じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

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55 僕は庭師助手カッコ休職中の身です

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 相変わらず女神の説明不足に頭が痛い。
 とりあえずクエストをちゃんと進めて報酬を貰えば、ヘミィネが番を得るのが早くなることが分かった。
 やるしかない。やらねば僕はヨフミィとし生まれて六歳で死ぬという人生を繰り返すかもしれないんだから!
 ヘミィネが番を得て、神様達の評価がマイナスじゃなかったら多分いいんだよね?ちゃんと終わらせたら妹女神様がなんとかしてくれるって言ってたし。
 整理してみよう。
 今現在、クエスト②の上級報酬を貰ったから、リュハナとヘミィネがくっつく未来はなくなった。残りは三人!
 ……ん?じゃあリュハナが好きな人ってヘミィネじゃないってことになるのかな?誰なんだろ?
 
「おーい、起きてるか?」

 考えごとをしていたら、階下からジールさんの声が響いた。

「はーい、起きたよ~。」

 最近薬の調査をしているラニラルにくっついていたり、薬作りを手伝ったりして過ごしている。常にフヒィルが護衛で側にいてくれるので、友達と一緒に過ごしているみたいでとっても楽しい。
 今日はお父様と会う約束だったので公爵邸に行く予定だ。お父様が用があるから来て欲しいと言っているとラニラルから聞いていた。何の用だろ?ラニラルがいるならフヒィルの護衛は無しかなと思ったら、フヒィルも一緒にと言われている。

 朝の身支度を済ませていると、家の前のそう広くない道にアクセミア公爵家の馬車が到着した。

「おはよう、ヨフ。」

 ぱぁぁーーーと後光が差す。

「うわぁぁ、朝から眩しい~!」

 はわぁーと目を覆ったら横から声が掛かる。

「おはようございます。このままお店に直接向かいますのでお乗り下さいね。」
 
 はりゃ、ラニラル!?
 よく見たら馬車の中にはお父様とフヒィルも乗っていた。フヒィルは遠い目をしている。

「おはようございます~。」

 お父様は本日もニコニコと微笑んでいる。ポンポンとお父様の隣の座席を叩き、ここに座るよう言われた。
 馬車の段差は結構あるので、足を上げようとしたらラニラルが手を差し出してくれた。踏み台もあるんだけど高いんだよね。女性のドレスとか大変そう。

「ラニラルもおはよう!ありがとう~。」

 ラニラルもご機嫌だなぁ。

「私は御者の隣に座りますので。」

「あ……、ラニラル様、俺がそっちに…。」

 フヒィルがラニラルに申し出ていた。

「今日の貴方は騎士ではなく公爵家が今後援助していく方です。そのような方が御者の真似事などしてはいけません。」

「え…、ラニラル様だって伯爵家の嫡男なのに……。」

 パタンと無情にも扉は閉められてしまった。諦めろ、フヒィルくん。僕もよく分かんないけどね!
 僕はお父様の隣に座ってフヒィルに話し掛けた。

「フヒィルは先に拾われたんだね。」

 フヒィルは渋い顔をしている。綺麗な顔が台無しだよ?

「うう…。迎えなんてとんでもないと思ってたら朝から隊長に馬で公爵邸まで連れてかれたんだ。」

「わぁ、朝からソヴィーシャと二人乗りなの?爽やかだねぇ。」

「やめて下さい。二人乗りではありませんし、爽やかでもありません。強いて言うなら早朝の遠駆けに付き合わされた気分です。」

 騎士は早起きなんだねぇ。

「さ、それよりも今日は二人とも忙しいよ?」

 お父様はパチンと手を叩いて僕達に頑張ってねと言った。





 ううう、身体が変な感じするぅ。
 朝早くから向かった店は、貴族御用達の衣裳店だった。サイズを測りカタログを見て僕達の衣装がいくつか作られることになった。
 その後に靴屋と宝石店を周り、小物を買おうと違う店にも連れて行かれる。
 昼食を食べて店をぐるぐると周り、まるで女神様の庭園から追い出される時みたいだと思いながら漸く買い物が終わった。

「ところで後援を受けるだけでこんなにいっぱい買い物する必要あるの……?」

 晩餐は公爵邸で食べようねと言われて馬車で帰るところだった。
 買い付けた荷物は今日中に全て公爵邸に届けられているらしい。特注品だけ後日と言われた。置き場所ないよと言ったら二人分公爵家に置いておくから大丈夫だよと言われてしまう。

「必要だよ。顔見せの為にいくつか重要なパーティーに出て欲しいのもあるけど、まずは王室主催の舞踏会に出なきゃだからね。」

 舞踏会!
 も、もしかしてっ!ヘミィネが発情期になる舞踏会!?

「それって秋の舞踏会ですか?皆んな出るんですか?」

「うん、出るよ。君達のお披露目も兼ねるから、パートナーをちゃんと決めてから入場しようね。」

「……パートナー?」

 そんな場面あったっけ?

「あ、あの、俺はそこまでしていただかなくても…。」

 フヒィルは青い顔をしている。どうしたの?

「パートナーは必要だよ。成人も超えてるんだしね?未成年なら兎も角、フヒィルも心配しないでいいからね。」

 お父様はやる気に満ちていた。
 そ、そんなに力入れるパーティーだったっけ?駄女神の小説ではパートナーとか入場とかなかった気がしたけど?

 その疑問は馬車から降りてラニラルが教えてくれた。

「貴族ならばデビュタントが貴族の成人したというお披露目になるわけですが、お二人は済まされていませんので、王室主催の舞踏会ならば数多くの貴族家が訪れますから、その時にアクセミア公爵家の者なのだと表明されるおつもりなのでしょう。」

 な、なんか大ごとになってきた……?

「や、やばい…。兄上にバレる!」

 フヒィルが動揺している。

「大丈夫かと。公爵家に文句言える家はございませんから。」

 あ、フヒィルって王太子との婚約話勝手に蹴って勘当されたんだっけ?勘当ならもう家は関係ないんじゃないの?

「ほ、本当に?公爵家が庇ってくれますか?」

 フヒィルはラニラルに詰め寄って必死に訴えていた。ラニラルは大丈夫ですよと頷いている。
 僕達は公爵家に到着して玄関から入るところだった。
 詰め寄るフヒィルと落ち着かせようとしていたラニラルの間に小柄な影が入り込む。

「ダメっ!」

「あ、ヘミィネ~。」

 うわー、お父様似のヘミィネ可愛い~。目を三角にして怒ってるけど可愛い~。

「ヘミィネ様、そのような粗暴な態度をとってはいけません。」

 ラニラルが注意するとヘミィネはハッとして黙った。あらら。

「これくらいいいんじゃない?ヘミィネはまだ十五歳だし、僕達は仲良しなんだもん。仲良しの間でも畏まってたくないもん。」

 僕がラニラルに文句を言うと、ラニラルは一瞬押し黙った。

「………ヨフ……、がそう言うのなら。」

 あっさりとラニラルは引き下がる。その様子にはヘミィネの方が驚いていた。

「なんで!?なんでヨフの言うことは聞くの!?」

 うん、なんでかな?僕もついでに怒られてヘミィネが怒られるのを庇おうと思ってただけなのにね。

「はいはい、皆んな部屋に入って。こんな所で立ち話しないで?」

 お父様が僕達を中へ促した。フブラオ先生もやって来てラニラルに何か話し掛けている。ラニラルは少し気まずそうな顔をしていた。

「うぐぐ、なんでラニラルはヨフに甘いの…!?」

 一緒に応接室に歩きながらヘミィネは僕に噛み付いてきた。そんなこと僕に言われてもねぇ~。

「なんでかなぁ?年の功?ほら、僕の方が歳上だよぉ~。」

「はあ?全然関係ないし。」

「ヘミィネってば口悪い~。可愛い~。口悪い子かわいい~。」

 ショートボブの黒髪をヨシヨシしてやったら、うがぁっ!と怒鳴られた。ヨシヨシしただけなのにぃ。

「ヨフ~、遊ぼ~。」

 奥からルヌジュも走ってやって来た。その後ろからリュハナとソヴィーシャもやってくる。

「あれ?ソヴィーシャもいたの?」

「公爵様に報告しにな。」

 薬の調査は進んでるんだろうなぁ。黒幕分かったのかな?聞いてもいいかな?クエストって僕なんにもやってないんだけど答えだけ他の人に聞いても報酬くれるのかな?
 うーむ。

「……ヨフは公爵様とは話をしたの?」

 唐突にリュハナから尋ねられた。
 うん?父上と?してないなぁ~。なんか公爵邸に来るとワーッと皆んなが話し掛けてくるもんだから父上とゆっくり顔すら合わせてないかも?
 よくよく考えてみると今の僕の後援者になってくれるのってアクセミア公爵家なんだよね?つまり父上だ。父上にちゃんとお礼を言った方がいいのかなぁ。たぶんその方がいいよねぇ。

「会いに行ったら?」

「今行っても大丈夫かな?」

 リュハナは優しく微笑んだ。

「先程執務室に居られたからいるはずだよ。ついてってあげるから一緒に行こう?」

 お~。なんかリュハナは対応が大人だなぁ。

「じゃあ終わったら遊ぼう?庭にいるから。」

「うん、分かった。ヘミィネも後でね!」

「え?僕は外に行くつもりは…!」

 じゃあねぇ~と手を振って別れた。二人にはソヴィーシャとフヒィルが残ってるし大丈夫だよね。
 嫌がるヘミィネをルヌジュがずるずると引っ張って行った。

「さ、行こうか。きっと公爵様も喜ばれるよ。」

 リュハナがにっこりと笑いながら促してきた。その後ろ姿を追いかけながら、じっくりとリュハナを観察する。うむ、美青年だ!スラっと背が高く、オレンジ色の髪は短すぎず長すぎず。歩きながら横髪を耳にかける姿が絵になるわー。眼福。

「………ついて来てる?」

「ふわぁーい、来てますよー。」

 返事をしたらクスッと笑われた。リュハナは中性的美青年になった。小さい頃はオメガとして育てられて、十歳になる前にアルファっぽくなっちゃって周りに馴染めないと悩んでたなぁ~。今ではすっかりタラシになっちゃって。
 眼福、眼福と眺めていたら、リュハナの緑色の目が僕を見下ろしてきた。
 
「この前言ったことだけど、考えてみた?」

 この前?この前と言えば、クエスト②の報酬で貰ったリュハナの信頼で会話したやつのことかな?多分アレが報酬後の対象人物との会話になるんだと思うんだよねぇ。
 確か僕とリュハナの親交が深まって、なんでかリュハナのヘミィネに対する好意が親愛止まりで恋愛に進まなくなるという謎報酬。
 妹女神様が言うには、リュハナとヘミィネがくっ付くルートが無くなったらしいけど。
 僕との関係も親交であって恋愛感情とかじゃないんじゃないかなと思うんだよね。特に様子が変わった気がしない。
 喋りやすくはなったかな?
 あの時の会話はリュハナに好きな人がいるという話と、僕にも自分のことを考えてねと言われたのだ。
 一緒に変わっていこう。そう言ってくれた。

「僕はまだ僕の未来とかわからないんだよ。」

 まだ、ヘミィネが番を見つけないと、僕だけが先を見つけても意味がない。四人のうち誰かと。誰でもいいからじゃない。レジュノ王太子かラニラルかソヴィーシャかリュハナの誰かと。
 だけどリュハナは候補から外れちゃったんだよねぇ~。
 これなら中級報酬か下級報酬の方がマシだったのかな?
 いやいや、でもでも?
 リュハナにはどうやら好きな人がいるらしい。その人を無視してヘミィネと番になんて元から無理だったのでは?だからさっさと候補から外れたのでは?妹女神様はリュハナが誰を好きなのか知ってて、邪魔な候補だから迷わないように外してくれたのでは?だってそうした方が早く終わるでしょう的なことを言っていたしね?
 こうなるともうリュハナが誰のことを好きなのかがきになるぅーーーっ!

「……絶対脳内で脱線してるよね?」

「してないよ。」

 なんでバレたんだろ?
 
「まぁ、僕のことはおいおい解決するとして、リュハナが誰を好きなのかなぁって気になっちゃうっ。」

 聞きたいなっ、知りたいなっ!わくわく。
 期待して見上げたらリュハナの頬が引き攣っていた。

「教えないよ。絶対邪魔しに来そうだからね。」

 えー?ちょっと覗き見したいだけなのにぃ。

「じゃあヒントだけ!僕の知ってる人?」

 リュハナは少し迷いつつ小さく頷いた。
 えぇっ!僕の知ってる人!?はっきり言って僕の交友関係はすっごく狭い。狭く長く。これが僕のモットーだよ!

「オメガ?アルファ?ベーター!?」
 
「え、ヒント多すぎじゃない?」

 僕達は父上の執務室に向かって歩きながら話し続ける。

「リュハナの相手はベーターかアルファって聞いてるから、僕的にはアルファとアルファ!?いやいやでもでもベーターも捨てがたいしなぁ~。」

 リュハナが呆れた顔で見てくる。

「男!?女!?」

 これ大事!

「……………男だけど。というか誰から僕の恋愛経歴聞いたの?」

「ルヌジュ。」

 リュハナはルヌジュか……、と苦い顔をしている。
 男か!なんてオイシイ!まてまて僕は王都に来てほぼ女性の知り合いがいない。皆んな男性ばっか。こりゃ絞り込むのにもうちょい聞いとかないと予想出来ない!
 だれぇ?一番顔見知りが多いのは庭師の皆んなか騎士団の人達だ。顔見知りまで入れると候補がいっぱいになってくるなぁ。
 でも男かぁ。
 そういえば昔リュハナはオメガ教育を受けていた影響で、アルファ教育に切り替えた時、他のアルファの子達や男の子達の中に入っていけないとか言ってたよねぇ~。それでいつも女の子達の中に入っていた。
 まさか今もそんなところがある?
 お喋りするなら女の子。でも恋愛対象は男の子?
 あれれ?もしや気持ちは女の子側?そっち?そっちなの?え?リュハナってそっちなの?

「……すっごく何考えてるのか不安になってくる。」

「大丈夫。リュハナの心が女の子でも僕は応援するから!」

「違うからっ!!」

 即否定されちゃった。てへ。

「何を騒いでるんだ?」

 あれ?あれぇ?なんか知ってる!この人知ってる!
 僕達はいつの間にか父上の執務室の前まで来ていたんだけど、扉の前で見張りの騎士と一緒に年配の騎士が立って僕達に話し掛けてきた。
 ハーディリさんっ!
 四十代のなかなかイケてるおじさんになってるー!

「会うのは初めてだよね?ほら、この子がヨフですよ。」

 リュハナがハーディリさんに紹介してくれた。

「よろしく、ヨフ。俺はハーディリだ。アクセミア公爵の専属護衛騎士をしている。」

 うわぁ、今も父上の護衛してるんだぁ。嬉しいなぁ。

「よろしくお願いします~。庭師助手(休職中)のヨフですっ!」

 自己紹介したら休職中?と不思議そうな顔をされてしまった。










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