じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

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番外編

88 公爵家の強者達

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 僕のお父様は真っ白な髪に榛色の瞳をしているオメガの男性だ。父上はアルファで、濃紺の髪に蒼い瞳をしていて、お父様のことが大好きで、暇さえあればお父様の世話をしている。
 お父様は父上と番になって結婚して、神様に子供をくださいってお願いしたのだと話してくれた。
  
『妹女神様っ、僕は三つ子が欲しいです~!』

 と言ったとか……。
 願った場所は、僕達が生まれる前に首都の街中で大火事があったらしく、その時の犠牲者を追悼する為に建てられた建物の中で祈ったらしい。そこには何故か『神様の宝剣』というものが飾られていて、厳重に守られている。お父様はその『神様の宝剣』に祈ったのだ。
 なんで妹女神?と全員思ったらしい。しかし奇跡は起こった。
 お父様のお腹には本当に三つ子が誕生していたのだ。
 なんで三つ子が良かったのかと聞いたら、お父様は一度にたくさん産んだほうが、後から楽かなと思ってぇ。とか言っていた。お父様らしい。
 そして僕達は三つ子として生まれた。
 一度で済むから楽チンと思っていたお父様は、三回も立て続けに出産するという体験をして股が裂けるかと思ったと後悔していた。
 その話は国中に広まり、大火事の犠牲者を追悼する為の建物なはずなのに、安産祈願にやってくる人達まで来るようになってしまった。
 
 最初はあまり差がなかった僕達だったけど、気づけば僕だけ小さい。頭ひとつ分は小さいし、運動神経も今ひとつだった。

「いいんだよ、ラウェナは僕達が守るから。」

「心配はいらないよ。ラウェナが一生困らないよう私達がいるのだからね。」

 長男ファレトと次男グティエはいつもこんなことを言っている。どちらもアルファで、三つ子である僕の兄達だった。
 僕の髪はお父様ゆずりで真っ白な髪をしている。瞳は父上似で蒼瞳だった。アルファの兄達は濃紺の髪に榛色の瞳をしている。僕だけ色味が違う所為か、三つ子なのに下に生まれた弟なのだとよく勘違いされる。
 元々末っ子の僕に甘かった二人だけど、十歳でオメガと言われた時からさらに過保護っぷりが増した。
 二人の愛情は嬉しいのだけど、僕はもっと自由が欲しい。

「ジュヒィーお祖父様、どう思う?」

 僕はお祖父様とお話しするのが好きだ。お祖父様はお父様のお父様!オメガの大先輩だ。
 僕は十五歳になったけど、まだまだ若々しくて綺麗なお祖父様が大好きで、アクセミア領地に帰ってきたら、いつもジュヒィーお祖父様にくっついている。
 ジュヒィーお祖父様は僕に話しかけられてニコッと笑った。流石にお年を召しているので目尻の皺なんかはあるけど、それすら似合っていて綺麗な人だ。
 僕も歳をとった時、ジュヒィーお祖父様みたいになるのが夢だ。
 じーと見ていると、ほっそりとした手が僕の頭を撫でてくれた。

「アルファはどうしても気に入った子をかまいたくなるからねぇ。好きにさせておけばいいよ。嫌なことは嫌ってはっきり言えばすぐにやめるから。」

 上手く使えばいいんだよ。
 そうお祖父様に言われても、僕に出来るかなぁ。

「うう~ん……。」

 僕達が話をしていると、寝ているお父様が寝返りをうった。
 今、僕達はアクセミア領地の公爵家敷地内に建てられた通称ボロ屋敷に来ている。
 ボロ屋敷は別にボロではない。年季の入った建物ではあるけど、手入れのされた綺麗な屋敷だ。こじんまりとしていて本邸から見たら小屋のようなものだけど、お祖父様とお父様はこの屋敷が大好きだった。
 公爵領に戻ってきたら、本邸とボロ屋敷で半々くらいを過ごしている。
 僕も小さな頃からお父様に連れられてボロ屋敷で過ごすことが多かった。
 お祖父様とお父様がここにいるものだから、リーテお祖父様と父上もよくこっちで寝泊まりしている。
 公爵家の人間がここに集まってしまうと手狭になるのに、ボロ屋敷の大きさは絶対に変えようとしなかった。
 この屋敷はお祖父様とお父様の思い出の屋敷になるらしい。過去に一度、火事で焼けたらしいけど、その時も修理だけで建て直すことはしなかったと聞いている。

「ヨフミィ…、あまり寝すぎると夜に寝むれなくなるよ。」

 お祖父様が優しくお父様を起こしていた。

「んうぇ…?」
 
 寝ぼけ眼でお父様は起きた。
 
「もうすぐ夕方になるよ。」

 僕はなかなか起きあがろうとしないお父様の手を握って上に引っ張る。ようやく上半身だけ起き上がってくれた。

「ふわぁ~~~あ。ラニラル達はまだ帰ってこないの?」

 キョロキョロとしながら尋ねてくる。

「もうすぐじゃないかな。こっちから行ってみる?」

 お父様はパッと笑顔になって行く行くー!と元気に返事をした。
 三人で上着を羽織って外に出る。
 僕はもう十五歳だけど、お父様とお祖父様と手を繋いで真ん中を陣取った。

「ふふふん。」

「あはは、ラウェナは嬉しそうだねぇ。」

 お父様は満面の笑顔だ。お祖父様はそんなお父様と僕を見て、目を細めて眩しそうに微笑んでいる。
 僕のお父様は小さな頃に行方不明になって、大人になって帰ってきたらしい。だからかジュヒィーお祖父様もリーテお祖父様も、お父様には甘々だ。
 ヘミィネおじさんとルヌジュおじさんは、そんなお祖父様達に呆れ顔をよくしている。そんな時は、お父様達は同じ兄弟でオメガなのに、僕のお父様が一番年下みたいに見えてしまう。
 お父様はふわふわしていて、いつも笑って変なことを考えている人だ。

 ボロ屋敷周りの森を抜けると、風の音が通り抜けた。緩やかな傾斜の草原には、牛がゆったりと草を喰み寝転がったりしていた。
 昔はここから畜産業を始めたと聞いている。牛や羊の頭数が多くなり、ちゃんとした広い場所に移転したと聞いている。それでも公爵家の屋敷で食料や加工品として使用される分くらいは残されていた。だから今も家畜はちゃんといる。
 遠くの方に父上達の姿が見えた。
 リーテお祖父様と父上、それからリュハナ・ロデネオ伯爵がいた。三人は屋敷にいる家畜達の様子を見に来ていた。すぐに済むと言っていたのに、何やら話し込んでいるらしい。

「何してるのかな?」
 
 僕が聞くと、お祖父様は少しだけ笑った。

「ほんとうにね。真面目な顔してるけど、くだらない話かもだよ。」
 
 お祖父様が言った言葉に、お父様が「あっ!」と声を上げた。

「多分ね、ラウェナのことだよ。」

「え?僕?」

 そうそう、とお父様はうなずいた。僕は何かしたかな?
 お祖父様も何か思いついたのか、僕を見た。

「学院で年下の友人が出来た話のことかな?」

 そう言われて、昨日の晩餐でその話をしたことを思い出した。
 僕は学院に通ってはいるけど、オメガだから自宅学習が多く、授業も課題提出がほとんどになっている。二人の兄は学院に通っているけど、僕は王都の公爵邸にいることが多かった。と言っても一人ではなくお父様やジュヒィーお祖父様もいるので寂しくはない。
 それでも時々、同じ年頃の子と会ってみたいなと思っていた。
 オメガ同士のお茶会は自分で開催したり、招待されて参加したりはしているけど、ベータの令嬢かオメガしかいない。
 僕はアルファの子とも仲良くなってみたかった。
 でも同じ歳や歳上は怖い。なら歳下だ!
 ってことで歳下がいるサロンの近くに行ってみた。そこで四つ歳下のアルファの子と出会ったのだ。
 本当はアルファの女の子が良かったけど、その子は女の子みたいに綺麗な子だったし、向こうから話しかけてくれたので仲良くなれた。
 その子はすごく優しい子だった。
 アルファだからか、背は既に僕を少し超えていたけど、身体は細くてしなやかな感じだった。
 全然怖くない。
 僕は学院に行くと、その子と待ち合わせをしてお喋りをするようになった。
 そういう友達が出来たのだと話しただけだった。

「もしかしてアルファの子と仲良くしたらダメなの?」

 お父様の話では、お父様が小さい頃は十歳になる前から学友として父上達が呼ばれたって聞いたのに。僕にはそういった学友は用意されなかった。

「ああ………うん。ラニラル達がね、ラウェナにそんなもの与えるのは心配だって言い張ったからね……。僕はアルファの友達も作っていいと思ってるよ。」

 お父様が気まずそうに頬をかいた。

「それをいうならリーテもだよ。ヨフミィの時は早すぎたって言って、次に生まれた双子達にも用意しなかったくらいだからね。」

 お祖父様も苦笑している。
 徐々に父上達に近づいて行くと、話の内容が聞こえ出した。

「絶対に王太子ですよ。」

「油断も隙もないな。」

「まぁ、まぁ、ほら、ラウェナ様から近づいちゃったみたいだし。そんな目くじら立てなくても…。」

 怒れる父上とリーテお祖父様を、ロデネオ伯爵が必死に宥めていた。
 え、ずっとこんな所でそんな話してたの?
 確かに僕が仲良くなったアルファの子とは王太子殿下のことだった。
 今の王様であるレジュノ・リクディーバル国王は父上の幼馴染と聞いてるんだけど…。あ、でも会えば何故か口喧嘩してるか……。
 国王陛下とは何度か挨拶をしたことがある。僕を見てお父様にそっくりで可愛いと褒めてくれた。その時の父上と兄上達の険悪ぶりが凄かったけど、お父様が僕が可愛いことを自慢しまくっていたのでその時は喧嘩にならなかった。
 国王陛下の番で王妃様のフヒィル様は、自分の子供も紹介したいと言っていたけど、僕だけ会わせてくれなかったんだよね。兄上達だけ別の日に挨拶したと聞いてズルいと思ったことがある。
 だから王太子殿下と学院で会った時は、ようやく僕も挨拶が出来て嬉しかった。
 学院で出来た友達が王太子殿下とは言わなかったのに、なんで知ってるんだろう?

「つまらないことで怒ってるねぇ。」

 お父様はほわわんと呟いている。

「まったくだね…。」

 ジュヒィーお祖父様も呆れていた。

「……お友達になったらダメだったの?」

 心配になって二人に尋ねると、お父様とお祖父様は同じ笑顔で笑った。

「まさかぁ。ラウェナの好きにして良いんだよ!」

「無視して良いからね?」

 ふむ、じゃあ良いんだ!
 だって我が家でこの二人に勝てる人なんていないもんね!








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