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46 神々のルール
しおりを挟むっっって、すぐ会うの!?
目を開けたら花が咲き誇る庭園に来ていた。あの駄女神の庭園だ。
白いテーブルと椅子が置いてあり、今は誰もいなかった。
喋りに来たのにいないとか?まさかこれ一回で対話券失効とか言わないよね?
「ちゃんと話すに決まっているでしょう?」
「わっ!」
びっくりした!背後にひっそりいないでよ!
「ふう、お姉様のやらかしの訂正に時間がかかって困ってしまうわね。」
駄女神の妹は悩ましげに溜息を吐いた。
「駄女神はどこにいるんですか?」
この前もいなかったけど。
尋ねると妹女神はああ、と伏せた目を上げた。そして手をスウッと横に滑らせる。
あ、いた。でもそれでいいの?
駄女神はロープでぐるぐる巻きにされて木の枝に吊るされていた。
「うふふふふ、縛っておかないと悪さをするの。」
するのって……、女神のごとき慈愛の笑顔で言われても…。あ、この人女神だった。姉女神を駄女神って言ったのにスルーしてるよね。
駄女神はんー!んんー!!と何か唸っているけど、口に布を巻かれていて喋れない。芋虫みたいにうねうねしているだけだった。意外と似合っている。
「あの、チュートリアルってあれでいいんですか?」
矢印追っかけただけだけど。
妹女神はにっこりと頷いた。
「ええ、私も急遽入り込んだからまだ上手に出来ないのよ。とりあえずお姉様の話を進める手伝いをするわ。私もこの世界の半分の権限を持っているから、話を進めるという形を取らなければならないのよ。」
ああ~…、それがゲームになると?元々乙女ゲームを入れたくらいの人だから、その権限もゲーム方式?
手伝ってくれるなら、こっちの女神様に訊けばいいかな?
「じゃあ、一つ聞きたかったんですけど、どうも僕がヨフミィって皆んなに気付かれてるような気がするんですけど、ヨフミィ本人ですって言ったらダメですか?」
妹女神は上品に口に手を当てると、赤い唇が弧を描いた。
「貴方はお姉様の小説で決められたルールをご存知?」
勿論、覚えてるよ!
「えっと、主人公はヘミィネであること。ヘミィネの兄は死んでいること。ヘミィネはソヴィーシャ、リュハナ、ラニラル、レジュノの中の誰かと番になること。の三つですよね?」
妹女神はよく出来ましたと頷いた。
「そのルールが破られるとどうなるかはご存知?」
え?知らない。プルプルと首を振る。
妹女神は今度は眉を垂らし悲しげな顔になった。どんな表情作っても綺麗な顔の女神様だ。
「まぁ、やっぱりお姉様は説明不足なのね。」
そう言って神々のルールについて教えてくれた。
神様たちは沢山いるらしい。それこそ全員が全員の顔と名前を覚えきれないほどに。そんな神様たちには神格という神のレベルが存在し、その神格レベルで能力を顕現することができるようになる。
駄女神の神格は中の下あたり。妹女神様で中の上あたり。まともな一つの世界を作りたかったら中あたりの神格が必要になるのだが、駄女神は中の下だから作れなかった。
しかし神格を上げるには世界を手にするのが一番手っ取り早い。世界を作り、その世界の文明や思考を成長させたり、その作った世界を他の神に承認されることで神格を上げることが出来るらしい。
駄女神は神格を上げたかった。
自分の好みの世界を作りたかった。
だから妹に頼んで一緒に世界を作ることにしたらしい。
「神格を上げる方法は他にもあるのよ?普通に努力をし、日々研鑽を積めば上がるの。でもお姉様は手早く楽に上げたかったのね。一応姉妹の頼みだから手伝ったのだけど、わたくしは世界作りよりも神格は研鑽を積む方が性に合っていたから作った世界をお姉様に任せてすぐに出たのよ。お付き合いしている方との結婚も控えていたし。」
世界作りは物作りと一緒で、趣味に近いものらしい。料理好きが料理を作ったり、絵描きが絵を描いたりするのと一緒で、芸術の才能に近いのだという。
妹女神は世界は作るより見る派だった。
他の神が作った世界を鑑賞し、素晴らしいと思ったら承認する。そうすることで承認が多く集まった作成者は神格を上げていくというシステムになっていた。
「つまり駄女神が作ったこの小説の世界はダメダメだったと?」
「そうね。逆に自分の神格が少し下がっちゃったわね。」
うふふふふ、と妹女神様は笑っている。
「あれ?じゃあ一緒に世界を作った妹女神様は?」
妹女神様はコックリと頷いた。
「勿論被害を被ったわ。わたくしが入れた教材用のゲームなら可もなく不可もなく、神格に影響しなかったはずなのに、お姉様の所為でわたくしの神格まで下がったのよ。」
妹女神様の笑顔が怖い。
だから手伝いに来たのか。
「それで神々のルールについてなのだけれども。」
妹女神様は話を戻した。
「世界を作る時に制限付きにすると神格が上がる時に大幅に格を上げることが出来るの。それとは逆に、ルールを破ると神格が下がり最初に巻き戻ってしまうの。」
「は?巻き戻る……?」
ええ、巻き戻るのよ。と妹女神様は頷いた。
「今は一度巻き戻った状態ね。神々の評価が悪かったからお姉様が巻き戻しちゃっのよ。おかげでわたくしの神格まで下げてくれたの。」
歌うような綺麗な声が低くなる。こ、怖いなぁ。神格ってとっても大事なものなんだねぇ?
そよそよと吹いていた優しい風に冷気を感じる気がした。
「えっと、つまり…?」
「つまり、貴方はヨフミィであると知られるとまた巻き戻ってしまうということよ。」
そしてわたくしの神格が下がってしまうの。妹女神様はパチっと手を叩いて言い切った。
ま、巻き戻り?
もしかして僕はもう一度赤ちゃんから始めて、六歳の冬に死ぬと…?
「貴方の場合今回はお姉様が生き返らせたけれど、次も同じようにお姉様が生き返らせるかわからないわ。かと言ってお姉様が小説作りを諦めるとも思えないの。」
え…?ちょっと頭の中を整理!
つまり、えっと、駄女神は拍手喝采されるような小説の話が出来るまで諦めない。その為なら何回でもリセットする。そしてその度に僕は赤ちゃんからやり直して六歳の冬で死ぬと……?でも駄女神は根暗なショタ鬼畜話が好きだから誰も承認しないよね?それはつまり何度でもイイねを貰えるまで繰り返すってことになるよね?
「あ、でも小説の内容はヘミィネが十五歳から始まるから僕は関係ないんじゃない?」
光明が開けた!僕は既にいないキャラ!関係ないんじゃない!?
「そうでもないわ。貴方は小説の中で死んだ兄だと書かれているのよ。しかも貴方の魂はヨフミィに同化しているわ。だから既に通過した事象として貴方は何度でも死の記憶を繰り返すわよ?」
「何それぇーーーーっっ!」
酷いっ!酷すぎるっっ!
「だから貴方は今の時間を最大限努力して良い話にしないとならないわ。」
「えぇ………?」
「普通に痛くないハッピーエンドでいいと思うの。マイナスされなければいいのよ。ちゃんとエンドを迎えたらわたくしが終わらせてあげるわ。その為の補助もしてあげるし、貴方はヘミィネにハッピーエンドを迎えさせてあげればいい。その為には貴方は死んだヨフミィだと認識されてはダメなのよ。貴方は今自分というキャラを庭師のヨフで通しているわよね?だから終わりまで庭師のヨフでいればいいのよ。」
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
「つまり、ちょっとバレてても僕は庭師のヨフを貫けばルール違反にならない?」
「これは抜け道よ。」
抜け道………。
僕は庭師のヨフ!!
「分かりましたっ!僕は庭師のヨフを貫き、ヘミィネに優しい番を作ります!」
「その意気よ!」
光明が見えてきた!
でも難しくない?
「あ、クエスト報酬の心強い仲間って誰ですか?」
「それは明日になったらわかるわ。」
え?今教えてくれてもいいじゃん!
文句を言おうと思ったらぐるりと景色が回った。え!?もうお終い!?
まって、もう少し待ってっ!クエスト②の報酬もちゃんと聞きたい!
叫ぼうとしたけど声が出ない。
ぐるぐる、ぐるぐると景色は周り、花びらの渦の中に笑って手を振る妹女神と、ミノムシ状態の駄女神が見える。
もうちょっと、説明してーーーっ!
僕の意識は渦の中に消えていった。
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