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最終章
最終章-2
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だが招待客たちの関心は、主に御堂聖に集中しているようだ。
その証拠に、先程の初老の紳士と同じような質問を、黒服たちは何度も受けていた。
彼らはサロンに設けられたステージと招待客の対応が担当なので、ウワサの人物である『御堂聖』の姿はまだ見ていない。
しかし、こうも口をそろえたように、招待客たちから次々と御堂の名を聞かされては……。
(いったい、どんな男なんだろうか?)
黒服たちもさすがに気になるようで、無意識に皆ソワソワしていた。
ゲストたちはそれぞれの案内役に従い、レッドカーペットの両脇に配置された椅子へと腰を下ろしていく。
彼らは渡されたパンフレットとオーダー表へ目を通しながら、髪の色はどうか、瞳の色はどうか、容姿は申し分ないか等をチェックするのだ。
頭脳のレベルはどうか、IQが如何程か最初から数字で明記されているケースもあるが、頭ばかりよくても機転が利かないようであれば、結局はただの役立たずに終わる。
それこそ、選ぶ側の真贋が試される。安くはない買い物だ。
優秀なDNAを選定し、対価を払い、思う通りの人間を手に入れる為に――ゲストたちはここへと集まった。
己の血を継いだ正当な血統よりも、一族の行く先を確実に反映させる手駒を仕入れる為に。
――――または、バイヤーとして、それを外部へ斡旋する為に。
「生体データは10、それとは別の見本として、ショーへ出展するのは3か……いずれも申し分ないが。やはりこればっかりは、実物を見ないとな」
「そうですね。前回はデータのみで判断して発注したんですが、完成したのは予想よりも肌の色がくすんでいて。お陰で買い叩かれました」
「おやおや。それは災難だ。――――おたくは代理母ですか?」
「ええ、出産のリスクを大切なワイフに負わせるわけには……」
ゲスト同士で、そんな会話が交わされている。
ここでは、尊いはずの命さえもただの商品だ。
良い血統は勿論、優秀な遺伝子に好みの容姿まで何もかも、好きなように選べる。
彼らには、倫理観というものは完全に欠如していた。
その証拠に、先程の初老の紳士と同じような質問を、黒服たちは何度も受けていた。
彼らはサロンに設けられたステージと招待客の対応が担当なので、ウワサの人物である『御堂聖』の姿はまだ見ていない。
しかし、こうも口をそろえたように、招待客たちから次々と御堂の名を聞かされては……。
(いったい、どんな男なんだろうか?)
黒服たちもさすがに気になるようで、無意識に皆ソワソワしていた。
ゲストたちはそれぞれの案内役に従い、レッドカーペットの両脇に配置された椅子へと腰を下ろしていく。
彼らは渡されたパンフレットとオーダー表へ目を通しながら、髪の色はどうか、瞳の色はどうか、容姿は申し分ないか等をチェックするのだ。
頭脳のレベルはどうか、IQが如何程か最初から数字で明記されているケースもあるが、頭ばかりよくても機転が利かないようであれば、結局はただの役立たずに終わる。
それこそ、選ぶ側の真贋が試される。安くはない買い物だ。
優秀なDNAを選定し、対価を払い、思う通りの人間を手に入れる為に――ゲストたちはここへと集まった。
己の血を継いだ正当な血統よりも、一族の行く先を確実に反映させる手駒を仕入れる為に。
――――または、バイヤーとして、それを外部へ斡旋する為に。
「生体データは10、それとは別の見本として、ショーへ出展するのは3か……いずれも申し分ないが。やはりこればっかりは、実物を見ないとな」
「そうですね。前回はデータのみで判断して発注したんですが、完成したのは予想よりも肌の色がくすんでいて。お陰で買い叩かれました」
「おやおや。それは災難だ。――――おたくは代理母ですか?」
「ええ、出産のリスクを大切なワイフに負わせるわけには……」
ゲスト同士で、そんな会話が交わされている。
ここでは、尊いはずの命さえもただの商品だ。
良い血統は勿論、優秀な遺伝子に好みの容姿まで何もかも、好きなように選べる。
彼らには、倫理観というものは完全に欠如していた。
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