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10 お茶会
しおりを挟むさてさてやって来ました。お茶会です。
お父様に聞いたらアクセミア公爵家のお茶会を非難する人はいないと言われてしまった。アクセミア公爵家は王家の次に偉い。そんな偉い公爵家は国の中で絶大な権力を保持している。公爵家に気に入られようとどこの貴族家も必死になるので、ヨフミィが開くお茶会には誰しも絶対に参加したいと招待状を待ち構えているはずだと教えてくれた。
今回のお披露目を兼ねたお茶会には、学院に通う貴族家の子息子女を招待しなければならない。
リストを用意してもらってせっせと招待状を作り、学院の中で場所を決め申請を出して、食事や衣装、飾り付けを考えた。ドレスコードは流行りのグリーンにして、花は暖色系で纏めている。
とりあえず豪華にしとけばいいんじゃない?
分かんないので料理は公爵家の料理長に、衣装はデザイナーに、装飾はお父様に任せた。
………だって分かんないんだもん!
「今回のことを参考に勉強します。」
ラニラルが真面目な顔で約束してくれた。
「ありがとう。期待してる。」
本気で任せた!次からはラニラルがやってくれるかも~。やったぁ!
お茶会は盛大だ。
場所は学院の庭園を使うことにした。雨だった時の為に予備で広い講堂を用意していたけど、本日は気持ちのいい快晴だった。
公爵家の招待を断る人はいないので、ほぼ全員参加。侯爵家から下は男爵家まで来ている。平民は呼んでないけど、近くに来たらお菓子の詰め合わせを配るように入り口に用意していた。これはお父様が手配したことだ。軽く軽食やジュースも飲めるようになっている。
なかなかいいのではない?よく分かんないけど。
「昼食が終わったら終了だよ。」
子供主体のお茶会なので時間は短い。そしてお父様もこの会場にいた。何故なら父兄参加型だから!
子供のパーティーに親同伴?なにそれ。といっても十歳以上の生徒の親は来ない。九歳以下の生徒だけ親も来るらしい。そういう決まりなんだって。
だからあちこちに設けられているテーブルには大人も結構いる。しかも両親共いるところが多い。そしてウチはお父様だけだった。
僕のテーブルは前方端にある丸テーブルだ。テーブルには僕とお父様、ソヴィーシャとリュハナ、ラニラル、そして三人の両親も座っていた。
フブラオ先生とマリニさんは平民だからと断ったんだけど、ラニラルにも参加してもらいたいからお願いして来てもらった。
ソヴィーシャとリュハナの両親はどちらも子供にそっくり!と言った雰囲気があって、アクセミア公爵家に忠実な家臣~といった感じで僕にもお父様にも丁寧に接してくれている。バハルジィ親子が平民でも父親同士握手を交わし挨拶をする礼儀正しい人達だった。
「お噂はかねがね。貴殿は公爵を手のひらの上で転がすのだとか。漸く会えましたな!」
とソヴィーシャの父上。ソヴィーシャと同じ金髪の凛々しい騎士といった感じの人だよ。身体を鍛えてそうで立派な体格をしている。
「バハルジィ殿は公爵からの信頼が厚いとか。あの方を統制できる貴重な人材だね。これからもよろしくお願いします。」
これはリュハナの父上。王宮医師をしているからか柔らかそうな雰囲気。リュハナとそっくり!いや、リュハナがそっくり?
「私もウハン侯爵とロデネオ伯爵にこうやってご挨拶する機会に恵まれ嬉しく思います。」
フブラオ先生は平民なのに相手が貴族でも平気で挨拶をしていた。この先生には気後れするという感覚がないのかも。周りが貴族だらけでも平然としていた。
それにしてもウチの父上ってば、信頼できる家臣にどう思われてるんだろう?気になる発言がチラホラと聞こえた気がするけどね。
オメガ夫人達も和気あいあいとしていた。
ウハン侯爵夫人はキツめの美人で、ロデネオ伯爵夫人は童顔可愛い系だった。お父様とマリニさんを合わせた四人で楽しそうにお喋りしている。
オメガ三人はあの有名?なネックガードをしていた。色はドレスに合わせてオシャレ仕様だ。フブラオ先生がいうにはオメガの外出時の安全装置であると共に、アルファと番った後も噛み痕を隠す為につけるんだそうだ。
………あれ?お父様って噛み痕あったっけ?
なかなかいい雰囲気のテーブルで僕は満足!
問題は父上だ。本当は参加する予定だったんだけど、朝から急に王宮から呼び出されてしまった。なんとか断ろうと頑張っていたけど王様からの呼び出しだとか言われて渋々馬に乗って出て行った。
速攻で終わらせて間に合わせると言ってたけど間に合うのかな?
僕はお父様さえ来てくれたら良かったので、父上はどっちでもいいかなぁ。お父様さえいてくれたら僕の気分は最高だよぉ~。
さてそろそろメイン料理が配られようかという頃、会場の奥からザワっとどよめきが起こった。
なに?
「どーしたの?」
会場入り口の方が騒がしくなり、入り口付近にいた人達から立ち上がっていくのが見えた。
「あっ。」
ソヴィーシャは目がいいのかいち早く声を上げた。何?とソヴィーシャを見たが、教えてくれたのは隣に座っていたラニラルだった。
「ヨフミィ様、王族です。」
コソッと耳打ちしてくれる。王族ぅ?
入り口からそれらしき人影が三人分。
ソヴィーシャの金髪はサラサラの直毛だが、入って来た人の金髪はクルクル巻毛。
大人の金髪巻毛に碧眼が多分父親?アルファっぽいなと思う。その隣にいる女性はホワイトベージュの長い髪に桃色の瞳の綺麗な人。オメガかなと思う。じゃあアルファ父親にそっくりな金髪巻毛に桃色の瞳の男の子が息子だろう。
「だれぇ?」
「……王太子御一家です。」
コソコソとラニラルが教えてくれた。
「え?学院に王子がいるってリストにはなかったよ?」
「はい、在学されておりません。」
なんでここに来たの?招待してませんけどぉ?
僕達が座るテーブルに王太子御一家がやって来た。後ろにはゾロゾロと護衛騎士や侍従侍女達がついて来ている。物騒だからやめて欲しい。
お父様が立ち上がった。そして綺麗な所作でお辞儀をする。
それをチラリと王太子は見て無視した。
無視したっ!
「公爵は来ておらんのか?」
むかーーー!
王太子はこの中で一番立場が上になるウハン侯爵に話し掛けた。こんにゃろ!
「………王太子殿下にご挨拶申し上げます。本日公爵は王宮に出向いております。」
ソヴィーシャのお父さん、ウハン侯爵はチラリとお父様を見てから控えめに挨拶をした。
「そうか、公爵の息子が学院でお披露目のお茶会を開いていると聞いて来たのだが、入れ違いになったようだな。」
ウハン侯爵は特に返事せず頷いただけだった。
「其方が息子のヨフミィ・アクセミア公子か。」
は、な、し、か、け、ん、なーーーっ!
僕じゃなくてまず公爵夫人であるお父様に挨拶しろーーー!
てかこいつか?乙女ゲームでヒロインと結ばれた王太子って。コイツかぁ~。顔は確かに王子様ーって感じで綺麗系カッコいいだけど、偉そうで僕のタイプではない。
そんで隣の女がヒロインかぁ。なんか目力あるなぁ。僕のことそんなキラキラした目で見ないで欲しい。目が腐りそう。なんでそんなに僕を見てるの?
「はい、王太子殿下にお会いでき嬉しく存じます。本日はこちらにお越し下さるとは存じ上げませんでした。どのようなご用件でしょうか?」
知らなかったから席はないよという意味で尋ねた。
「よい、席ならこのテーブルに追加すればよかろう。」
よくねー。
「ごめんなさいね。急に来たから騒がせてしまって。座ってもいいかしら?」
王太子妃はフワフワのドレスを着ていた。野外の日中にそのドレスは重たそうだなとは思ったけど、やっぱり重たいみたいだ。
しかも招待状もなしに来たからドレスコードも守っていない。みんな緑系の服で来たのに、王太子と王子は白い衣装だし王太子妃は瞳と同じピンク系だ。
……もう子供を持ついい歳した人間なんだからそのピンクはやめようよ。これみよがしに扇子持つのもなんかヤダ。
「この席に座っても?」
なんと王太子妃はお父様の席を指差した。
はあぁ?どーいうつもり!?
しかも王太子妃の侍女が椅子を引いて座らせてしまった。お父様の席がなくなった。
周りから何故かクスクスと笑い声が聞こえる。
「申し訳ありませんが本日は出席者の椅子しか用意しておりません。後日ご招待致しますので日を改めていただいても宜しいでしょうか?」
僕は本日の主役としてハッキリと王太子に告げた。ウハン侯爵とロデネオ伯爵は驚いた顔をしているが、フブラオ先生は当然だと頷いていた。
「まぁ、礼儀がなってないのね。」
なってないのはお前だろう!って叫んで追い出したい~!なんだよこのヒロイン!
「おい、王族に対してその態度はないだろう?せっかく来てやったのに何様だ?」
金髪巻毛の王子が僕に噛み付いてきた。
「アクセミア公子が入学すると聞いて我が家もと思ったのだ。」
いやじゃあお前の息子が入学した時に同じようにお茶会開けば?何勝手に乱入してんだよ。
「ヨフミィの隣が空いているようだな。私はそこに座ろう。」
教えてもいないのに勝手に名前を呼ぶな!後僕はお前の名前知らないし、その席はラニラルの席だから!
「ダメです。」
ハッキリ拒否すると、王族一家はキョトンとした。まさか拒否されるとは思っていなかったらしい。
僕さっき言ったよね?後日招待しますって。日を改めろって意味分かんなかったの?
「あら?」
王太子妃が呟いた。立ち上がり僕の前に来て少し腰を屈める。
「公爵夫人にそっくりなのね。」
はぁ?どういう意味?
僕のお父様は妖精さんだよ!今も黙ってお前らの胸糞悪い態度にも耐えてるような大人しい人だよ!?
「ねぇ、公爵夫人はどう思います?私達が邪魔かしら?ね?どうかしら?」
王太子妃はクルリと周りを見回しながら僕達の話に注目している人達に訴え掛けた。
「せっかく王族の方々が参加して下さると言うのに追い出そうなんて…。」
「育ちがやっぱり。」
突然ヒソヒソと囁かれる言葉にお父様が暗い顔をする。
「ヨフミィ、いいんだよ。座っていただいて、僕は椅子を用意させるから…。」
お父様が遠慮し始めた。
え?お父様は公爵夫人だよ?アクセミア公爵家のお茶会はどこの貴族家も参加したがるお茶会なんでしょう?なんで公爵夫人のお父様が席を立つ必要があるの?
「ああ、平民が会場に参加していると聞いている。まさかこのテーブルにはおるまいな?」
王太子はバハルジィ家のことを言っているのだ。
ムカムカムカァ!
「落ち着いて下さい。俺達は構いませんから。」
ラニラルが顔を赤くして怒る僕を宥めようと囁いた。
「平民が公子に近寄るな。」
王子がパシッとラニラルを叩いた。
「ちょっ!」
何するの!?
「申し訳ありません。」
ラニラルはサッと僕から離れて頭を下げた。僕はパッとラニラルの前へ出て手を広げる。
「僕が参加するよう頼んだのです!」
キッと睨むと、僕の前にいた王太子妃が目を見開いた。その態とらしい表情はなに?と嫌な予感がする。
「ごめんなさい。間違いを犯させるわけにはいかないと思って出過ぎてしまったのね。レジュノは貴方の立場を思ってやってるのよ。
ハラリと泣き出す。
ええ~~~?レジュノって誰ですかぁ?そこの王子のこと?てか初対面で僕の立場気にする必要あるぅ?
余計なお世話です。
ここに集まった貴族達は僕達の会話に入ってこようとしない。ただヒソヒソと囁き合うだけだ。
パンパンパンパンっ!と誰かの手を叩く音が響いた。ビックリしてそちらを見ると、この会場を借りた時に偉そうに書類にハンコを押してた学院関係者だった。
「これはまた殿下。どうされたのですか?」
中年といった年齢の男性職員だ。学院で働くにはそれなりのコネが必要らしいので、この男もどっかの貴族家出身とかなんだろうと思う。
「たいしたことではない。公子に常識を教えていただけだ。」
お前が常識学べー。
ブスッとした僕の腕をソヴィーシャが肘でツンツンする。表情を隠せということなのだろう。
「王太子妃殿下も……。まさか。」
職員はまさかと言いながら僕のお父様を睨んだ。お父様はその視線に気付いて小さく震えている。
お父様は現公爵夫人だ。僕の保護者だ。親だ。爵位ある人間なのかどうか知らないが、職員如きがお父様を睨みつけるなんてあり得ない。
でもお父様の怯えようは疑問に感じる。
「学生の頃から問題がある生徒でしたが、後継をもうけてもまだ直らないとは…。」
やれやれと言いたげにお父様を侮蔑した。
カッチーンと頭にくる。
まさか学生の頃からこんな対応されてたの?お父様は十歳の頃から父上の婚約者だったはず。まさか王太子妃が好きな父上の影響で、お父様はなにもしてないのに悪く言われてた…?
ゲームの強制力か!
お父様は悪役令息キャラだったとか?ゆっるっせーーーんっっ!
こぉーんなに天使で妖精なお父様がイジメなんてやるわけがない!今だって怖くてプルプルしてるんだよ!?
守らねばっ!
「なんの権限があって公爵夫人であるお父様を侮辱するのですか?」
僕は思いっきり冷え冷えと感じてくれるように低く声を落として言った。
職員は僕の剣幕に一瞬ビクリとする。
「学院長に直訴します。」
僕の宣言に職員はカッと顔を赤らめた。
「なっ!わ、私は公爵閣下からご連絡いただきお茶会が円滑に進むよう補佐を頼まれたのですよ!?」
僕の怒りは頂点に達してスゥーと逆に落ち着いてくる。
「へぇー?父上からぁ?」
父上と同じ榛色の瞳が怒りで赤みを増してギラリと職員を睨みつける。
「…ひっ、そ、そうです!王太子殿下や妃殿下に対してそのような態度でよろしいのですか?後で注意を受けるのは公子ですよ!」
唾を飛ばして喚く職員に、僕はクイッと顎をしゃくってみせた。
「それが?お茶会の補佐も出来ないような職員は要らないよね?」
「なっ、わざわざエリュシャ王太子妃がいらっしゃっているのに公爵閣下に叱られるのはっ!」
「叱られるのは?」
ハッと職員は声を止めた。
「公爵閣下!」
「父上?」
騒ぎで気付いていなかった。父上がいつの間にかお茶会会場に到着していた。
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