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第10話 ジゼルのいない夏(アベルside)
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最終話の予定でしたが、長かったので2話に分けました。
次話が最終回です、申し訳ございませんm(_ _)m
=====
あの夏の日から、一年が過ぎた。
あの日、痛みに耐えるジゼルを目の前にして、彼女を失いたくなくて、最後まで繋ぎ止めたくて、必死にもがいた。
ジゼルに愛していると伝えて、やっと彼女に触れて抱きかかえることができたのに。
ジゼルの体はそのまま、青白い光と共に跡形もなく消えてしまった。
彼女のオーラがその場から消えると、あばら家の周りは再び闇に閉ざされた。
あの日は確か、夏至だったと記憶している。短い夜が終わって空が白み始めると、絶望して流した涙の向こうに小さな青い光の粒が見えた。
元々ジゼルが倒れていた場所に散らばっていたその小さな光の欠片に手を伸ばすと、それは幽霊の核、サファイアの宝石だった。
粉々になったサファイアを地面の砂ごとかき集めて、俺は声を上げて泣いた。
ジゼルを消滅させようとしたアーヴィン・キーガンやヘレナを裁くことはできなかった。この国には人間を殺めた者を罰する法は存在しても、幽霊を守る法など一つもない。
彼らが何事も無かったかのように生きていることも、俺が幽霊退治に成功した英雄のように讃えられたことも、全て気に入らなかった。
アーヴィンやヘレナに対しての怒りもあったが、俺の一番の怒りの対象は自分自身だ。
もっと早く魔女の呪いに気付いていれば。
ジゼルの弱点が鏡だなんて、独り言を言わなければ。
もっと早くジゼルの元に到着していれば。
痛みに耐えるジゼルに、愛しているなんて言わなければ。
一つ一つの自分の行動の選択肢を毎日のように後悔し、飲めない酒を飲んだ。
後悔の日々が続く中で、あの日ジゼルが残した心をペンダントに入れて首にぶら下げながら、俺は今日も生きている。
「アベル、そろそろ騎士団の寮を出て戻ってきたらどうだ。お前ももう二十五だし、新人騎士のように寮に住み続ける必要はないだろう。結婚してこの屋敷に住めばいいじゃないか」
「……父上。私は結婚するつもりはありません」
「何を言っているんだ、お前が結婚して爵位を継いでくれなければ。クラウザー家をどうするつもりだ!」
「分かっていますよ。いつかは何とかするつもりです」
父との言い合いは日常茶飯事。
貴族の家に生まれた以上、いつかは俺も誰かと結婚して爵位を継がなければいけないことは分かっていた。でも、今の俺にはやらなければならないことがある。
それは、ジゼルの生きた証を見つけることだ。
あの夏、俺は幽霊のジゼルと毎日一緒に過ごした。
お互いの好きなもの、嫌いなもの、その日にあったこと考えたこと、一晩中語り合った日もあった。
それなのに、俺はジゼルの生きていた頃のことを何も知らないのだ。幽霊になる前に、ジゼルはどんな場所で暮らしていたのか。ジゼルの家族はどんな人なのか。
『ジゼル』という名だけを頼りに、俺は彼女の痕跡を探して回っていた。
しかしこの国ではごく一般的な『ジゼル』という名だけでは、彼女にたどり着くことはできなかった。そもそも彼女がこのオルタナ出身なのかどうかさえ、俺は知らなかった。
こうして毎日を悶々と過ごしていた俺のところに、あのオルタナの森のあばら家を取り壊すという報せが入ってきた。
次話が最終回です、申し訳ございませんm(_ _)m
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あの夏の日から、一年が過ぎた。
あの日、痛みに耐えるジゼルを目の前にして、彼女を失いたくなくて、最後まで繋ぎ止めたくて、必死にもがいた。
ジゼルに愛していると伝えて、やっと彼女に触れて抱きかかえることができたのに。
ジゼルの体はそのまま、青白い光と共に跡形もなく消えてしまった。
彼女のオーラがその場から消えると、あばら家の周りは再び闇に閉ざされた。
あの日は確か、夏至だったと記憶している。短い夜が終わって空が白み始めると、絶望して流した涙の向こうに小さな青い光の粒が見えた。
元々ジゼルが倒れていた場所に散らばっていたその小さな光の欠片に手を伸ばすと、それは幽霊の核、サファイアの宝石だった。
粉々になったサファイアを地面の砂ごとかき集めて、俺は声を上げて泣いた。
ジゼルを消滅させようとしたアーヴィン・キーガンやヘレナを裁くことはできなかった。この国には人間を殺めた者を罰する法は存在しても、幽霊を守る法など一つもない。
彼らが何事も無かったかのように生きていることも、俺が幽霊退治に成功した英雄のように讃えられたことも、全て気に入らなかった。
アーヴィンやヘレナに対しての怒りもあったが、俺の一番の怒りの対象は自分自身だ。
もっと早く魔女の呪いに気付いていれば。
ジゼルの弱点が鏡だなんて、独り言を言わなければ。
もっと早くジゼルの元に到着していれば。
痛みに耐えるジゼルに、愛しているなんて言わなければ。
一つ一つの自分の行動の選択肢を毎日のように後悔し、飲めない酒を飲んだ。
後悔の日々が続く中で、あの日ジゼルが残した心をペンダントに入れて首にぶら下げながら、俺は今日も生きている。
「アベル、そろそろ騎士団の寮を出て戻ってきたらどうだ。お前ももう二十五だし、新人騎士のように寮に住み続ける必要はないだろう。結婚してこの屋敷に住めばいいじゃないか」
「……父上。私は結婚するつもりはありません」
「何を言っているんだ、お前が結婚して爵位を継いでくれなければ。クラウザー家をどうするつもりだ!」
「分かっていますよ。いつかは何とかするつもりです」
父との言い合いは日常茶飯事。
貴族の家に生まれた以上、いつかは俺も誰かと結婚して爵位を継がなければいけないことは分かっていた。でも、今の俺にはやらなければならないことがある。
それは、ジゼルの生きた証を見つけることだ。
あの夏、俺は幽霊のジゼルと毎日一緒に過ごした。
お互いの好きなもの、嫌いなもの、その日にあったこと考えたこと、一晩中語り合った日もあった。
それなのに、俺はジゼルの生きていた頃のことを何も知らないのだ。幽霊になる前に、ジゼルはどんな場所で暮らしていたのか。ジゼルの家族はどんな人なのか。
『ジゼル』という名だけを頼りに、俺は彼女の痕跡を探して回っていた。
しかしこの国ではごく一般的な『ジゼル』という名だけでは、彼女にたどり着くことはできなかった。そもそも彼女がこのオルタナ出身なのかどうかさえ、俺は知らなかった。
こうして毎日を悶々と過ごしていた俺のところに、あのオルタナの森のあばら家を取り壊すという報せが入ってきた。
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