上 下
7 / 27
離婚された侯爵夫人は語る

7

しおりを挟む
 そしてやがて本当に義妹は王都に子供達を連れて引っ越してしまいました。
 画家としての活動は、その方が確実に良いとのことです。
 私はすっかり気が抜けたようになって、彼女達が消え、鍵がかけられた離れを外から眺めてはため息をつきました。
 そしてとうとう、合鍵を見つけてはあの子達の住んでいた部屋に入り込んでは、匂いが残っている部屋で一日ぼうっとして過ごしたり、思い出にふけっていました。
 ですがそんなことも、やがて義母と夫に見つかってしまいました。

「何をやっているの?」

 優しく義母は問いかけてくれます。あくまで優しく。
 これが私の母だったら、何発か頬を叩いたことでしょう。背中を撫でてくれる手のぬくみ。母からは一度たりとも感じたことのないものです。
 思わずぽろぽろと涙が落ちました。

「だって…… あの子達が……」
「ねえマゼンタ、あの子達は貴女の子供ではないの。あくまで向こうの、エレーナ(エレネージュの本名)の子供なのよ」

 何度も何度もそれを繰り返しました。堂々巡りです。

「何でエレーナが王都に引っ越したか判らないの? あなた、子供達に自分が本当の母親だと吹き込んでいたというじゃないの。乳母から聞いたわ」
「いいえそんなことは。いえ、そうであって欲しいとは思いましたが」
「ではやっぱりしていたのね。何ってこと。駄目よマゼンタ、あなたがどう思おうと、あの子達は充分ねエレーナのもとで幸せにやっていけるのよ」
「ではお義母様、教えていただけますか? 一体あの子達の父親は誰なのでしょう? あの子達が生まれたことを知らないのですか? 何故」

 それ以上言うな、とお義母様は私の口を制しました。
しおりを挟む

処理中です...