じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

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37 王太子の呼び出し

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 作業部屋にジールが戻ると、ヨフはまだ戻っていなかった。呼ばれて王太子殿下の執務室まで向かったが、殿下の意図がいまいち掴めず退室することになり、何だったんだろうと考え込む。
 暫く庭園の設計図を描いていると、漸くヨフが戻って来た。
 ご機嫌でぴょこぴょこ跳ねるように帰ってくるので、頭の両脇に結んだ髪がふわふわと跳ねている。

「早かったですね~。なんの話だったんですか?」

 こちらが話しかける前にヨフの方から尋ねてきた。

「ヨフこそ早かったな。楽しかったか?」

「はい、いっぱい見ましたよ~。」

「何を見たんだ?」

 ヨフは口元を笑みに変えて何かを思い出しているようだ。

「鍛え上げた筋肉って弾力ありそうで素晴らしいなぁ~と思うんですが、僕はジールさんのも好きです!」

 部屋の中には他に庭園の作業員もいるのだが、全員え?と固まる。

「でも今日一番のご褒美は可愛い公爵子息の笑顔です~!」

「へーーー………?」

 ヨフから出た発言に返事を返しようがなく変な相槌をする。ヨフの発言は広まるのが早いことをジールは知っていたので、会話を変えることにした。

「ヨフは王太子殿下と面識があるのか?」

 突然の質問にヨフは挙動不審になっている。

「ええ~~?あるわけないじゃないですかぁ。相手は王子様ですよ?」

 ヨフの返事に他の作業員も笑って会話に混ざってきた。

「そうですよ、ジール様。同じ王宮内にいても滅多にお顔を見ることもないのに、つい最近まで田舎にいたヨフが会うわけないですよ。」

 他の者達も同じようなことをジールに言う。
 ジールだってそう思う。本当にヨフが、母親が暮らした田舎のあの家で生まれたのならそう信じていただろう。
 
「わかった、わかった。」

 ヨフは他の作業員達と騎士団について話し始めたので、ジールは王太子に呼ばれた時のことを反芻した。



 ジールが入室すると、王太子は何故か周りにいた官吏や侍従達を全て下がらせてしまった。護衛騎士まで部屋の外に待機させたので、ジールはなんだろうかとゴクリと唾を飲み込む。
 そして問い掛けられたのはヨフのことだった。

「彼の両親はどこにいるんだ?」

「母方の親戚ですが、小さいうちにあちこち回されたところを母が引き取ったそうで詳しいところは分かりません。母が亡くなった時初めてヨフとは会いましたので。」

 レジュノ・リクディーバル王太子は執務机に手をかけ、ジールが嘘をついていないかジッと見ていた。
 ジールもアルファだが、王太子殿下もアルファだ。どちらが上かと聞かれれば王太子殿下の方がアルファ性は高い。ジールは平民でベータの夫婦から生まれたアルファだ。
 威圧をかけられているわけではないが、その存在感はやはり王族。ジワリと背中に汗が出る。
 ジールは嘘をついている。
 ヨフが公爵家に行きたくないというので、そうするしかなかった。
 ヨフは彼が幼い頃、母が川から引き上げ助けた子供だ。当時母から手紙で引き取りたいと書かれていたので、一人田舎に残した母がそうしたいと言うのならと思い、了解して生活資金を援助していた。
 名前がヨフで、十歳だろうと思われる頃に毎年病院に連れて行きバース性の判定を受けたと書いてあった。オメガと判定が出たことにより、その年を十歳として歳を数えたのだ。
 だから今のヨフの年齢は二十二歳。ちょうど行方不明といわれている公爵子息ヨフミィ・アクセミアと同じ歳だった。
 だがヨフはアクセミア公爵家に行きたくないと言った。しかも髪の色も自分と同じ焦茶色に染めるとまで言った。
 確かに元の真っ白な髪と榛色の瞳では直ぐに公爵家の目に留まっただろう。
 
 本当に行方不明になったヨフミィ・アクセミア公爵子息なのだろうか?
 
 王太子はヨフを見たのか?見たとしても温室の上にいた自分達を見ただけのはずだ。豆粒よりも小さいヨフを見たのか?
 ラニラル・バハルジィといい、王太子といい……。
 兎に角一度つき始めた嘘だ。王宮の登録でも同じような書類を出している。嘘を突き通すしかない。

「書類は見せてもらった。」
 
 もう見たのか?取り寄せたのだろうと思うが早くないか?ついさっきだぞ。内心驚きつつもジールは平静な顔を取り繕う。

「あの子が何か……。」

 ジッと見てくる桃色の瞳は何を考えているのか分からない。母親である王妃と同じ瞳の色を持つくせに、王太子の瞳の中には温度というものがなかった。
 同じ色なのにここまで印象が違うのも凄い。

「一度話がしたい。」

 タラリと汗が流れる。王族が一介の庭師、しかもただの平民の助手に興味をもつのか?
 ヨフはオメガだ。まさか運命とか言うんじゃないだろうな?

「あの子は貴族に慣れておりません。ましてや王太子殿下に対して礼儀をもって接する術も知りません。お会いになってどうされるつもりでしょうか。」

 レジュノ・リクディーバル王太子殿下はヨフミィ・アクセミア公爵子息似のオメガに手を出すことで有名だった。まさかヨフも…?それだけはダメだ。
 
「………其方が気にするようなことではない。話をしたいだけだ。心配なら庭園でも構わない。」

 かなりの譲歩だ。
 なんだろうか…。命じれば断ることは出来ないのに、こちらに判断を任せている。ヨフなんて平民だ。王太子殿下からすれば人権すら感じない相手だろうに。
 
「本人の判断に任せても良いということでしょうか?」

 王太子殿下はスッと横を向いた。何か感情が動いたようだが、見られたくないということだろう。

「…………そうだ。」

「一度戻り確認致します。」

 王太子殿下は頷いた。
 話はそれだけだった。温室でのことは何も言われなかった。

 王太子殿下はヨフに会いたい。会って何かを確かめたい。そういうことなんだろう。
 ………まさか王太子はヨフのことをヨフミィ・アクセミアだと確信して会いたがっているんじゃないだろうな?
 ジールにもヨフの正体は分かっていない。
 会わせていいんだろうか。しかし本人に確認すると言ったのだし、相手は王族。ヨフに話すしかない。

「それで誰の筋肉がいいんだ?」

「うーん、ウハン侯爵子息の半裸はなかなか見応えがありましたよ。」

 話し掛けようと意識を戻したらヨフ達は変な会話をしていた。思わずズルッと滑ってしまう。

「相手がアルファじゃ勝ち目がないかぁ。」

「庭師にはアルファはジール様しかいないしなぁ。」

 何を喋ってるんだ。

「ヨフ、ちょっといいか?」

 ここで喋れば噂になる。ヨフを手招きして外に呼び出した。




 実は…、と王太子の執務室での話をヨフに話した。

「え?僕にですか?」

 案の定微妙な反応をする。公爵家に行きたがらないのなら、王族にも会いたがらないだろうとは思ったが、やはり嫌か。普通のオメガなら王族アルファに呼ばれれば喜んで行くところだろうが、ヨフはやはり悩んでいる。

「断っても大丈夫そうではあったが、実際どうか分からん。」

 判断はヨフに任せられたが、断って不敬だと言われてもこちら側は何も言えない立場だ。

「うーん……。いかないとですよね~。庭園でもいいんですよね?昼間なら大丈夫かなぁ。」

「ああ、会いたいだけだと言っていた。王太子殿下は幼少期に行方不明になったアクセミア公爵子息と一緒に過ごしていた時期があるんだ。もしかしたら似ていると思われたのかもしれん。」

 実際ヨフは公爵子息とそっくりな見た目をしているのは事実だ。

「え?この格好の僕と?」

 何を言いたいのかはわかる。ヨフは小さい頃のヨフミィ・アクセミア公爵子息と似ている。オメガとして育てばこんな感じだろうという容姿をしているのだ。それを隠す為に白髪を焦茶色に染め、榛色の瞳がわからないよう前髪を落とし大きめのメガネをかけて顔を隠している。しかも長い髪が邪魔だと言って横に二つ結んでいる。幼い少女ならやりそうな髪型をしていた。態となのか趣味なのかはジールにも判断がつかないが、この格好のヨフとヨフミィ・アクセミア公子は全く繋がらない。

「ええー?好みが変わったのかな?そんなとこまで改変?文句言ったから?鬼畜王子は流行らないって理解したとか?」

 何やら聞かれたら直ぐ捕まりそうなことをブツブツと言っている。具体的な内容は分からないが、鬼畜王子とは王太子のことなのだろうということは理解出来た。

「それ、王太子に言うなよ?」

「はっ、声に出てた!」
 
 心配だ………。



 
 王太子宮に会う旨を連絡していたところ、その日のうちに返事が帰ってきた。本当に早いな。
 
「じゃあ行ってきまぁ~す。」

 ヨフは呑気に出ていった。
 翌日の昼間でもよかったのに、なんとその日の夕方には呼び出されたのだ。
 まだ日が暮れる前だったので送り出したが大丈夫だろうか。

「抑制剤は飲んだか?ネックガードは新品か?」

「抑制剤はお昼にも飲んだし、ネックガードはこの前ジールさんが新調してくれたやつですよ。」

 公爵家に行くのは拒否したくせに、王太子殿下に会うのに緊張している様子もない。

「庭園の入り口で待ってるからな。」

 ヨフははぁ~いと返事をして行ってしまった。呼び出された庭園は王族しか入れない専用の庭園だった。総管理人をしているジールですら、許可を取って入らなければならない場所だった。
 そんなところに平民のヨフを呼び出してどうするのか。
 ウロウロと入り口で行き来していると、誰か近付いてくる気配がした。

「ここにいたのですね。」

「………これは、バハルジィ伯爵子息。」

 今日温室で追いかけてきた人物がやってきた。
 王太子だけでも頭痛いのに……。内心大きな溜息が出てしまった。

「結局王太子殿下は彼を呼び出したのですね。」

 やや非難がましく言われるが、ただの男爵でしかない庭師の俺にはどうすることも出来ない。

「ヨフが了解する以上どうすることも。」

 伯爵子息はそれ以上何も言わず小さな袋を渡してきた。
 なんとなく見覚えがある。ヨフが目の前の人物に投げつけた袋だ。どうやらとっておいたらしい。

「今この中身を調べていますが、植物である以上育ててみないと分からない部分もあります。卿はこれが何の植物かご存知でしょうか?」

 ジールもこの種には違和感を覚えていた。

「…いえ、知らない種だったので育ててみようかと思っていましたが。」

 目の前の青年は薄っすらと笑う。

「実は公爵閣下の命で調べていることがあります。それを育てると言うのなら協力をお願いしても?」

 有無を言わせぬ笑顔にジールは面倒な話になったなと渋々了承した。
 温室で覗き見をしていたことを見逃す代わりというやつなのだろうから頷くしかなかった。




 ヨフミィはふんふ~んと軽い気分で歩いていた。入ったことのない庭園だった。
 なんで呼び出したのか分からないが、ヨフミィはここで自分がヨフミィ・アクセミアではないとハッキリ告げるつもりだった。
 ここで他人と分かればもう呼び出してくることはないだろう。
 お友達になって鬼畜王子化を止めてヘミィネと上手くいくよう誘導するのもいいかと思ったのだが、流石に今のヨフミィの身分でお友達はキツイ。
 今日は双子の弟ルヌジュと仲良くなったのだし、無理して王太子と繋がりを持つ必要はないんじゃないかと思った。それにヨフミィが目指すのは双子の兄ヘミィネが四人の内誰かと番になることなのだ。何もレジュノ王太子である必要はない。

 伝えられた通り真っ直ぐ歩いていくと、少し開けた場所に出た。

「うわぁ…。」

 植木に囲まれたそこは、小さな噴水と白を基調にしたタイルが敷かれた場所だった。ぐるりと周りは緑溢れる植木が囲み、天井のように花が茂る木が垂れ下がっていた。チラチラと花びらが落ちて、なんとも美しい庭園だった。
 その中央には二人用と思えるテーブルと、座り心地の良さそうなふかふかの椅子が一つ置かれていた。その椅子にレジュノ王太子は優雅に足を組み座っている。どう見ても二人掛けの椅子であり、王太子は片側に座っていた。
 その空いてる方にまさか座れってこと…。じゃないよね?

「来たね。ここに座るといい。」

 ポンポンと王太子は自分の隣を軽く叩いた。

「………えぇ~…。でも僕は平民ですしぃ、その、庭仕事した格好なんですよ。そんな綺麗なソファに座れません~。」

 僕がヨフミィ・アクセミアなら問題ないかもだけど、今は庭師のヨフなのだ。

「私が構わないと言っている。」

 ええ~~?困るよぉ。チラッと王太子の様子を窺うと、ニコッと笑顔が帰ってきた。
 うっ、なんか笑顔に迫力が増したなぁ。
 元々気品のある顔立ちだったのに、そこに迫力が増すとなんか怖いねぇ。

「………座れ。」

 ふぎゃあっ!命令!?

「お、お邪魔しまぁす。」

 ヨフミィはビクビクと座るしかなかった。

「庭師の仕事をしているそうだな。」

「え、はい。雇ってもらえて光栄でーす。」

 ビクビクと返事を返す。
 レジュノ王子……、かっこよくなったねぇ。みんな本当にカッコよくなってるよ。あと見てないのはリュハナかな?リュハナも変わりなさそうな気がするなぁ。温室では遠すぎてよく分かんなかったもんねぇ。

「私といるのに何を考えている?」

「何も考えてないでっす!」

 ビシッと座り直した。慌てて王太子の方を向くと、王太子は肘掛けに肘をついてヨフミィを見ていた。桃色の瞳で流し目とか色気が漂いすぎなんじゃないかな?クルクル巻毛のポニーテールとか、なんかツボにハマりそう。
 
「ラニラルとは話したのか?」

「え、あ、はい。投げつけた種のことを聞かれました。」

 あ、ラニラルと聞いて誰のことかも聞かずに返事するのっておかしくないよね?誰のことだか分かりません~って言った方がいいの?
 うーん、うーん、と悩んでしまう。

「他には?」

 ほか?他って何が?
 キョトンとするとフッと笑われてしまった。んぬぬ、なんだかいけすかない奴になってる気がするなぁ~。
 いやいや、鬼畜王子になってないだけマシなのかな?あ、でもまだ秋の舞踏会きてないから分かんないか?

「注意力散漫だな。こちらを向け。」

 頭を抱えてウンウン言っていると、顎を指で持たれて顔を王太子の方に向けられてしまった。
 ふぉぉぉぉ……!何しちゃってんのこの人っ!
 微妙に命令口調が似合ってるしっ!あっ、王子様だからいいのか!いや、よくなぁいっ!
 メガネあって良かったぁーーっ!これ直視は鼻血出すかも!?
 レジュノ王太子ってやっぱり生粋の王族なんだねぇ。
 
「他には?」

 あ、他ね。えーと。分かんないや。

「騎士団で知り合いの騎士と喋ってました。僕はルヌジュ・アクセミア公爵子息とお話してました。だから他はないですよ。」

 うん、たぶん。よく覚えてないけど。
 ふふんと言い切ったら、王太子はクイっと首を傾げた。そしてもう片方の手を伸ばし、僕のツインテールを何故か触っている。

「…………兎みたいだな。」

 兎?あ、垂れ耳兎?
 王太子は暫く黙って僕の髪を弄っていた。僕はとても気まずいです。
 そしてフッと急に触るのをやめてしまった。

「もう行っていい。」

「あ、はい。失礼します。」

 慌てて立ち上がり退散することにした。
 えーと、今のはなんの会話だったんだろう?会話の時間より髪の毛触っている時間の方が長かったような……。

 庭園から出るとジールさんが待っていてくれた。

「お待たせしましたぁ。」

「早かったな。何もなかったか?」

 ジールさんは王族の呼び出しとあって心配していたみたい。

「はい、よく分からないんですけど、髪の毛触られました。」

「髪の毛?」

 うん、髪の毛。

「ツインテール好き…?」

 もしかして?

「そんな噂は聞いたことないな。」

 ですよねー。そうだったらきっとみんな髪の毛横に結んでるよね。

「鬼畜王子はツインテ好きかぁ。」

「それ他所で言うんじゃないぞ?」

 はぁーい。








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