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ドアベルの音に3人同時に顔を上げると「いらっしゃいませー!」の台詞が3人ともハモった。

「おひとりさまですか?」
定型文を口に並べる私は彼の顔を見て固まりかけた。

その彼は、今日入学式で見かけたらしき人とそっくりだった。そっくりなんてものじゃない。たぶん本人。

地下鉄黒川駅から程近いこの喫茶ロミオ。うちの大学の学生御用達だったのこの店?亜樹といい、そうちゃんらしき人といい、私といい、すごい確率。


「──バイトの面接、18時にって言われてるんですけど」

私の知らない心地良い低音。それでもかつてのそうちゃんの面影を声に感じて、軽くテンパりそうだ。

「店長、面接の子来たみたいです」
カウンター越しの背後に栗原さんの声が聞こえた。

なかなか席に案内しようとしない私に、彼は怪訝そうな顔をした。

「あの……」
「あっ……こちら奥、窓に近い席へどうぞ」
我に帰ってB6に案内する。彼は4人席へと足を向ける。

「あの、右の広い席でお願いします」
「広い方でいいんですか?」

4人席のB3に彼は座ろうとしていた。でも、すぐ隣のB4には他のお客様が既に着席していた。

「広い方座って。白雪さん、もういいよ」

店長の声が後ろから聞こえた。振り向いた店長はおひやもデニッシュアイスも持っていなかった。そうだよね、お客様じゃないもんね。さっきの亜樹は「おかえりなさい」の意味での接待だったんだな。私も面接時は特に何も出されなかった。むしろそっちが普通。
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