じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

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63 騎士の忠誠

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 リュハナが目を覚まし快方に向かっていることを確認することが出来たので、僕は我が家に帰ることにした。
 すっかり公爵邸にお邪魔してしまっていたけど、僕の家はジールさんの家だ。我が家、最高~。この狭い空間には何故か心が落ち着いちゃうんだよねぇ。
 ラニラルからこのまま公爵邸で過ごせば自分が教養を教えますと懇願されたけど、僕は楽な道を進みたい…。ふふふ。なのでお断りした。お断りした時のラニラルは固まっていたけど。フブラオ先生からは宿題出されたけどね………。フブラオ先生は容赦ない。
 毎朝フヒィルが迎えに来て、一緒に王宮へ行くのが日課になった。早くジールさんの助手に復帰したいのに、僕はアクセミア公爵家の後援を受ける人間となってしまった為、庭師はお休みだよとお父様に念を押されてしまった。

「……でもフヒィルも僕と一緒に公爵家の後ろ盾を受けるのに、なんで騎士の仕事続けてるの?ズルくない?」

 今、僕達は騎士団の訓練場にいた。何でかって?それはフヒィルが現在も第二騎士団第一隊の副隊長だからだ。ベータと偽っていたのに公爵家の後援を受けることによってオメガと登録し直され、周りにはオメガだと知られてしまったというのに他の騎士達から何も言われなかった。
 その為、何もすることのない無職の僕に合わせるより、日常は騎士職のフヒィルに合わせることにしたのだ。
 外に出る任務がない場合は朝から訓練だと聞いたので、毎朝騎士団の訓練場に来ている。フヒィルの任務は僕の護衛なのでほぼ騎士団で過ごすのが普通になってしまった。
 
「ヨフはラニラル様の助手だから仕事してる……フンッ!」

 僕の愚痴にフヒィルが返事をしてくれる。
 フヒィルは僕を背中に乗せて腕立て伏せをしていた。フヒィルって同じオメガなのに背は高いし筋肉もある。お尻に筋肉を感じるなぁ……。むふふふふ。

「特に何もしてないしラニラルは危ないからって置いていくんだもん。」

 ラニラルが何をしているのかあまりよく知らない。

「…っ、ふっ、ラニラル様は………。結構強い。フッ。」

 ひょこっとヘミィネがフヒィルの前に立った。

「当たり前だよ。僕が起きる前からずっと鍛錬してるもん。」

 そう言われれば、昔剣を持って雨の中鍛えていたのを見た気がする。ずっと続けているんだね。

「ふっ………、ふっ…………、人脈も広い。ふっ、調査員としては優秀。何かあっても、ふっ…、一人で切り抜ける、……って、聞いてる。」

 何かって何があるんだろ?

「誰があの冷血漢侍従をそう評価してるんだ?」

 ヘミィネに続いてひょこっとキワーレも近付いてきた。

「ソヴィーシャ隊長っ、ふぎゅっっ…!」

 僕の隣にキワーレが座った。僕はフヒィルの背中に座ってるんだけど?
 それでもフヒィルは潰れなかった。僕を背中に乗せても余裕で腕立て伏せしながら喋っていたのに、キワーレまで追加されて流石に余裕がなくなってしまったようでプルプルしている。

「がんば、がんば。」

 ヘミィネが驚きながらも可愛らしく応援していた。

「む、む、重……。」

「楽したらダメだろぉ~。」

 キワーレ、悪い顔しないのっ。
 今日はヘミィネとキワーレも遊びに来た。というか僕が誘った。ルヌジュは暫く来ないことになったので、二人は来たらと手紙を出したら来てくれたのだ。
 何故このメンバーなのかというと、クエストの所為。
 今度行われる舞踏会では、クエスト曰くレジュノ王太子が媚薬を飲まされるらしい。それを助けるのはヘミィネかフヒィルかキワーレなのだと既に僕は知っている。でも答えは分からない。
 だいたい何でこの三人なんだろう?
 ヘミィネなら分かるけど。駄女神小説の主人公だし、本来の内容ではヘミィネと王太子が番になるんだから、候補に上がるのは理解できるんだよね。
 でも何でフヒィルとキワーレ?
 この二人ってレジュノ王太子と接点ないよね?会ってことあるのかな?

「ちょっと聞きたいんだけど、フヒィルとキワーレは王太子と会ったことある?」

「いや、ないよ?あるわけないよ。」

 キワーレは顔すら合わせたことがないと言った。それもそうだよね。いくらお父様の遠い親戚でもキワーレは平民。王宮に来るようになったのも僕の偽物を演じるようになってからだと言っていた。王宮に出入りできるからといって、そう簡単に王族には会えない。

「ふんん……っ、俺は、警護中、目の前通って、ふぅううう、眺めて、それだけぇぇぇーっ!」

 喋りながらフヒィルは潰れた。ゼイゼイ言いながら、それ以外はつい最近薬の治療薬を作った時だと言った。

「あ~残念。」

 ヘミィネは持っていた上着をフヒィルの頭に乗せてあげていた。汗をかくからと預かっていたやつだ。
 フヒィルがゼイゼイ呼吸しているので、僕とキワーレはフヒィルの背中から降りて立ち上がった。

「何で突然王太子殿下?」

 キワーレは不思議そうだ。
 そう、僕もフヒィルとキワーレは、あまりレジュノ王太子と会ったことも喋ったこともないんじゃないかなと思ったんだよね。だけどクエストにはこの二人も載っていた。
 フヒィルは過去王太子の婚約者候補になったらしいけど、勝手に辞退したと言っていた。特に親しい挨拶もしてなかったから顔合わせの前に辞退したんじゃないかなと思ったんだけど、どうやら予想は当たったらしい。
 だったら舞踏会が始まる前に接点があってもいいんじゃないかなと思ったんだ。
 妹女神様のクエストは、選んだからといってその人と対象者がくっつくかどうか怪しい内容だと思う。
 リュハナの時はリュハナがヘミィネの候補から外れちゃったし。
 今回のクエストもヘミィネを選んでいいのかどうか怪しい。
 だから三人を同じようにレジュノ王太子と合わせて様子を見てみようと思っているってわけ!
 僕がウンウンと頷きながら納得していると、フヒィルがガバッと立ち上がった。

「そうだっ。そろそろ隊長のとこ行かないといけなかった。」
 
 ソヴィーシャのとこ?

「ヨフを連れて来てって言われてたんだ。」

 どうやらソヴィーシャは僕に用があるらしい。分かったと頷いて僕達はソヴィーシャが待つ隊長部屋に向かった。



 隊長部屋にはソヴィーシャと見知らぬ人がいた。

「来たか。」

 ソヴィーシャといた人は金茶色の髪に金茶色の瞳と、誰かによく似た容姿をしていた。
 一緒に来たフヒィルを見ると、彼が扉から逃げようとしている。
 待っていたその人はツカツカと近寄り、フヒィルが開けようとした扉をバンと閉めた。フヒィルは青い顔でギギギと振り返る。
 あ、顔似てる。こりゃ身内かな?僕達よりいくつか年上に見えるから、お兄さんとか?体格いいし騎士の豪華な服を着てる。アルファ~って感じがする。
 フヒィルも綺麗な顔をしているけど、お兄さんも綺麗な顔をしていた。フヒィルよりは逞しいし、顰めっ面をしているから綺麗というよりかっこいいかな?

「どこに行くんだ?」

 ひっくい声でフヒィルを睨みつけている。

「トイレ。」

「ほう?」

 フヒィル……、逃げられなさそうだよ。

「こちらは第一騎士団のダノテ・クゼラ団長だ。見て分かるようにフヒィルの兄君だ。」

 勘当したお家のお兄さんかぁ。

「思ったより仲良さそうだねぇ?」

 僕が言うと、フヒィルがブルブルと首を振った。

「どこをどう見たら仲良しに見えるんだよっ!」

 えー?何となく……。わざわざ会いに来たみたいだし、真っ先に弟に構ってるしね?
 一緒に来たヘミィネなんて公爵家の子なのに目に入ってないみたいだし。
 キワーレは面白そうに見ているけど。

「お前はいつになったら帰ってくるんだ!?しかもアクセミア公爵家の後援とかいらんだろう!お前はクゼラ侯爵家の者なんだぞっ!」

「はぁぁ!?勝手に婚約の打診とか出すからだろ!今まで通り無視しとけよっ!」

 兄弟喧嘩を始めてしまった。勘当って聞いてたけど、フヒィルが勝手に出てきちゃったの?

「呼び出した要件って何なの?」

 無視してソヴィーシャと話そうっと。

「……あの喧嘩を見て無視できるのか。」

 チラッと兄弟喧嘩中の二人を見る。
 二人は取っ組み合いになっていた。フヒィルってオメガなのに馬鹿力だよね。

「うん、いいんじゃないかな?んで?」

「……そうか。呼び出したのは悪かったな。急にクゼラ団長が来ると言うから隊長室から出られなくなって。リュハナを救ってくれたお礼を言いたかったんだ。」

 ソヴィーシャは塔で第一騎士団第四隊を捕まえた後、事後処理に走り回っていた。
 リュハナをお見舞いに来たのも目を覚ました時に一回だけで、それから会うのは久しぶりだった。

「うん、それならいいよ~。僕はついて行っただけで何もしてないし。」

 むしろみんなが戦って走り回っている間コソコソ影から覗いていただけだしね。

「それでもあの塔に行くと言ったのはヨフだと聞いたからさ。助かったよ。リュハナが王族の治療だと言って呼び出された時、俺もラニラルも王宮の中で待機してたんだが、向こうが人を差し向けて攪乱されたんだ。おかげで到着が遅れた。ヨフが行ってくれたからフヒィルもいたし、俺の部下も殿下がつけた護衛も近くにいたんだ。ヨフがいなかったらほぼ戦力がない状態だった。だから礼を言う。」

 ニコリと笑ってソヴィーシャはお礼を言ってくれる。
 なるほど。僕の付属品のようについて来た護衛達がリュハナ救出に一役買ったんだね!

「今も昔も本当にありがとう。」
 
 昔は言ったらいけないよー!今の僕は庭師助手(休職中)なんだからね!

「改めて私はヨフに忠誠を誓いたい。」

「んえ?」

「俺達が今あるのはヨフのおかげだしな。ヨフも無事で良かった。」

 ソヴィーシャは僕の手の甲を恭しく持ち上げ、床に片膝をついて座った。
 んんんんぇ?これってもしかしてぇ?
 チュッとソヴィーシャの唇が僕の手の甲に触れる。
 そんな僕のチュッとされた手の横に、黒髪頭がニョコっと現れる。薄紫色の瞳は半眼になっていた。
 
「…………ええぇぇぇ…。ソヴィーシャまでぇ?」

 うわっ、びっくりしたっ!
 僕とソヴィーシャの横でヘミィネが怖い顔をして呟いていた。わなわなとヘミィネは震えている。
 どうしたの?

「ヘミィネ様?」

 ソヴィーシャは立ち上がり腰を屈めてヘミィネを覗き込んだ。

「何で?ラニラルもだし、ソヴィーシャまで。王太子殿下にしろリュハナにしろ、みんなヨフヨフって……。全員おかしいよ!」

 おおっ!ヘミィネが怒ってるぅ?でもなんか怒ってる姿も可愛いねぇ。目が三角だねぇ。

「あーー………。」

 ヘミィネはキッとソヴィーシャを睨んだ。

「何かあるんでしょう?」

 ヘミィネはソヴィーシャに詰め寄った。ソヴィーシャの服を掴み、震えながら見上げている。
 ソヴィーシャ達は僕がヨフミィだと知っているから、昔誓った通り忠誠を示しているだけなんだと思うんだけど、ヘミィネ達から見たら突然湧いてきた平民に何でみんな忠誠心やら親切心やら見せてるのか理解できないよね~。困ったねぇ。僕が君たちの本物のお兄さんなんだよ~とは今言えないもんね。
 ソヴィーシャは僕をチラッと見ている。
 ソヴィーシャ達は僕が幼い頃の記憶を無くして、貴族に抵抗感を持っていると思っている。僕が平民だと思って貴族の仲間入りするのを嫌がっていると思っているのだ。記憶が戻れば何の抵抗もなく公爵家に戻ってくるだろうって感じで、今は僕が嫌な気持ちにならないよう気を遣ってくれている。だからここで僕のことをヘミィネに教えるのを躊躇っているんだろうと思う。
 ソヴィーシャは困った顔でヘミィネの頭をポンポンと撫でた。

「今は私の一存では説明出来ないんだ。ごめんな。」

 ソヴィーシャはヘミィネを優しく諭している。ヘミィネは悔しそうに俯いた。
 そして僕は手を組みそんなヘミィネを見ていた。

「……何その顔。」

 ううう、だってねぇ。

「ヘミィネってば僕に当たり散らしてもいいのに僕には言わないからさぁ。優しいなぁって。なんて良い子なんだろう~。ヘミィネ可愛いー。」

 普通そう言う時って僕に言わない?そういうもんじゃない?

「ち、違うし。おかしいのはラニラルとソヴィーシャだし…。ヨフは別に、悪くないってちゃんと理解してるもん……。」

「ラニラルがずっと変って言ってるもんね。そんなに変かなぁ?」

 ヘミィネはハッとした。

「変だよっ!今日も僕がヨフに会いに行くって言ったらすっごくお土産持たせようとしてくるし、一緒に行きたいって言ってフブラオ先生困らせてて、いつものラニラルじゃないんだよっ!」

「あー、あれは笑えた。」

 キワーレが吹き出して笑っている。いったい何があったの?

「ラニラルは何をやってるんだ。駄々っ子か?」

 ソヴィーシャが呆れた顔をしていた。そしてヘミィネの握りしめた手を取り、自分の大きな手のひらで包むようにポンポンと軽く叩いてやっている。
 むすぅとするヘミィネは慰めようとするソヴィーシャを文句言いたげに見上げていた。

「ごめんな。ラニラルは今浮かれているんだ。でも私は前の能面みたいなラニラルより、今の方が安心して見ていられる。ラニラルにはそっちの方がいいんだ。だから許してやって欲しい。」
 
 おおーー。ソヴィーシャが大人な対応をしている。
 ラニラルより一つ下だったハズなのにね。

「…………わかった。」

 ヘミィネは納得できないといった顔をしつつも頷いてくれた。ソヴィーシャはそんなヘミィネを見て小さく微笑む。
 駄女神の小説では、ソヴィーシャは寡黙な騎士でいつもヘミィネを黙って見守り慰めている存在だった。今は寡黙ではないようだけど、こんな感じだったのかなと思える。
 ヘミィネとソヴィーシャの会話を聞きながら、キワーレが首を傾げた。

「…………へぇ、つまり今のヨフ関連で頭沸いてる侍従殿の方が本来の侍従だってこと?」

 頭沸いてるって言わないであげて?
 キワーレはまだ何か考えているのか眉を寄せて上を見た。

「あれ?確か私が調べた限りじゃラニラル・バハルジィ伯爵子息は子どもの頃ヨフミィ・アクセミア公子に忠誠を誓ったんだよね?それで仕えていた公子が死亡…、じゃなくて行方不明になったからあーんな冷たい侍従になったんだっけ?」

「ラニラルは元々冷たいぞ?」

 すかさずソヴィーシャがツッコミを入れている。

「いやでも、今の浮かれた侍従が元の侍従。ヨフミィ公子がいたら浮かれてて、ヨフの前で浮かれてて、……あれ?」

 キワーレが僕を見た。
 あ、キワーレは僕が本物って知らなかったんだった!
 妙に頭の回転が早いキワーレが何かに気付いている!

「キワーレ、今から面白いところに行こう。」

 僕はキワーレの思考を停止させるために違う話題を振った。ヘミィネは僕が兄って知らないんだよねぇ。ヘミィネを見ると、何を言ってるんだろうと不思議そうにキワーレを見ていた。
 キワーレは僕をジーと見ている。誤魔化せないか…。

「どこ?」

 キワーレはこれ以上詮索してこなかった。察しがいいからヘミィネの前でこれ以上言ったらダメだと気付いたらしい。
 全く無関係なダノテ・クゼラ騎士団長もいるので助かる。多分騎士団長から見たら世間一般ではキワーレがヨフミィ・アクセミアかもしれない存在ってことになってるんだからね。騎士団長もそう思っているはずだもん。

「う、えっとね……。」

 咄嗟に言った提案だったけど、僕はやろうかなと思っていたことを決行することにした。











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