【完結】奇跡の魔女

最終章 最初に叶えた願い事

1（現在）

深い深い森の中、美しい屋敷があった。
周囲を森に囲まれた屋敷には【奇跡の魔女】と【魔女の使い魔】が住んでいる。

「ノエル」

「如何なさいましたか？アステル様？」

「ノエルの願いを叶えたのが始まりだったね」

「アステル様が私の願いを叶えてくださったあの日から、いえ……それよりもずっと以前から……私の総てはアステル様だけのモノ」

「面白い人間だと思ったんだ」

「心の声……でございますか？」

「ああ、そうだよ」

「光栄でございます」

「それに………名前をくれた」

「そんなこともございましたね……」

二人は願いを叶えた日のことを思い出していた。
とても懐かしく、強く記憶に残る出来事の１つ。
かつてノエルが願い……何も知らずに承諾し……願いに代償が必要だと知り……それでも願いを叶えたいと云ったノエルの優しく穏やかで真剣な眼差し。

アステルはノエルの願いを叶えた日のことを忘れたことなど一度もない。
【人形姫】だった自分を救ってくれた人。
心の声が聞こえる自分を心から愛してくれる人。
何処までも最後まで共にありたいと強く願ってくれた人。
忘れたことなど一度もない。
幾度も救われ、幾度も愛され、どんなときでも傍にいて守ってくれる優しい人。

【奇跡の魔女】と【魔女の使い魔】は、幼い頃に出会い、互いが互いを深く愛し愛されて、強い絆で結ばれた関係である。
それは今も昔も変わらない。

アステルと絶対に離れたくなかったノエルが、アステルに乞い願った。
離れたくない。傍にいたい。
そんな単純明快な願い。
相手が悪かっただけ。

その代償は【人間としての生】だった。
ノエルに後悔は欠片ほどもない。
ノエルにとってそれは大した代償ではないのだから。