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*99 年が明けました *
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カップの焼き印は、領主様のエンブレムなんだそうだ。そういえば、この町に来たばっかりの頃、町の外に出る門のところでこのエンブレムを見た覚えがある。
ワインを堪能していると、いつの間にか広場の中心に楽隊が現れていた。バイオリンや、太鼓、ギターみたいな楽器と笛で思わず踊りたくなるような明るい曲を演奏している。
彼らの周りをカップを片手に、みんなが輪になって楽しそうに踊っていた。お年寄りから、20代くらいの子まで。年齢層も幅広いし、男女の組み合わせだけでなく、男同士、女同士で踊っている人もいた。
「何だ、踊りに行くか?」
「踊れないからいい。ただ、男同士、女同士で踊ってる人もいるなって見てただけ」
俺が踊れるのは、マイムマイムとオクラホマミキサーくらいだ。
「そうか。なら、酒のツマミとおかわりをもらいに行こうぜ」
あっちだとエルが指さした方向には、
「あ、オリーとマートルがいる」なんたる偶然。
「探索者ギルドのエンブレムが飾ってあるから、その関係じゃねえか」
「どういうこと?」
2人がいる方に向かって歩きながら、エルに質問すれば「単純な話だ」そうで、
「知り合いがいるところに寄っていくってだけだ。マートルの知り合いでもいたんだろ」
「あ、そういうこと」
広場の端っこのほうには、テーブルがずらりと並んでいる区画がある。会議室などでよく見る長机を2つか3つ並べたブースが、いくつも設けられているのだ。テーブルの上には、ワイン樽や、おつまみが並んだ大皿が並べられている。
それぞれのブースには、エンブレムが描かれたタペストリーが飾られていて、それがどこのものか分かれば、そのブースをどこが出しているのかが分かるようになっていた。
「俺には、さっっぱり分からないけども……」
「俺も、侯爵家と探索者ギルド、あとザウラックシアターのエンブレムしか分からん」
自分に関係のあるところと領主である侯爵家のエンブレムくらいしか分からない人がほとんどなんだそうだ。よかった。領主様のエンブレムは覚えたから、今年中にセガール調理師ギルドのエンブレムを覚えるようにしよう。最近、すっかり疎遠になってるけど、一応、俺が所属しているギルドなわけだし、覚えとかなきゃまずいだろう。
「あ、スバル。明けましておめでとう」
「おぉ。明けましておめでとう」
こちらから声をかけるより先に、オルレアたちのほうから声をかけてくれた。
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
ギューッとオルレアを抱きしめると、向こうも「こちらこそよろしく」と抱きしめ返してくれた。エルが「俺の嫁がかわいい」とぼやき「分かる」とマートルが同意していた。
オルレアたちも、小鐘楼の鐘が鳴る前に領主様のカップが回ってきたらしい。2人も、広場での年越しは久しぶりだったそうで、
「今年はいい年になりそうだねって話してたんだ」
「俺とエルも回って来たから、最強だな」
4人でカップを見せ合いっこして笑った。
「そこにルチアーノのブースがあるんだよ。ツマミ、もらってこねえ?」
「いいな」
マートルの提案に乗ったのは、エルだった。ルチアーノといえば、ボブの前の職場だ。無料で配布しているので、量はそんなに多くない。1人、1皿をもらって、ブースから離れる。
「いただきまーす」
サクサクの鶏肉の中から、チーズが出てきた。マッシュルームも入っていて、なかなか美味しい。
「すごい。温かいからチーズがトローっとしてる」
「うまいな。さすがルチアーノ」
「これ、もっとでかいので食いたいな」
「メイン料理で出てきても不思議じゃないな」
他にもブルスケッタやオープンサンド、一口パイなどがあり、どれも美味しかった。ルチアーノ以外のブースもお邪魔して、ワインのお代わりをもらったり、おツマミや一口サイズのデザートなんかもいただいたりして、俺の胃も大満足だ。
さて、この無料配布のブース。貴族なら無条件に単独ブースを出せるそうだ。庶民が個人で出そうと思ったら、ある程度の資産を持っていないとだめらしい。また、最低でも2人以上の連名でしか出せないそうだ。ぶっちゃけて言えば、貴族の面子を守るためである。
とはいえ、商売をしている人は、ルチアーノのように店の名前でブースを出すことができるそうだ。ただし、ギルドの登録ランクが銅の店は不可。金なら単独、銀なら連名と決まっているそうだ。このランクは、売り上げではなく、店舗数によって決まる。また、銀ランク以上の店がブースを出さないことはあり得ないらしく、階級社会の圧力を垣間見た気がした。
ワインを堪能していると、いつの間にか広場の中心に楽隊が現れていた。バイオリンや、太鼓、ギターみたいな楽器と笛で思わず踊りたくなるような明るい曲を演奏している。
彼らの周りをカップを片手に、みんなが輪になって楽しそうに踊っていた。お年寄りから、20代くらいの子まで。年齢層も幅広いし、男女の組み合わせだけでなく、男同士、女同士で踊っている人もいた。
「何だ、踊りに行くか?」
「踊れないからいい。ただ、男同士、女同士で踊ってる人もいるなって見てただけ」
俺が踊れるのは、マイムマイムとオクラホマミキサーくらいだ。
「そうか。なら、酒のツマミとおかわりをもらいに行こうぜ」
あっちだとエルが指さした方向には、
「あ、オリーとマートルがいる」なんたる偶然。
「探索者ギルドのエンブレムが飾ってあるから、その関係じゃねえか」
「どういうこと?」
2人がいる方に向かって歩きながら、エルに質問すれば「単純な話だ」そうで、
「知り合いがいるところに寄っていくってだけだ。マートルの知り合いでもいたんだろ」
「あ、そういうこと」
広場の端っこのほうには、テーブルがずらりと並んでいる区画がある。会議室などでよく見る長机を2つか3つ並べたブースが、いくつも設けられているのだ。テーブルの上には、ワイン樽や、おつまみが並んだ大皿が並べられている。
それぞれのブースには、エンブレムが描かれたタペストリーが飾られていて、それがどこのものか分かれば、そのブースをどこが出しているのかが分かるようになっていた。
「俺には、さっっぱり分からないけども……」
「俺も、侯爵家と探索者ギルド、あとザウラックシアターのエンブレムしか分からん」
自分に関係のあるところと領主である侯爵家のエンブレムくらいしか分からない人がほとんどなんだそうだ。よかった。領主様のエンブレムは覚えたから、今年中にセガール調理師ギルドのエンブレムを覚えるようにしよう。最近、すっかり疎遠になってるけど、一応、俺が所属しているギルドなわけだし、覚えとかなきゃまずいだろう。
「あ、スバル。明けましておめでとう」
「おぉ。明けましておめでとう」
こちらから声をかけるより先に、オルレアたちのほうから声をかけてくれた。
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
ギューッとオルレアを抱きしめると、向こうも「こちらこそよろしく」と抱きしめ返してくれた。エルが「俺の嫁がかわいい」とぼやき「分かる」とマートルが同意していた。
オルレアたちも、小鐘楼の鐘が鳴る前に領主様のカップが回ってきたらしい。2人も、広場での年越しは久しぶりだったそうで、
「今年はいい年になりそうだねって話してたんだ」
「俺とエルも回って来たから、最強だな」
4人でカップを見せ合いっこして笑った。
「そこにルチアーノのブースがあるんだよ。ツマミ、もらってこねえ?」
「いいな」
マートルの提案に乗ったのは、エルだった。ルチアーノといえば、ボブの前の職場だ。無料で配布しているので、量はそんなに多くない。1人、1皿をもらって、ブースから離れる。
「いただきまーす」
サクサクの鶏肉の中から、チーズが出てきた。マッシュルームも入っていて、なかなか美味しい。
「すごい。温かいからチーズがトローっとしてる」
「うまいな。さすがルチアーノ」
「これ、もっとでかいので食いたいな」
「メイン料理で出てきても不思議じゃないな」
他にもブルスケッタやオープンサンド、一口パイなどがあり、どれも美味しかった。ルチアーノ以外のブースもお邪魔して、ワインのお代わりをもらったり、おツマミや一口サイズのデザートなんかもいただいたりして、俺の胃も大満足だ。
さて、この無料配布のブース。貴族なら無条件に単独ブースを出せるそうだ。庶民が個人で出そうと思ったら、ある程度の資産を持っていないとだめらしい。また、最低でも2人以上の連名でしか出せないそうだ。ぶっちゃけて言えば、貴族の面子を守るためである。
とはいえ、商売をしている人は、ルチアーノのように店の名前でブースを出すことができるそうだ。ただし、ギルドの登録ランクが銅の店は不可。金なら単独、銀なら連名と決まっているそうだ。このランクは、売り上げではなく、店舗数によって決まる。また、銀ランク以上の店がブースを出さないことはあり得ないらしく、階級社会の圧力を垣間見た気がした。
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