彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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最終章

最終章-2

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 だが招待客たちの関心は、主に御堂聖に集中しているようだ。

 その証拠に、先程の初老の紳士と同じような質問を、黒服たちは何度も受けていた。

 彼らはサロンに設けられたステージと招待客の対応が担当なので、ウワサの人物である『御堂聖』の姿はまだ見ていない。

 しかし、こうも口をそろえたように、招待客たちから次々と御堂の名を聞かされては……。

(いったい、どんな男なんだろうか?)

 黒服たちもさすがに気になるようで、無意識に皆ソワソワしていた。

 ゲストたちはそれぞれの案内役に従い、レッドカーペットの両脇に配置された椅子へと腰を下ろしていく。

 彼らは渡されたパンフレットとオーダー表へ目を通しながら、髪の色はどうか、瞳の色はどうか、容姿は申し分ないか等をチェックするのだ。

 頭脳のレベルはどうか、IQが如何程か最初から数字で明記されているケースもあるが、頭ばかりよくても機転が利かないようであれば、結局はただの役立たずに終わる。

 それこそ、選ぶ側の真贋が試される。安くはない買い物だ。

 優秀なDNAを選定し、対価を払い、思う通りの人間を手に入れる為に――ゲストたちはここへと集まった。

 己の血を継いだ正当な血統凡人よりも、一族の行く先を確実に反映させる手駒を仕入れる為に。

――――または、バイヤーとして、それを外部へ斡旋する為に。

「生体データは10、それとは別の見本として、ショーへ出展するのは3か……いずれも申し分ないが。やはりこればっかりは、実物を見ないとな」

「そうですね。前回はデータのみで判断して発注したんですが、完成したのは予想よりも肌の色がくすんでいて。お陰で買い叩かれました」

「おやおや。それは災難だ。――――おたくは代理母ですか?」

「ええ、出産のリスクを大切なワイフに負わせるわけには……」

 ゲスト同士で、そんな会話が交わされている。

 ここでは、尊いはずの命さえもただの商品だ。

 良い血統は勿論、優秀な遺伝子に好みの容姿まで何もかも、好きなように選べる。

 彼らには、倫理観というものは完全に欠如していた。
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