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Shalimar 3
しおりを挟むがらんとした隣のベランダを見て茫然とする。
満紘が再び出て来る気配はまるで無い。
「満紘…」
私の声だけが夜の闇に消えていく。唐突な寂しさが胸を襲う。
もしかして。もしかしなくても、私達、このまま会えなく…なるの?
満紘は、私を彼女にしたかったの?ということは、満紘は…私を好き、ということ…だよ、ね。
私にとって満紘は満紘。今までも、これからも。ずっとそれは、変わらない。
それは恋愛対象外なの?本当に、そうなの…?
わからない。わかんないよ。でも、このまま満紘に会えなくなるのは嫌。それは、わかる。
満紘の部屋のインターホンを押す。一度押してからどれぐらい時間が経ったのだろう?待つ時間というものは長く感じるもので、数秒なのか数分なのか、感覚が麻痺してしまう。
もう一度、インターホンを押そうか…。指先が震える。勇気を振り絞って、もう一度押そうとしたそのとき、ドアの鍵を開ける音が響いた。
「──梨愛?」
「満紘…」
言葉が浮かばない。満紘に会ったら何を言おうかなんて、考える余裕は全く無かったことに今気付く。
「梨愛……何で泣いてんの」
「え」
泣いてる?私が…?
頬を触ると指先に水分を感じた。なんだか呼吸も少ししずらい。胸がいっぱいになってしまっていた。
「ま、ひろ…」
満紘が指先で私の頬に流れる涙を拭う。
「私…ね。満紘は、私にとって、ずっと満紘なの。友達とか、彼氏とか、そういうカテゴリーに、満紘はいないの」
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