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最終章
最終章-1
しおりを挟む天然の大理石を敷き詰めた、贅を尽くしたサロンの中央に、一枚のレッドカーペットが縦に長く敷かれている。
その両側を囲むように、見るからに高価で座り心地の良さそうな皮張りの椅子が、一対ずつ綺麗にセッティングされていた。
サロンの入り口では、黒服たちが丁重な態度で、招待客のボディチェックを行っている。
ボディチェックと言っても、ゲストの身体を触るような無粋な真似などはしない。
ハンディタイプの金属探知機を使い、身体の表面をスッスッと滑らせるやり方だ。
ピッと音が鳴るたびに、ゲストは苦笑しながら腕時計やタイピンを黒服へ渡している。
「――お客様」
「なんだ、やはりダメか」
モーニングを着た初老の紳士は嘆息しながら、持ち込み禁止のスマートフォンを胸ポケットから取り出して、それを黒服へ渡した。
「相変わらず、厳重だな」
「万が一、刃物等の危険物を持ち込まれては大変ですし、興味本位で撮影されたデータが外部に漏洩しても困りますからね。もちろん、お客様はそういった違反行為をしない事は承知していますが。一応、念には念を入れる方針ですので」
恭しく首を垂れる黒服に、紳士はフンと鼻を鳴らした。
「まぁ、そう言われては仕方がない。ところで……」
紳士は声のトーンを落とすと、ボソッと呟くように訊いた。
「本当に、今回のショーには御堂聖が出演するのか?」
「はい」
「案内状を見た時は半信半疑だったが……わしは、仕事の付き合いで一度だけ京都で舞台を観劇したことがあったんだが。客席にいたあの男が、着飾ったどの役者たちよりも華麗で最も美しかったのを覚えている。どうにかして、あの男と接点を持ちたいと切望していたところだ。ショーの後でもいいから、君、わしとあの男と――」
「お客様。そういった事は、オーナーと改めてご相談ください」
キッパリと言われ、紳士は不承不承引き下がった。
今日は御堂聖の他にも、美しく頭脳明晰な人間が二名出演するのだが。
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