(完結)離婚された侯爵夫人ですが、一体悪かったのは誰なんでしょう?

江戸川ばた散歩

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夫であった侯爵は語る

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 エレーナは小さな頃から優秀だった。
 それも多方面に。
 普通の令嬢が学ぶべきことは無論、学問、音楽、絵画というものに格別その才能を見せた。
 特に絵画制作の腕は素晴らしかった。
 令嬢のたしなみどころではなく、本格的な画家の道を選び、それが通用…… どころではなく、王都のコンクールで優秀な成績と残し、実際売れ行きも良いというものだった。
 宮中からも部屋に飾る絵を所望されたり、壁画を依頼されたりとあちらこちらから引っ張りだこだった。

 そんな妹が、五年前に妊娠して戻ってきたことからどうも歯車がずれはじめた。
 元々マゼンタは「エレーナ」に関しては、普通に義理の姉の顔ができるのだ。
 だが画家の「エレネージュ」に関しては、どうしても訳がわからない、という顔になる。
 努力して顔を作ろうとしても、上手くいかないのだ、と嘆くことが多かった。
 それだけに彼女が普段は王都で暮らしていることにマゼンタは安堵していた。

 ところが、よりによって結婚せず、子供だけ作り戻ってきたのだ。

「どういうことなんでしょう……」

 妻は唖然としてその知らせを聞いていた。

「何故相手のひとと結婚しようとなさらないのでしょう? できない方なのかしら? それは正しくないわ」

 正しくない。
 この時から彼女はこの言葉をあちこちに散ればめるようになった。
 それでもまだ、出産後しばらくは別邸の方に妹は暮らしていたので良かった。
 その間は創作活動も一休みというところだったのだ。
 だが子供がある程度育ち、創作活動に復帰するということで、本宅に戻ってきた。
 それがまずかった。
 まあ生活は共にはしない。
 妹は元々離れにアトリエがあったから、そちらで独自の生活をしていた。
 ただそこに友人達がよく来るのだ。王都から彼女を訪ねて。
 彼等は皆、王都で有名な芸術家達だった。
 芸術家らしく、時間の感覚だの、衝動に任せた活動だの、そういったものが離れでは行われることが多かった。
 マゼンタからすると、非常に「正しくない」生活が、敷地内で行われていたことになる。

 そこで彼女は唐突に「エレーナの双子をうちの養子にしたい」と言い出した。
 正直、エレーナが戻ってきた時につれてきた双子に対し、マゼンタは異様な程に執着した。
 それまで子供が好きではない、という態度があからさまだったのに対し、双子に対しては、その逆だった。
 母はそんな彼女を見ながら不安げにため息をついた。

「何かね、あれは子供達に恋しているかのようだわ」

 それは私からもそう見えた。

 やがて「うちで引き取りたい」という言葉を頻繁に口に出すようになった。
 私は双子の父親を母から聞いていたから、それは絶対にできないことを知っていた。
 それはマゼンタには言えない秘密でもあった。
 下手に知る者が多いのはまずい類いのものだったのだ。
 だがそれがまずかった。
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