涯(はて)の楽園

栗木 妙

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Ⅱ章.バーディッツ伯爵領 ─レイノルド・サイラーク─

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 いざなわれるままに微睡みながら、夢の中に彼を捜す。
 鮮やかなまでに私の中に残る記憶、それが夢の中に彼の姿をありありと映し出す。
 彼を想う私の心は、結局そこに帰ってしまうのだ。
 トゥーリと共に過ごした、あのカンザリアでの日々に―――。


『本日付けでこちらに配属されました、トゥーリ・アクスです。総督閣下には、以後お見知りおきを』


 初めて出会った、あの日のことを思い出す。
 私がカンザリアに赴任してきてから、はや二年が過ぎ去ろうとしていた頃のこと。
 新入りが来るとは聞いていたが、まさか自分付きにされるとは思わず、そんな挨拶を私は、背を向けたまま頭の向こう側に流して聞いていた。
 こんな辺鄙なところまで左遷されてくる者の経歴なんて、気に留めてもいなかった。
 ――まさか、騎士が赴任してくるなんて。
 驚いて、そうして初めて彼とまともに向き合った。
 真っ先に目を引いたのは、彼の持つ黒の色彩。
 茶系の色彩が大多数を占めるこの国において、彼が髪と瞳に宿していた純粋な黒色は、とても珍しく、そして同時に、思わず目を奪われるほど、とても印象的だった。
 日に焼けた健康的な肌と、軍人らしい大柄でがっしりとした逞しい体躯。そして、もと近衛騎士であるに相応しい、精悍な美しさまでもを、彼は有していた。
 ――後から『どこまでも人並みな自分が近衛に入れたのは奇跡』などと自分を評したトゥーリほど、己が分かっていない者もいないのではないだろうか。
 ただそこに居るだけで、自然と人を惹き付けてしまう魅力が、彼にはあった。
 この私こそ、彼に惹き付けられてしまった一人だろう。
 どことなく彼に惹かれている自分を自覚しながら……でも、身に纏う“柵”を開くことは決して出来なかった。
 気付かれないように投げかけてくる、こちらを見つめる黒い瞳に、向けられる視線に、それが感じられてしまったからだ。――私が欲しい、と。
 ああこいつもかと、少なからず失望した。こいつも私を抱きたいだけの男か、と。
 それだけに、知らず知らず彼に対する拒絶が酷くなったことも、自分でも気が付いていた。
 こんなのは八つ当たりだ、と……彼への申し訳ない想いを抱きながら、それでも精一杯の虚勢で彼に相対することしか、私には出来なかった。
 張り巡らせた“柵”は、ますます高く頑丈になっていくだけのように思われた。


 しかしトゥーリは、それを簡単に飛び越えてしまったのだ。
 気が付けば、いつの間にか自然に“柵”の内側に居た。
 常に私の傍らに寄り添ってくれていた。


『俺は、あなたの力になりたい――あなたの信頼を得たいんです』


 その言葉ひとつで、彼は私の内側に、するりと入り込んでしまったのだろう。
『俺は、総督にとっての絶対の味方でいます。いつでも、どんな時も』
 その言葉に嘘は無かった。
 私のために、いつも心を砕いて仕えてくれた。
 勿論、欲望のままに私を傷付けるような真似に及ぶことなど、絶対にしようとはしなかった。――それが、瞳の色に見え隠れしているのにも関わらず、だ。
 自分の欲など当然のように押し殺して、彼は常に献身的なまでに私の側に在ろうとしてくれた。
 そして彼は、思いのほか有能だったのだ。
 騎士の資格まで得ているくらいだ、もとより剣術の腕は申し分ない。なにせ、近衛騎士の腕など信用していない、多少は覚えのある私でさえ、彼には全く歯が立たなかったのだから。
 最初は、私から一方的に仕掛けた殺し合い…のような場だったこともあり、ルールも何も度外視され、ただ生きるか死ぬかという瀬戸際で戦っていたがゆえに、その不意を突かれて自分は負けたのだと思っていた。しかし、ちゃんとルールに則った勝負を挑んでも勝てなかった。一度だけじゃない、何度やっても同じだったのだ。
 ――ここまで歯が立たなかったのなんて、アレク以来だ。
 一度目は、第三者を審判に立てて衆人環視のもとで正々堂々と勝負した挙句に負けた。二度目以降は、見世物にされるのに嫌気がさして、二人きりで遠駆けに出たついでに勝負を挑んで、ことごとく負けた。
 何をやっても勝てないことで不貞腐れた私に、『当たり前です』と、ようやく彼は教えてくれたのだ。
『総督の剣は速さ押しでしょ。剣を繰り出す速さと切り返しの速さ、それに持ち前の身のこなしの素早さで、相手を翻弄して隙を突く。であれば、こっちはそれに合わせるだけでいいんですからね。特に総督の場合、剣筋が綺麗すぎるから、奇を衒ったところもなくて次の手が読み易いし。さして打撃に重さも無いんだから、その動きさえ見極めて受け流しているだけでいい。そもそも体格も筋力も持久力も俺の方が上だし、とりたてて反撃なんてしなくても、避けてれば勝手にあなたから自滅してくれる。疲れて動きが鈍ってくるまでに、そう時間もかからないしね』
 流れるようにそれを言われて、思わず目を丸くして絶句してしまった。
 ――私が勝てなかったのは……それを、こいつに最初から見抜かれていたから、だというのか……?
 案の定、いつから気付いていたのかと投げかけた問いには、『最初から』という答えが、事もなげに返ってくる。
『相手の体格と得物を見れば、そんなもの一目瞭然じゃないですか。総督みたいに、特に大柄でもなく筋力が突出しているわけでもない細身で軽量級の人間には、大抵その方法しか取れないし、そのうえ得物が細剣なんて、わかり易すぎるにもホドがある』
 そういえば、アレクにも言われたことがあった。『おまえは相手をよく見ろ』、と。王都の武術大会に出場することが決まった時は、『なまじの者なら今のままでも充分だろうが、それ以上の相手には通用しないぞ』とも。
 ――あれはつまり、こういうことだったのか……。
 確かに私は、決して小柄ではないが大柄にはほど遠い体格でしかないし、筋力も体力も持久力も人並み程度にしか無い。それを補うために速さに重きを置いた訓練を重ねてきたし、それを最大限に生かすべく、振るう得物もなるべく軽いものを、と細剣を選んだ。――自分では良かれと思ってやっていたそれが、逆に弱点を曝しているにも等しかった、と……。
 自覚した途端、ああこいつに敵わないのは当然だ、と、素直に納得できてしまった。
 トゥーリは事もなげに言ってのけたが、だからといって、それを言った通りに為すには相応の実力も必要だということくらい、私にだってわかる。なまじっかの腕ごときでは、それを見抜けたところで、こちらの速さに付いてこられるはずもないのだから。剣術だけでなく、乗馬や体術にも通じている彼の身体能力の高さには舌を巻く。筋力に恵まれた体躯は、大柄ながら機敏で、体幹のブレも少ないからバランス感覚にも長けており、柔軟性も充分にある。何をやらせても様になる万能型とは、こういう人間のことを言うのだろう。さらに加えて、『次の手が読み易い』とまで言われてしまうのは、ただ純粋に、踏んだ場数の差でしかない。実戦を想定していない私の剣では、幾度もそれをくぐり抜けてきたであろう彼の経験には、到底及ぶべくもないということか。
 これまで自分の貧相な体格に劣等感を抱いてきたがゆえに、ガタイの差だけで相手にデカイ顔をされなければならないのが屈辱で、腕っぷしだけが強さではないことを証明してやると、そんな一心でがむしゃらに足掻いてきたものだったけれど。
 こんな人間もいるのだな、と……自分の至らなさを認めてしまったと同時、どこか感動すらも覚えてしまった。
 トゥーリは、ただ強いだけの人間じゃない。軍人にはありがちな、脳味噌まで筋肉に変えてしまっているような輩とは、頭の良さが段違いだ。
 相手を見て分析し、自分がどう対処すべきか、それを瞬時に導き出すことが出来る。それも息をするくらい自然に。
 しかも、しっかり遠ざけておいたにも関わらず、崖上での情報取引の場までも押さえられてしまったのだ。あの注意力と状況判断力、そして行動力にも恐れ入る。
 さらには、自分が殺されるかもしれないという命の瀬戸際においてさえ、あの落ち付き払った冷静さと、全く動じる様子さえ見せない度胸。――私への挑発行為についてだけは、いただけない限りだが。
 まさに彼は、護衛として側に置くに、極めて申し分のない人材だった。
 そんな彼だからこそ……自分の抱えていた任務のことまで話してしまえたのかもしれない。ジークも居ない今、全て一人で立ち回ろうとするには限界も覚えてきており、ちょうど補佐してくれる人間が欲しいと思っていたところだった。
 しかし、それ以上に。
 絶対の味方でいてくれるという彼の言葉に、ただ甘えてしまいたくなったのかもしれない。一人で秘密を抱えていることに疲れ過ぎて。
 ――もうこの時には既に、私も彼を信頼していたのかもしれないな……。
 知らず知らずの間に、彼が側に居てくれることに安心を感じられるようになっていた。
 自分に向けられる彼の笑顔に、安らぎだけでなく、ときめきも覚えていた。
 自分を心配してくれる彼の優しさが感じられるたび、どこまでも嬉しくて仕方なかった。
 似ても似つかぬ姿なのに……そこに亡き陛下の面影が重なっていた。
 私を傷付けることなく、どこまでも広く深い愛情をもって、あたたかく包み込んでくれるような―――。
 その信頼が、いつしか恋情へと変わってゆくのにも、そう時間はかからなかった。
 亡き陛下へ感じた想いとは、同じようでいて、また違う感情。
 トゥーリは、尊敬すべき主でもなく、また敬愛すべき父親でもなかった、そのためだろうか。
 ただ、彼の向けてくる想いに応えたいという気持ちだけが、そこに在った。
 彼の望むままに、触れられてもいい――抱かれてもいい。
 いや、違う。私から彼に触れたいのだ。――抱かれたいと願っているのだ。
 日々の生活の中、ちょっとしたことで彼と触れ合うたびに、その想いが募り、身体が熱くなった。
 彼の一挙手一投足に一喜一憂しては、落ち付かない気分で一人の夜を過ごした。
 ――自分がこんなふうになってしまうなんて、知らなかった。
 トゥーリのことを考えて収まりのつかなくなってしまった自身の昂りを、無理やり慰めた翌朝、寝室を整えにきたコルトに即バレて、ものすごく恥ずかしい気分を味わったりもした。
 これまで自分は淡白な方だと思ってきた。それを自分で処理することだって、ただの生理現象ゆえのことでしかなかったし、そう頻繁にあることでもなかったから。
 ――誰かを思い浮かべながらの自慰なんて、したこともなかったのに……。
 トゥーリにだけだ、私がこんなふうになってしまうのは。
 彼だけが、私を狂わせ、乱れさせる。
 ただの上官と部下の関係で居続けることに、もう限界すら感じていた。
 表面上は何事もないように平然を装いながら、なのに少しのきっかけですぐ薄っぺらい化けの皮は剥がれそうになって、またそれを必死に押し隠す。まるで綱渡りのような危うい日々。
 しかし、それを正直に彼へ打ち明けることが出来ないくらい、私はあまりにも小心だった。
 ――いっそのこと、押し倒してくれればいいのに。
 どんなに、それを願ったかしれない。
 でも、これまで一度としてそんな真似に及ぶことのなかった彼が、これからだってそんな真似をするはずもない。
 どうにもならないもどかしさを持て余して、とにかく私は、何かきっかけを探していた。
 そして、私の自制の箍が外れたのは、彼の過去と、その心に抱える傷を、知ってしまった時だった。


『ただ愛されたかった、それだけのことなのかもしれない―――』


 無表情なまでにそれを呟いた彼の姿に、とめどないかなしさが溢れた。
 だから自然に、そんな言葉を洩らしていた。
『――おまえも可哀相な男だな……』
 ああこいつも私と同じなのだな、と……それは共感や同情を超えて、ただ自分と重なり合った。
“母”と呼ばれるべき一人の女に縛られている私たちは、与えられる愛を知らず、そのくせ愛を欲しがっている、そうやって抱え込んだ傷は全きなまでに同じだった。
 だからこそ、私は彼の気持ちがわかる。
 だからこそ、彼を慰めてあげたくて、そして彼に慰めて欲しくて、堪らなくなった。
 気が付いたら、彼の唇に口付けていた。
 深く舌を絡ませながら、固く膨らんでいた彼のそれにまで手を伸ばしていた。
 彼の心も身体も慰めてあげたい。ただ、その一心でのことだった。


 ――それが彼に拒絶されるものになるとは、思いもせずに。


 つまるところ私は、トゥーリの鉄壁の自制心を見くびっていたことになるのだろうか―――。
 あそこまでされながら彼は、それでも私に手を出してはくれなかったのだ。
 逃げるように彼が去った後も、しばらく座り込んだまま、私はその場を動けなかった。
 ――もしかして……そもそも自分が彼に想われているというところから、私の自惚れでしかなかったのか……?
 思い当たった途端、ふいに涙が溢れてきた。
 咄嗟にそれを拭うべく頬に手を添えると、顔にかかったままだったそれに、気が付いた。
 絶頂を迎えて吐き出された白い液体。
 それを指で拭って、思わず恥ずかしさに居た堪れなくなった。
 ――私は、なんてあさましいことをしてしまったんだろう……!
 その気持ちの裏で、それでも喜んでいる自分がいた。
 自分の口付けに反応して、それを固く大きくさせ、手と舌の愛撫で達してくれた。――それを嬉しいと思っている自分に、吐き気を催すくらいの嫌悪を感じた。
 ――あんなもの、ただの強姦じゃないか。
 あそこまでされれば、男なら誰だって反応するに決まってる。私だから、というわけでは決してない。
 気持ちの伴なっていない行為など、これまで私がされてきたことと何ら変わらないのに。
 自分がされたことを、私から彼に為したというだけ、ただ自分の欲を彼へ押し付けてしまっただけではないか。
 あんなに自分が嫌悪してきた行為を、よりにもよって自分がしてしまった、それがどうしようもなく恥ずかしく、彼への申し訳なさで死にたくなった。
 ――もうダメだ……ここまでしておきながら、平然とした顔なんて装えない。
 翌朝になれば、きっと普段どおりに彼は私のもとへとやってくるだろう。
 それを、いつも通りに笑って迎えることなど、とてもじゃないが出来そうになかった。
 だから私は逃げてしまったのだ。
 誰にも…信頼する彼にさえもまだ教えていなかった、私が一人になれる場所へと隠れた。
 それでも……彼ならばいずれは見つけてしまうだろうとは、思ってもいたけれど。


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