〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
7 / 208

6 先生は私の意識のずれについて具体的に説明する

しおりを挟む
「そうなの?」
「はい。潤沢な賃金を払う余裕のある家でも、きょうだいは揃って同じ教師に学ばせるのが普通です。貴女はポーレさんと一緒に学びましたが、通常は、あの位置に居るのはきょうだいです」
「じゃあどうして、向こうの子はそうではないのですか?」
「……テンダー様には確かに貴族の令嬢として必要なものを充分与えてはいらっしゃる…… ですが、それだけなのです。向こうのお嬢様には、それ以上のものを常に旦那様と奥様は与えていらっしゃる、ということです」
「でもそれは面倒なことではないの?」
「そこです」

 先生は手を軽く挙げた。

「両親の存在が面倒くさい、と貴女は私が最初に出会った三年前から思ってらした。七歳の裕福な子供としては、悲しいことです」
「悲しいんですか?」
「ええ。普通、もしくはこうあって欲しいという家庭では、両親が自分から娘の住処に足を全く運ばないなんて、ありえません。きょうだいはできるだけ公平に扱うし、……そうですね、出かける時に連れ出して、という話をなさってた様ですね、それは確かに貴女には面倒なことなのかもしれませんが、向こうの方を見せびらかしたい程可愛がっている、という見方もできるのですよ」
「……」

 私は黙った。
 やはり上手く理解できなかった。

「私の家は、貴族とは名ばかりの家でしたから貧乏でしたが、この部屋くらいの家で家族五人が仲良く暮らしてましたよ」
「え、この部屋に五人!」
「そのうちお入りになる学校の寮も大概は相部屋ですから、その辺りの常識も少し覚えておいた方がいいかもしれませんね。庶民ですと、この半分でやはりその人数暮らしていることもありますよ」
「でもそれじゃあ窮屈ではないですか?」
「窮屈でも何でも、それしか場所がなければ、そこでできるだけ仲良くやっていこうとするものです。実際私は両親の愛情だけは一杯に浴びてきたと思います」
「あいじょう」
「ええ。……そうですね、近いものでは、フィリアさんとポーレさんですが、彼女達から、貴女の方が身分が上、という立場を引き算した感じでしょうか」
「フィリアはずっと居て欲しいです。ポーレも」
「ええ。それが当たり前であるのが生まれつきの家族です。ですが、おそらく貴女は向こうの方々のことに無関心ですよね」
「はい」
「それはそれで、もう仕方ないことです。そうならざるを得ない環境で貴女は育ってきてますから。ですが、周囲はそうではないです。だから私達にはそういう顔をお見せになってもいいですが、外では無闇にそういう質問をしない方がいいでしょう」
「外では」
「大概の余裕のある家族は、両親に無条件に愛し愛されている、もしくはそういうことになっているんですよ」
「そういうものなのですか」
「一番いいのは、学校に行く様になった時に、きょうだいを沢山持った人のいい友達を作り、その家に招待されることですね。身分は問いません」

 成る程、と私は思ったものだった。
しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...