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9 ワイルド商会夫人アデライン(1)
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皆の視線がアデラインの元に向く。
花器に挿されたデンドロビウムの花を手に取りながら、ぐるりと周囲を見渡す。
「さすがに『百合』のお嬢様はどうしようもなかったようですね。
ちゃんと遊びなら遊びで済む様な相手を見繕わないから大変なことになるというのに」
後を宜しく、とエンドローズ嬢の方は家族や院長、男爵と言った人々に任せ、次の女性にルージュは近づいて行く。
「貴女に関しては、実のところ、さほど追求しようとは思いませんでしたの」
「おや奥様。
そうでしたか。
と言うか、きっと私どもは、目的の相手を間違えたということなんでしょうね」
「ええ。
貴女みたいな豊満な美人に惹かれない男はそうそう居ないでしょうから」
「そうかしら。
もう子供も数人居る年増なのだけれど?」
「そうおっしゃりながらも、夏のドレスとなるととてもその形の良い大きな胸が素晴らしくよくお似合い!
貴女方夫妻と最初に会った時から、夫の顔がでれでれとしていたのは私も気付いておりましたわ。
だからこそアデライン様、貴女は色仕掛けをしたのでしょう?」
「えっ」
ティムスの声が不意に飛んだ。
ほほほほ、と口元に手を添え、アデラインはルージュを見据えた。
「やっぱり貴女は気付いていたんですね」
「ええ。夫に近づいて、色んなものを商会から買わせましたよね。
そちらの商会から購入したものを、貴女に差し上げる。
貴女は全く損しないどころか、お金だけ丸儲けという次第。
最終的には、我が家の事業と、そちらの事業との関係において、そちら側が有利になる様な条件をつけようとしたのではありませんか?」
「さすが女学者侯爵夫人。見事ですな」
ぱちぱち、と夫君であるワイルド氏が手を叩く。
「ワイルド様。
貴方は奥様のしていることを奨めこそすれ、止めはなさらなかったでしょう?
こう言っては失礼ですが、貴方のお子様方は、本当に貴方のお種ですか?」
「そんなこと」
ワイルド氏は両手を広げる。
「愛する妻、素晴らしいパートナーである妻の産んだ子なら、それは全て私の子だ。
我らが商会には多くの手駒が常に必要だ。
これの選ぶ男は大概出来が良くてな。
子供達も皆実に何かしら秀でたところがある者ばかりだ。
そしてまあ好色なところも継ぎはするだろうから、この先わが商会は末広がりに広がるだろう。
そう私は夢見ているがな」
「そこまでの意気ならばそれはそれで素晴らしいものですわ。
奥様の行為そのものも商業活動だと」
「それは自分も同様。
そう、我々のミスは、色仕掛けを夫君の方にしたことですな」
ふふ、とルージュは微笑む。
「そう。
そこは結構間違われるのですのよ。だって、我がローライン侯爵家を継いだのはあくまで私であって、彼は侯爵ではなく、あくくまで私の夫、配偶者でしかないのですから」
「そこが大きなミスだった!」
「ええ全く。
私達は隣の国から移り住んできたので、称号のわずかな、だけど大きな差に気付かなかったのですわ。
この国には『女侯爵』という地位の代わりに『侯爵夫人』という名になるなんて」
花器に挿されたデンドロビウムの花を手に取りながら、ぐるりと周囲を見渡す。
「さすがに『百合』のお嬢様はどうしようもなかったようですね。
ちゃんと遊びなら遊びで済む様な相手を見繕わないから大変なことになるというのに」
後を宜しく、とエンドローズ嬢の方は家族や院長、男爵と言った人々に任せ、次の女性にルージュは近づいて行く。
「貴女に関しては、実のところ、さほど追求しようとは思いませんでしたの」
「おや奥様。
そうでしたか。
と言うか、きっと私どもは、目的の相手を間違えたということなんでしょうね」
「ええ。
貴女みたいな豊満な美人に惹かれない男はそうそう居ないでしょうから」
「そうかしら。
もう子供も数人居る年増なのだけれど?」
「そうおっしゃりながらも、夏のドレスとなるととてもその形の良い大きな胸が素晴らしくよくお似合い!
貴女方夫妻と最初に会った時から、夫の顔がでれでれとしていたのは私も気付いておりましたわ。
だからこそアデライン様、貴女は色仕掛けをしたのでしょう?」
「えっ」
ティムスの声が不意に飛んだ。
ほほほほ、と口元に手を添え、アデラインはルージュを見据えた。
「やっぱり貴女は気付いていたんですね」
「ええ。夫に近づいて、色んなものを商会から買わせましたよね。
そちらの商会から購入したものを、貴女に差し上げる。
貴女は全く損しないどころか、お金だけ丸儲けという次第。
最終的には、我が家の事業と、そちらの事業との関係において、そちら側が有利になる様な条件をつけようとしたのではありませんか?」
「さすが女学者侯爵夫人。見事ですな」
ぱちぱち、と夫君であるワイルド氏が手を叩く。
「ワイルド様。
貴方は奥様のしていることを奨めこそすれ、止めはなさらなかったでしょう?
こう言っては失礼ですが、貴方のお子様方は、本当に貴方のお種ですか?」
「そんなこと」
ワイルド氏は両手を広げる。
「愛する妻、素晴らしいパートナーである妻の産んだ子なら、それは全て私の子だ。
我らが商会には多くの手駒が常に必要だ。
これの選ぶ男は大概出来が良くてな。
子供達も皆実に何かしら秀でたところがある者ばかりだ。
そしてまあ好色なところも継ぎはするだろうから、この先わが商会は末広がりに広がるだろう。
そう私は夢見ているがな」
「そこまでの意気ならばそれはそれで素晴らしいものですわ。
奥様の行為そのものも商業活動だと」
「それは自分も同様。
そう、我々のミスは、色仕掛けを夫君の方にしたことですな」
ふふ、とルージュは微笑む。
「そう。
そこは結構間違われるのですのよ。だって、我がローライン侯爵家を継いだのはあくまで私であって、彼は侯爵ではなく、あくくまで私の夫、配偶者でしかないのですから」
「そこが大きなミスだった!」
「ええ全く。
私達は隣の国から移り住んできたので、称号のわずかな、だけど大きな差に気付かなかったのですわ。
この国には『女侯爵』という地位の代わりに『侯爵夫人』という名になるなんて」
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