(完結)離婚された侯爵夫人ですが、一体悪かったのは誰なんでしょう?

江戸川ばた散歩

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夫であった侯爵は語る

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 八つ。
 と言えばまだ私が何かと乳母に世話をやいてもらっていた頃だ。
 妹もまた然り。

「そこで十六までの八年、なかなかに我が儘なお嬢さんの相手をしながら、お嬢さんと同じかそれ以上の教養や知識を身につけたんだから大したものだ。なのに向こうの母親ときたら、その時から――、いや今もだがね、家に送金しろ、とうるさいのだと」
「子供にたかるのですか」

 私は露骨に不快感を示した。
 おや、と伯母の表情が面白そうに変わった。

「そうなんだよ。大変なことさ。ところがマゼンタは、いつもこう言う。『私のような者が必要とされるんですから仕方ありません』『私が言うことをちゃんと聞いていれば、お母様もいつかは私に優しくしてくれるんじゃないかと思うんです』。だと。ああ何ってこと!」

 伯母は両手を挙げた。

「そういう親ってのはね、搾り取るために子供を痛めつけるんだよ。私がいくら送金なんかしなくていい、と言っても聞きゃしない。いつもこの調子さ。あの娘だってもう年頃だというのに、結婚させないでずっと搾り取るつもりかね!」

 そう言ってちら、と伯母は私の方を見た。

「ねえダグ。貴方あの娘と付き合ってみる気はないかい?」
「え」

 唐突な申し出に、私は言葉を無くした。

「別に結婚しろとかそういうことを言ってるんじゃないよ。ただ貴方はともかく女っ気がないから、夫としての条件はいいのに、何かしら敬遠されてるんじゃないかしらね?」
「釣書でいつも断られてますよ」
「そこであきらめてしまうのが、何だねえ。お互いお付き合いの勉強と思って少しくらいお茶などしてみるのも良くないかね?」

 そして改めてまじまじと見てみると、確かにとても子爵令嬢には見えなかった。
 着ているものは実に質素。
 いや、明らかに一昔前の形のものだった。母親のものを自分の身体に合うように仕立て直したのだろう。
 女性の外見に疎いと言われている私ですら判るくらいである。これは酷い。

「せめて、あの服をもう少し」

 思わず口から出てしまったようだ。
 すると伯母は「あらあらまあまあ」とばかりに手を叩き。

「それなら一度貴方見繕っておあげなさいよ。うちからの特別プレゼントとして」
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