精霊の愛の歌

黄金 

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23 選霊の儀にむけて


 バアァァァアンと扉が開けて入ってきたのはジェセーゼ兄上。

「あ、兄上どうしたのです?」

 キュキュっと上がったジェセーゼ兄上の猫目は何故か必死だ。

「大変だ!」

「え!?」

 何が大変なんだろう?

「ジオーネルは用意したか?」

「何をでしょうか?」

「簪だ!」

 かんざし…………簪?
 ハッと思い出す。
 ゲームの最後でくっ付いた主人公と泰子はお互い簪を交換し合っていた。
 黒の巫女は黒い簪を、其々の泰子は己の色の簪を用意して交換していたが、そういえば選霊の儀でも片方が簪を渡して相手が受け取ればOKという流れが……。
 まさに婚活パーティー。
 
「してません。」

 青い顔で震える私を見て、兄上は何故か安堵の顔をした。

「そうか。私もだ。」

 なんだ、仲間を探してたのか。
 いや、いやいや兄弟揃って用意してないとか馬鹿だろう。

「どーしましょう。今から職人に頼むわけにもいきませんし、そこらへんの小物屋の品物など泰子相手に失礼になりますよね?」

「そーだな。それで大変なんだ。」

 兄上は仲間を見つけて落ち着いてしまっている。
 二人でうーんと頭を抱えた。

「ククク。」

 ん?
 窓に目によると銀の蛇姿をした銀の精霊王様が頭を上げて此方を見ていた。
 このクククというのは鳴き声だ。
 ピィと鳴いたりクククと鳴いたり大変可愛い。
 下には降りたく無いのか必死に伸び上がって腕に巻き付こうとするので、手を差し出して受け止めてやる事にしている。
 大きさは変えれるらしいが、精霊力を溜めておきたいので常にこの大きさにしているのだとか。
 後、蛇だと喋れないし、人型を取るにはもっと精霊力の回復がいる。
 同じ銀の精霊力に当たっていた方が回復が早いらしく、ずっと側にいる。

「ククククク。」

「なんじゃ、銀が呼び付けるとは珍しいの。」

 突然湧いた金の精霊王。
 ここ私の部屋。
 部屋に精霊王の気が満ちて神聖な空気を纏うが、精霊王に対して部屋が小さい。
 私とジェセーゼ兄上は、ウッと眼を細めた。私の目は元々細いが。

「ククク、ククク、ククククク、ピィ」

「そうか、世話になっておるし仕方あるまい。」

 分かるんだ?
 ちょいちょい、と手招きする金の精霊王。
 ジェセーゼ兄上と共に近付くと、手を取られた。
 銀の精霊王はそのまま私の腕に巻きついている。

「では行こうかの。」

 金の精霊王の一声で景色が変わった。
 ゴウッという唸る音と下から吹き上げる風に思わず顔を庇う。
 足は着いて無いが金の精霊王に支えられ浮いている状態だった。

「……兄上、凄く高いですよ。」

「お前は何故落ち着いている!?」

 これでもビックリしてる。観覧車か、足ブラブラした遊園地の乗り物って思えば平気かも?支えてるのも金の精霊王だし。

「クククク。」

「ふむ、本体部分は銀と象牙でよく無いか?銀が黒く変色して行くのもジオーネルっぽいと思うのぉ。」

「ピィピィ。ククククク。」

「飾りはそこの洞窟の奥に水晶谷がある。花水晶を取ろうぞ!」

「ピィ!ククピィ。」

「ふむふむ、そうじゃろう。」

 銀の精霊王の言葉は分からないが金の精霊王ののせられ感がハンパない。

 また視点が変わり、暗い洞窟に変わった。
 一面には水晶の谷が広がり、淡い発光が幻想的だ。

「わぁ、凄い!兄上、綺麗ですよ!」

「どんなに凄かろうと綺麗だろうと、高い!何故高い!」

「兄上高所恐怖症だったんですね。」

「ヒェぇぇぇ~。」

 騒ぐ兄弟をよそに金の精霊王は辺りを見回す。
 近くを飛ぶ精霊に何か言うと、精霊はフワフワと飛んで、何の躊躇いもなく水晶をバキンともいで来た。

「どうじゃ、銀の精霊王よ。これなど良いのではないか?」

「クク、ピィ。」
 
 精霊が持って来たのは中で花が咲いた様に結晶が出来た水晶の塊。
 精霊王同士で何かを納得し、またもや景色が変わる。



 ジオーネルの部屋に戻ってきた。
 付いて行く必要あったのだろうか?
 金の精霊王が右手を振ると机の上にゴトンと硬い音を出す物が落ちる。
 象の角っぽいのと、歪な形してるけど銀の塊?

「天霊花綾には鉱石の金も銀も無ければ象もおらんからのう~。少々向こうから失敬せねばならんのじゃ。」

 怪しい所から貰ったから問題ないのじゃーとか平気な顔して言っているが、それ泥棒。
 銀の精霊王が少し大きくなって蛇の口をパカリと開けた。
 金の精霊王が次々に口に放り込むと、口を閉じてモゴモゴする。
 ペッと出したのは二つの簪。
 一つは銀の本体に、銀の淡い発光を放つ花水晶を花型に加工して先端に付け、緻密な銀装飾で飾ったもの。
 一つは白の象牙で先は扇型に平たく桃色の小さな花水晶が飾られたものだった。

「わあ、綺麗ですね!」

「凄いな!」

「ククククク。」

 どうやら困っていたから作ってくれたらしい。

「有り難く貰うのじゃ。」

 本気で困ったので有り難く頂いてしまった。

「ククククク、ククククク。」

「そんな……、まだ許してくれんのか。」

 金の精霊王はまだ怒られてたのか。
 まぁ、黒の巫女に翼を選んだのは間違いだよな。
 銀の精霊王に顎でこき使われている様な気がするが、自業自得だ。
 この方達は長い年月を生きて行くのだから、そのうち仲も戻るだろう。
 精霊王達は放っておいて、ジェセーゼ兄上と良かった良かったと安堵し合った。





 選霊の儀は招霊門の有る大広間で行われた。
 意外と本当に婚活パーティーっぽくて、入った瞬間に笑ってしまった。
 司祭様達が動き回ってお世話してくれるし、食事を楽しみながらお喋りをする、割と気楽な儀式だった。
 
 金の泰子から贈られたのはべっ甲の簪だった。飾りとなる平たい部分は花と鳥が鮮やかに彫られており、端の方に開いた丸い穴には金の鈴と垂れ下がる様に金の小鳥と花が連なっていた。動かす度に鈴と垂れた飾りが合わさりシャラシャラと音を鳴らす。

「わあ、可愛い……!」

 金鉱石はこの天霊花綾には無いと金の精霊王が言っていたが、たまに出回るのだそうだ。本気で精霊王は何処かから泥棒して来てるのでは………。
 べっ甲は南の地に亀がいるのだと教えてくれた。

「あの、精霊王様達に殆ど用意して頂いた様なものですが、金の泰子にも私の簪を受け取って欲しいです。」

 銀の簪を差し出すと、嬉しそうに受け取ってくれた。
 しかし本当はここでお互い簪を差し合うのだが、二人とも髪が短かった。
 金の泰子は髪を肩まで切ってしまっているし、私は一度向こうは行った弊害で黒髪のショートだ。
 伸びたら付けようと言い合い笑った。

 ジェセーゼ兄上は緑かがった水晶を生い茂った葉の形に精巧に加工された簪で、垂れた白の花飾りが可愛かった。

 赤の泰子とサフリも笑い合って交換している。
 他にも何人もの候補者と白の巫女が番う約束をしながら簪を交換していた。

 幸せな空気に、翼に混ぜ返された選霊の儀が漸く終わるのだ思うと感慨深い。
 この天霊花綾がゲームの世界なのか、この世界に似せてゲームが存在したのか分からない。
 金の精霊王は幾多の世界線の中の一つなのだからどちらでも存在し得ると言った。どっちでもどーでも良いという金の精霊王らしい答えだった。

 黒の巫女が退場してジオーネルが伴侶となった結末は、ゲームで言えば友情エンドだろうか。スチルの中のほんの少しに描かれた四人の泰子と其々の伴侶は、小さな絵の中で幸せそうに笑っていた。
 青の泰子はいないけど、その伴侶となる予定だった人は別の人を選んだけど、それはこれから力になっていきたい。
 
 今はジェセーゼ兄上と緑の精霊王に感謝して、金の精霊王にも一応感謝して、私を選んでくれた金の泰子に最上の愛の歌を贈りたい。

















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