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後日談
Eternal-1
しおりを挟む「――お前、いい加減にしろよなっ」
当然のように身体へ触れて来ようとする手をスルリと躱しながら、聖は話題を変えようとしていた。
ここは、青菱の屋敷ではない。
いつも密会に使う、Aホテルだ。
このAホテル。
出入り口が八カ所もあるので、ホテルの出入りでスクープされる危険性が薄いという利点があり、芸能人や政界人、そして青菱史郎のように筋ものが密かにお忍びで使うには打ってつけなのだ。
そういう理由で、史郎と聖が密会する場合はいつもこの場所を使っていた。
しかし――――。
「だから、オレはホテルには用がないって、先に車で言ったよな?」
額に掛かって来る髪を邪魔そうにかき上げながら、聖は苛立った様子で口を開く。
その様子を面白そうに見遣りながら、史郎は鼻を鳴らした。
「んん? まぁいいじゃねぇか。いつものスーツじゃなくて、そんな格好しているお前は新鮮だ。部屋住みの若い衆みたいだぜ」
「好きでこんな格好してんじゃねーよ」
そう、聖は、上下ジャージという出で立ちだ。
救出される際に、探偵が用意した服がこれだった為だ。
島から脱出し、港へ戻ったその足で、そのままここへ連れ込まれた次第だ。
(こいつには、情緒ってもんがないのか?)
「――色々あって、さすがに疲れているんだ。少しはこっちの都合も考えろ」
嘆息しながら言うが、史郎は聞く耳を持たないようだ。
欲情しているのか、体温が高い。
そうして聖の隙を突くように、広い手の平がジャージの下から差し伸べられてきた。
「史郎!」
抗議の声を上げるが、それよりも憮然とした声が返ってきた。
「……何で下着を履いてない?」
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