そうよ。私を利用しようとしたマーロー男爵は確かに憎いけれど、だからといって、その子供まで同じように憎いとは思っていなかったわ。だって、アイスは親の勝手な思惑に従って王都に来ただけなのよ? 私達に対して生意気な事を言った罰として、少しばかりお灸を据えたら、それで開放してあげるつもりだったのに。……それが、処刑ですって!? なんでジンはそれを止めなかったの!」
こんな事でリリスに詰られるとは思っていなかったジンは、面食らった。
もっと喜ぶだろうと思っていたのに、ことごとく違う反応ではないか。
リリスの事は誰よりもよく分かっていたつもりだったのに、これでは立場がない。
「なんだ、一体どうした? 何故喜ばない?」
「あなたが――芯から冷たい人だとは思っていたけれど、ここまで人の心が無いとは思わなかったわ」
「おいおい、ひどい言い様だな。僕はいつだって、君の為に奔走して来たじゃないか。六年前、あの辺鄙な田舎からこの王都に君を導き、仕事を与え、上級貴族や第一王女の橋渡しをしたのが誰だったのか忘れてしまったのか?」
「その事は、感謝しているわ」
「そうだろう? そして、君が心から願っていた復讐を手助けしてやったのも、全部僕だ。金魚のフンのように君に付き従っていたアッシュや、影武者をしていたユリじゃない。全部、僕の努力あってこそだ」
おとぎ話のような魔法は使えないが、ジンはその代わりに自身が持つ『魔力』を発揮して人の心を巧みに操った。
リリスがこの王都で、誰もが羨むファッション・リーダーになりデザイナーとして成功し、第一王女のアナスタシアの専属衣装係にまで上り詰める事が誰のおかげで出来たのか。
全て、ジンが裏で暗躍したお陰だ。
リリスの才能だけでは、到底、ここまで成功するのは不可能であったろう。
その事を誰よりも自覚しているのは、リリスでった。
(でも、ジンは何も私の為だけに動いてくれたワケじゃない)
「どうしてそんな事に! 幾ら何でも可哀想だわ!!」
「……可哀想? 君は本気で言っているのか?」
「そうよ。私を利用しようとしたマーロー男爵は確かに憎いけれど、だからといって、その子供まで同じように憎いとは思っていなかったわ。だって、アイスは親の勝手な思惑に従って王都に来ただけなのよ? 私達に対して生意気な事を言った罰として、少しばかりお灸を据えたら、それで開放してあげるつもりだったのに。……それが、処刑ですって!? なんでジンはそれを止めなかったの!」
こんな事でリリスに詰られるとは思っていなかったジンは、面食らった。
もっと喜ぶだろうと思っていたのに、ことごとく違う反応ではないか。
リリスの事は誰よりもよく分かっていたつもりだったのに、これでは立場がない。
「なんだ、一体どうした? 何故喜ばない?」
「あなたが――芯から冷たい人だとは思っていたけれど、ここまで人の心が無いとは思わなかったわ」
「おいおい、ひどい言い様だな。僕はいつだって、君の為に奔走して来たじゃないか。六年前、あの辺鄙な田舎からこの王都に君を導き、仕事を与え、上級貴族や第一王女の橋渡しをしたのが誰だったのか忘れてしまったのか?」
「その事は、感謝しているわ」
「そうだろう? そして、君が心から願っていた復讐を手助けしてやったのも、全部僕だ。金魚のフンのように君に付き従っていたアッシュや、影武者をしていたユリじゃない。全部、僕の努力あってこそだ」
おとぎ話のような魔法は使えないが、ジンはその代わりに自身が持つ『魔力』を発揮して人の心を巧みに操った。
リリスがこの王都で、誰もが羨むファッション・リーダーになりデザイナーとして成功し、第一王女のアナスタシアの専属衣装係にまで上り詰める事が誰のおかげで出来たのか。
全て、ジンが裏で暗躍したお陰だ。
リリスの才能だけでは、到底、ここまで成功するのは不可能であったろう。
その事を誰よりも自覚しているのは、リリスでった。
(でも、ジンは何も私の為だけに動いてくれたワケじゃない)
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