じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

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22 牛、鶏、羊…ときたら?

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 キャンプの日がやってきましたー!
 大人達は狩猟大会と、留守番組はお茶会だね。好きだねー。お茶会。
 
「ヨフミィ様、僕はお父様について怪我人の世話をする予定だから、ちゃんと大人しくしているんだよ?」

 僕達は現在テントの中にいて、リュハナから本日何度目かの注意を受けていた。
 うん、もう分かってるってば!囲いから出るなってことでしょう!?
 キャンプ中は学友三人組と離れ離れになる。ソヴィーシャとラニラルは狩猟大会へ参加。リュハナは治療所の手伝いに行ってしまうので、僕はお父様と一緒にテントで過ごすことになった。護衛には父上の護衛騎士ハーディリがつくことになり、いつもいるフブラオ先生は父上が王都を不在にする為お留守番役になった。

「ハーディリは出ないの?」

「はい、護衛が本分ですから。他の騎士達も出ておりますしね。」

 勿体無い。ハーディリなら女の子からキャーキャー言われそうなのに。
 
「そろそろ出ようか。出発前に渡さないと。」
 
「はーい。」

 用意したハンカチを持ってテントを出る。ううう、本当にこれを渡すのか~。恥ずかしいんだけど。
 一応刺繍したけどねぇ。自分で言うのもなんだけど、なんの形かな?
 狩猟大会会場は馬車で一日移動というちょっと離れた森で行われる。それぞれ指定された場所に各家がテントを張って一週間も過ごすらしい。暇になりそう。
 アクセミア公爵家は王家の近くにテントを張る場所を指定された。父上が少し離そうと交渉したみたいだけど、警護の理由から却下されたらしい。
 僕がお父様を守らなくちゃ!
 お父様も王族に出会すのは嫌なのか、出る時ちょっと確認していた。ハーディリも微妙に身体を使ってお父様を隠している。父上の指示なんだろう。
 父上は王太子へお父様への招待は控えるよう直接言ったようなので招待状は来なかったけど、僕がレジュノ王子の所へ遊びに行く時、たまにエリュシャ王太子妃が王子についてくる時がある。
 いや、まぁ、普通の母親ならそれが当たり前というか、どんな子と遊んでいるのか気になって見に来るのが普通と思うんだけど、この王太子妃が?って思っちゃうんだよね~。
 なんかね。
 その理由はレジュノ王子にあるんだけど。自分の母親が態々来たのに喜ばないっていうか。迷惑そうっていうか。反抗期?ちょっと早い気がするけど。八歳ってまだ母親に甘えたい年頃だった気がするんだけどなぁ。前世とこの世界の感覚は違うのかな?

 僕達はそそくさと開催式が行われる場所に移動した。テントの中に入れる護衛はハーディリさんだけだけど、外には大量に護衛がいた。
 テントはぐるりと守られているし、移動にもハーディリさん以外に何人かついてくるみたい。
 でもよく見たらそんな貴族はいっぱいいた。守られる人より守る人の方が多い。
 
「あっ。」

 お父様が声を上げた。見つめる先には父上がいた。他の貴族っぽい狩猟姿をした人達とお話をしている。
 お父様は近寄ろうかどうか迷っているようだ。
 ヨフミィは下からお父様を見上げてむーんと思案する。
 ここは一肌脱ぐべき!お父様はこの日の為に頑張ってハンカチ作ったもんね!

「父上~~~~!」

 たーーーと走ってドンと激突した。微妙に腹を狙ってやれ!

「うぐっ。」

 父上は僅かに呻き声をあげた。そして僕は頭突きした頭を撫でた。かっっったいよ!父上のお腹が硬いよ!?

「父上~、お腹かたい~。」

 自分で頭をさすさすと撫でながら涙目で訴えたら、頭上で父上が呆れた顔をしていた。

「急に頭突きするからだろう?」

 父上のお腹になんか入ってるのかと思ったら何もなかった。これはたんに筋肉が硬かったということ?腹筋ってこんなに硬くなるの?
 自分のお腹を触る。ふわふわだぁ……。

「首は痛めなかったか?まさかたんこぶが出来たりしてないだろうな?」

 父上が僕の真白の髪をくしゃくしゃと撫で回す。

「ボサボサなるからやめて下さい。」

「お前な…。」

 親子で会話をしていたら、さっきまで父上とお喋りをしていた貴族達が笑い出した。

「いやはや、公爵は息子さんと仲がいいですね。」

「利発ですなぁ。」

 くそー、なんかわんぱく坊主くらいに見られた気がする。

「父上、ちょっと来て下さい。」

 僕が父上の手を引くと、父上はお父様がいることに気付いた。喋っていた人達に手をあげて別れると、父上は急いでお父様の所へ向かった。

「ジュヒィー、来たか。」

「はい、式の後はすぐに出られるかと思って。」

 お父様はすごく緊張しているようだ。手には綺麗に畳んだハンカチを握っている。父上はハンカチに気付いているようだけど、そこには触れずまずお父様に話し掛けた。

「捕まえた獲物は全てジュヒィーに捧げよう。」

 お父様がビクッと震えた。顔がかあぁと一気に赤くなる。モジモジと下を向いたが、スッとハンカチを父上の前に差し出した。

「……お気をつけて。怪我がないよう祈っています。それで、コレを、お守りに。」

 父上はお父様の手をハンカチごと握った。

「では私の弓に結んでくれるか?」

 おおー、こうやって見ると父上もできるアルファに見える。見慣れすぎてかっこよく見えていなかったけど、こうやって公の場でかっこよくしてるとまあまあみれるなぁ。
 お父様は恥ずかしそうに父上の弓にハンカチを巻いていた。解けないよう固く結んでいる。ハンカチのレースがヒラっと揺れてなんだか装飾品みたいに綺麗だ。
 父上はお父様の前に片膝をついた。そしてお父様の手を軽く握って恭しく手の甲にキスを落とした。

「必ずジュヒィーに素晴らしい毛皮を持ち帰ろう。」

 んわぁぁあぁぁっっ!キザっ!
 なんてこと!この目で生でコレが見れるとは!
 父上は立ち上がるとお父様を軽く抱き締めていた。あ、ショック過ぎて邪魔するの忘れてた。どさくさに紛れて父上ってばお父様に触りまくってるじゃん!

「父上っ、僕からもです!」

 僕は二人の恋の障害になると決めているので早速邪魔しようと行動にでる。
 サッと二人の間に割り込んだ。

「あ、ヨフミィも作ったんですよ。」

「ほう。」

「どうぞ~。」

 父上に僕が作ったハンカチを渡した。父上は僕の身長に合わせてしゃがみ、僕のハンカチを笑顔で受け取ってくれる。
 ん?と首を傾げてハンカチを広げた。

「いいですよ、僕のハンカチも弓に結んで。」

「うーん。」

 何故唸る。
 僕のハンカチにもちゃんと刺繍あるよ?お父様のみたいにレースもない普通のハンカチだけど。隅っこに刺繍したよ?
 父上がうーんうーんと悩んでいる。

「分かった!犬か?」

「ぶっぶーっ、牛です。」

 ハンカチの隅にはちょこんと牛を刺繍している。ちょっと目ん玉大きくなりすぎて、目をいてるみたいになってるけどね!

「減点!」

「まて、何の点数だ?いや可愛い牛だ。本当だ。」

 ヨフミィが父上と喋っていると、上から笑い声がした。二人が見上げるとお父様がニコニコと微笑んでいた。天使の笑顔か!

「アクセミア公爵御一家に挨拶申し上げます。」

 あ、ラニラルだ。

「おはようございます。」

 ぶっきらぼうに挨拶をしながらソヴィーシャもやってきた。
 父上が二人に激励を送っているうちに、お父様に手伝ってもらって僕のハンカチも弓に巻いてあげた。

「ヨフミィ様が子供らしいことをしている!?」

 何故驚くのかな?ソヴィーシャくん。

「はい、ソヴィーシャにも。」

 僕のハンカチを渡してあげた。力作だよ。

「…………ありがとうございます?」

 何で疑問系ですかぁ?

「はい、ラニラルも。頑張ってね!」

「私にも用意してくれたんですね。ありがとうございます。」

 ラニラルは丁寧に受け取ってくれた。その隣ではソヴィーシャがハンカチを広げて怪訝そうな顔をしている。

「鳥ということは分かる。」

「鶏だよ。」

 ほら、お尻からポロッと卵も出てるよ。
 ソヴィーシャがへぇ……と言いながらポケットにハンカチを突っ込んだ。もっと大事そうにしてくんない?

「私のは?」

 ラニラルがしげしげとハンカチの刺繍を眺めていた。

「羊~!」

「ああ、だからモコモコしてるんですね。」
 
 ラニラルの反応はよく分かんないな。笑顔はいつも通りだし、かと言って凄く喜ぶようでもない。なーんか最近元気ないような?

「……ラニラルに羊って……。羊の皮被った…。」

「さあ、行きましょう。」

 ソヴィーシャはラニラルに首根っこ掴まれて連れて行かれてしまった。十歳未満の子供は少ないので端の方に集まるらしい。
 バイバイと手を振って見送った。

「お父様はここにいますか?」

 父上と一緒にいるならちょっと行ってこようかな。

「ああ、渡してくる?一緒に行こうか?」

 ハンカチはもう一枚用意していた。

「大丈夫です。ハーディリ借りていきます。」

 父上とお父様に告げて急いで移動した。そろそろ皆んな集まり出している。時間がなさそう。
 アクセミア公爵家のテントに急いで戻った。

「あっ!」

 ちょうど目的の人物が出てくるところだった。

「レジュノ王子~」

 た、た、た、と走っていくと、王子がパッとこちらを向いた。そして笑顔になる。

「ヨフミィ、もう外に出てたのか?さっきテントに伺ったらいなかった。」

「はい、お父様と一緒に父上にハンカチ渡しにいきました。」

 そう答えながら最後のハンカチを取り出す。

「見て下さい。」

 ジャーン!今度は渡す前に広げて見せた。

「…………犬か?」

「ええ~~~!?何で分かるんですか!?」

「当てたのに何故驚くんだ?」

 だって初正解だったからね。まぁ父上に渡した牛とあんまり違わないから正解するかぁ。

「はい、怪我のないよう気をつけて下さいね。」

「ああ、ありがとう。」

 ハンカチを畳んで王子に渡した。一番嬉しそうに受け取ってくれたかもしれない。

「剣に巻いてお守りにしておく。」

「邪魔になりませんか?」

 大丈夫、と返事をして王子は腰にさげていた剣の柄にハンカチを巻いた。
 何やら周囲にご令嬢達が多いけど、僕は退散しようかな?
 と思ったら手を繋がれてしまった。

「会場まで一緒に行こうか。」

「うぇ、この中を僕は針のむしろになりながらぁ?」

「ヨフミィは公爵子息だ。誰も文句言えん。」

 なんか体のいい風除けにされた気がするー。ご令嬢方はハンカチ渡す為に参加していると言っても過言ではない。だから必死だ。
 そのまま父上とお父様が待つところまで一緒に行き、王子は先に行った王太子達について行った。
 ハンカチを握りしめるお嬢様方は、開催式終了から出発までの僅かな時間を狙うことになるのだろう。恐ろしや。目つきが怖い。
 式は順調に終わり、狩猟大会に参加するメンバーはそれぞれ馬に乗って出発し出した。
 お貴族様の狩りなので所有する騎士や兵士を連れているところばかりだ。勿論父上もだ。父上の家臣には第二騎士団長ウハン侯爵がいる。でも第二騎士団は王国のものだし、今回は狩猟大会の警護にあたっているので、父上が連れてきたのはアクセミア公爵家が独自で抱えている騎士達だ。数は第二騎士団ほど多くはないけど、皆んな手練れで強いのだと話していた。

 父上達が森に入るのを見送っていると、最後に子供の部が入るところが見えた。
 子供は奥まで入ることを禁止されているので、最後になっているみたいだ。
 
「ああ~。」

 ウンザリした顔のソヴィーシャと、笑顔が固まっているラニラルが見えた。どっちも将来アルファになりそうな当主候補だもんねぇ。
 
「ふふふ、ハンカチだらけだね。」

「そうですね。どうするんでしょうね。」

 弓や剣だけだなく、馬のあぶみにまでハンカチが結んである。まるでおみくじを引いて結ぶやつにみえる。この世界の人達に言っても分かんないだろうけど。
 流石にあれは邪魔だから外すんだろうな。大変だ。











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