(完結)離婚された侯爵夫人ですが、一体悪かったのは誰なんでしょう?

江戸川ばた散歩

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夫であった侯爵は語る

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「子爵ってことは、それでも世襲が認められている貴族だろう? 何でも二代前までは、結構な羽振りの家だったらしいよ」
「それがまた何故」
「さあそこだ」

 伯母は口元を大きく釣り上げた。楽しそうだった。

「先々代までは、堅実な領地経営で、そこそこ大きな家を建て、宮中にも出入りしていたんだよ。領地自体はうちより広かったらしいし」
「それはなかなか」

 我が家よりは狭いが、それでもこの子爵家の持つ領地はそれなりに広い。
 それよりも大きかったのか。

「だけど私がまだいたいけな少女の頃だがね、荒天が続く時期が結構続いたんだよ」
「ああ……」

 聞いたことがある。
 国中に大寒波が襲ってきて、それが一年ならともかく、数年続いたとのこと。

「広さはともかく、場所がまずかった。向こうの子爵家の領地からはまるで何も穫れなくなって、領民も食べられなくなり、結構な数、逃げ出したそうだよ。そこで領地を売りに出してしまった訳だ」
「……北の方ですよね。でしたら今は結構鉱山資源とかで活気からあると聞きましたが」
「そう、堅実すぎて、他の事業の発想ができなかったらしいよ。それで次の代が何ってことだ、とばかりに今度は新しい事業に急に手を出してしまった。そして失敗。仕方なし、領地と家を売ってようやくぎりぎり食べていける程度になったのがあの娘の親の代ということだ」
「それは…… 大変ですね」
「まあそれでも、働くことを厭わない子だから良かったんだろうねえ。没落した貴族の中には、親戚の食客だ何だ、ってことで寄生虫の様になっている輩もあるというし。それに比べれば、あの娘と、その兄は真っ当な方だね。まあ、親が反面教師ということか」
「親…… 父親ですか?」
「いやいやそれだけじゃあない」

 伯母は手をひらひらと振った。
 既に話に夢中だった。

「いやもう、あの娘はもの凄く淡々と話すんだがね、母親がまた、兄より先にあの娘――マゼンタを働きに出したって言うんだよ」
「え」
「家庭教師ができるまでの学問も、何でも遠縁の娘の小間使い兼話し相手として追いやられている中で、必死に覚えたそうだよ。そこのお嬢さんよりは出来が良くない程度に見せるのが大変だった、ということさ」
「それは幾つくらいのことですか?」
「貴方には妹が居るというのにそういうのには鈍いんだね」
「まあ…… あの妹は……」

 妹のエレーナはちょっと才能が偏っているので、他と比較にならない様に私には思えた。

「まあいいさ。あの子が外に働きに、というか口減らしに出たのはまだ八つの頃だよ」 
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