(完結)離婚された侯爵夫人ですが、一体悪かったのは誰なんでしょう?

江戸川ばた散歩

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夫であった侯爵は語る

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 結婚生活は穏やかだった。
 私の両親との仲も非常に良かった。
 と言うより、マゼンタが母にひどく懐いたのだ。

「私ね、家事をやっても母からけなされるだけだったのよ」

 ぽつりぽつりと口にする彼女の母親像は、普段の我が家の両親を知る身からすれば、異様としか言い様がなかった。

「兄が学校に行くために私は奉公に出されたんです」

 八歳の頃からの小間使いと学友を兼ねた住み込みは、それでも多少なりとも賃金が発生したのだと。その大半を彼女は家に送っていたとのこと。
 そしてその金は兄の学費に消えたのだと。

「兄はそのことをたぶん知りません。母が言うものではない、と私に言いましたから」

 だがマゼンタの兄は実際知っていた。なおかつ母親がそのことを自分に知らせない様に娘に言っていたことも。

「マゼンタは絶対に家に帰らせるようなことが無いといいと思います」

 義理の兄になった男はそう言った。

「自分は何もできなかった。できるのは、この先母がマゼンタに口出しすることを抑えることくらいです」

 そのためには何でもする、と彼は言っていた。
 妹のおかげで結婚もできた、妻も感謝している、と。
 彼の家庭にはすぐに子供も総勢四人できた様だが、常に笑いの絶えない家庭らしかった。

 だがマゼンタにはその兆しは全く無かった。
 幾つかの理由が考えられた。
 まず我々の間にさほど多くの夜の営みが無かったということだ。
 お互い求めることがさほど強くなかったということがある。
 次に彼女自身の身体。
 子供の頃の栄養が同じ年頃の貴族の女性に比べ良く無かったことから、どうも月々のものが不規則だと本人は言っていた。
 そして何より、マゼンタ自身はさほど子供を欲しがっていない様に見えたのだ。
 家庭教師をやってきた反動だろうか。私や義両親との生活を非常に楽しんでいるように見えた。
 私は私で、それはそれで良いと思っていた。
 彼女は侯爵夫人としての役目を理解しており、それをまた生真面目にこなそうとしていた。
 実際彼女はそれに関しては文句無しだった。
 母に教わり、相応しい姿、態度、言葉遣い、社交と何かと学ぶべき新たなことに貪欲だった。
 二年足らずで彼女は「侯爵夫人」として社交界に出しても充分通用するようになった。
 ただ、彼女にとって一つどうしていいのか判らないことがあった。
 それは妹のエレーナのことだった。
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