彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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後日談

Eternal-1

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「――お前、いい加減にしろよなっ」

 当然のように身体へ触れて来ようとする手をスルリと躱しながら、聖は話題を変えようとしていた。

 ここは、青菱の屋敷ではない。

 いつも密会に使う、Aホテルだ。

 このAホテル。

 出入り口が八カ所もあるので、ホテルの出入りでスクープされる危険性が薄いという利点があり、芸能人や政界人、そして青菱史郎のように筋もの・・・が密かにお忍びで使うには打ってつけなのだ。

 そういう理由で、史郎と聖が密会する場合はいつもこの場所を使っていた。

 しかし――――。

「だから、オレはホテルには用がないって、先に車で言ったよな?」

 額に掛かって来る髪を邪魔そうにかき上げながら、聖は苛立った様子で口を開く。

 その様子を面白そうに見遣りながら、史郎は鼻を鳴らした。

「んん? まぁいいじゃねぇか。いつものスーツじゃなくて、そんな格好しているお前は新鮮だ。部屋住みの若い衆みたいだぜ」

「好きでこんな格好してんじゃねーよ」

 そう、聖は、上下ジャージという出で立ちだ。

 救出される際に、探偵が用意した服がこれだった為だ。

 島から脱出し、港へ戻ったその足で、そのままここへ連れ込まれた次第だ。

(こいつには、情緒ってもんがないのか?)

「――色々あって、さすがに疲れているんだ。少しはこっちの都合も考えろ」

 嘆息しながら言うが、史郎は聞く耳を持たないようだ。

 欲情しているのか、体温が高い。

 そうして聖の隙を突くように、広い手の平がジャージの下から差し伸べられてきた。

「史郎!」

 抗議の声を上げるが、それよりも憮然とした声が返ってきた。

「……何で下着を履いてない?」
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