悪役令息が戦闘狂オメガに転向したら王太子殿下に執着されました

黄金 

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番外編

232フォピレアの春の羽玉⑨


 ニティナの首と足首に重たい鉄輪が付けられていた。首輪と足輪は鎖で繋がり、逃げられないよう壁に取り付けられた輪っかまで続いていた。
 どこかで休憩をとった時に透明になって逃げようと思っていたのに、食事に睡眠薬でも入っていたのか急激に眠たくなり、起きたらこの状態にされていた。
 ノニーの透明化は肌に付着している物まで透明にしてくれるが、姿が見えなくなっているだけで、物体を通り抜けられるわけでは無い。
 首輪も足輪も一緒に透明になるし、トイレと言って荷馬車から出ても付けたまま連れて行かれたので、透明化して逃げるにしてもこの重たい拘束具を付けたまま逃げることになる。
 しかも休憩に町か村に寄るかと思ったら、全く立ち寄らずに馬車は走り続けていた。
 ニティナはノビゼル公爵夫々と一緒にアニナガルテ王国のあちこちを移動して回ったので、何となく向かっている方向がわかった。
 数日経つとガルクラープ山岳地帯が薄っすらと遠くに見えて来て、北のリノルト辺境伯爵領地に向かっているのを理解していた。
 ニティナを連れ去ったのはサマファル国の人間なのだ。連れ去る可能性があるのは、王位継承権を持つ人間かその派閥しかない。
 誰がニティナを攫うよう指示したのか気になった。
 学院の中だからと迂闊に一人にならなければよかった。知らない人間について行かなければよかった。
 後悔してもどうしようもない。

「ノニー………。僕にも何かできる?僕、一人で脱出できる?」

 春銀氷トカゲの鱗は暗闇の中でも淡く銀色に光っている。それが暗い心に勇気づけられ、ニティナは涙をグッと我慢した。
 格子付きの小さな窓の外は暗い。
 走り続けるのは追ってが来ているからだろうか?来てくれていると信じたい。
 
「うぅ………。」

 食事は与えられているが、毎日飲んでいたオメガ用の抑制剤はこない。頼んでも無視されてしまった。
 不安で堪らない。
 重たい鉄の輪は肌に食い込み擦れて血が出てきた。
 今はノニーと首にあるネックガードだけが自分を守る武器だ。
 泣かない。泣いていたら、体力が減る。好機を逃す。だから泣かない。
 そう心の中で繰り返しながら、ニティナは静かに馬車の中で息を潜めていた。



 何日も荷馬車は走り続け、ニティナはぐったりとしていた。家具も何もないただの床板の上にいなければならなかったのだ。毛布一枚はあったが、それだけだ。
 しかもずっと揺れ続けていたので立つことも出来ないし、壁に寄りかかるのでやっとの状態だった。
 目的地らしき場所に到着した時にはグッタリとしていた。

「ようこそニティナ殿下。」
 
 外に引っ張り出されて地面にへたり込んでいると、目の前に女性の足らしきものが視界に入った。ノロノロと顔を上げると大人の女性がニティナを見下ろしていた。

「お疲れのようね。まずは身体を洗いましょうか。」

 よくみると森の中に建つ屋敷のようだ。知らない場所だった。
 屋敷の使用人らしき人達が出てきてニティナの身体を支えて無理矢理中へと連れて行った。
 女性はニティナをずっと見ている。背が高く、ニティナよりも高いかもしれない。美しい顔には額から片頬にかけて大きな傷痕があった。
 アルファだと思った。ニティナを見る視線は獲物を見る目だ。サマファル国の王宮にいた頃はよく感じていた。アニナガルテ王国は平和で、あからさまにそんな視線を向ける者はいなかった。仮ではあるが、婚約者のフォピレアでさえ、性的な視線はなかった。
 ニティナは使用人達に支えられながら、逃げるように屋敷の中へ入っていった。


 久しぶりにお湯で綺麗に洗われ、汚れた制服から綺麗な服に着替えた。
 顔に傷のある女性はシェラビッテ・ホルバヌと名乗った。以前会っているらしいのだが、ニティナはあまり覚えていなかった。
 そのことに微妙に不快そうな顔をされてしまったが覚えていないものは仕方がない。
 
「どこに連れていくつもりですか?」
 
 ニティナは震える声で尋ねた。

「私の領地にきてもらう。ニティナ王子には私の番になって貰う予定です。」

 ニティナは目を見開き驚くが、あまりのことに声が出ない。ニティナはアニナガルテ王国のノビゼル公爵家嫡男フォピレア・ノビゼルの婚約者だ。それを無視してニティナの項を噛むということは、この女はアニナガルテ王国を敵に回すつもりなのだ。
 ホルバヌといえばサマファル国の北に位置する伯爵家で、継承権があったはず。
 ディムシィアお姉様と北部地域の領主達が争っているのは本当なのかもしれない。
 ニティナは自分が人質なのだということに気付いた。
 また移動するのだと言われて、今度はちゃんとした馬車に乗せられた。乗せられる途中、ここまで乗ってきた荷馬車を見つけたが、ノニーをその中に置いてきている。
 ノニーは希少動物だ。もし捕まえられて殺されたらどうしよう。
 こんな所に置き去りにしたくない。だがニティナの味方は一人もいない状況で、どうすることも出来ずにニティナは馬車に乗せられてしまった。
 シェラビッテ・ホルバヌはニティナと一緒の馬車に乗り込んできた。

「その首のネックガードはテイローラワ国産ですね。誰が魔力を通したか教えて下さい。」

 ニティナは首のネックガードを隠すように両手で覆った。

「……………。」

「言いたくないですか?しかしその魔力には覚えがあります。つい最近もその者と交戦したので。」

 ディムシィアお姉様と!?魔力で戦ったと言うのだろうかとニティナは青褪めた。
 まさかそれで怪我をしたのではと心配になる。

「その顔色は間違いなさそうですね。」

 シェラビッテ・ホルバヌは口角を上げてニンマリと笑った。
 何を考えているのか分からない。
 分かるのはニティナが人質であり、足手纏いだということだけだった。



 どうやら一度寄った屋敷はまだアニナガルテ王国の中だったらしい。
 シェラビッテ・ホルバヌと兵士達の会話を静かに聞いていると、状況がなんとなく見えてくる。
 リノルト辺境伯爵領からさらに北上してアニナガルテ王国から出て、北にある国の中を迂回してサマファル国に入るのだと話していた。
 気付かれないよう人気のない山の中をひたすら馬車は走っている。舗装された道ではないので、揺れが激しく気持ち悪くなっていたが、誰一人ニティナの体調をおもんぱかる人間はいなかった。
 更に数日走り抜け、どうやら馬車はサマファル国に入っていたらしい。
 両国を繋ぐ街道と砦が見えて、兵士達の陣営が広がっていた。
 
 戦争をしている………。
 
 ニティナは戦争を経験したことがない。その物々しさと、人々の荒々しい表情に恐ろしさを感じた。
 帰りたい。
 早く帰りたかった。

「ディムシィア王女はどうなった?」

 シェラビッテ・ホルバヌが兵士に尋ねていた。ハッとしてニティナも会話を聞く。

「はっ、怪我を負ったのは間違いないかと。しかしまた攻めてくるかもしれません。」

「こちらには人質がいる。私が対応しよう。」

 そう言ってニティナの方を見た。

「その忌々しいネックガードを外す必要があるからね。」

 紅い唇が弧を描き、ニティナをじっとりと見つめてくる目が恐ろしくて、ニティナは青褪めて震えた。



 本来ならば青々と芽吹く美しい季節なのだろうに、ニティナの目の前には戦場が広がっていた。
 鉄臭い血の匂いに吐き気が込み上げる。
 獣のような人間の叫び声があちこちから響き、ニティナは恐怖でブルブルと震えていた。

「オメガは本当にか弱いな。」

 そう言いながら笑う女が恐ろしい。
 シェラビッテ・ホルバヌ伯爵はサマファル国の北部領地を飲み込み、ディムシィア王女の陣営を追い込もうとしていた。
 現在サマファル国の西側でも他国が攻め込んでいるらしく、最初いたサマファル国軍は半数以下になっていた。戦力を北と西に分けるしかなく、北部で対戦していた国軍はジワジワと兵力を減らしていた。
 そう語るシェラビッテ・ホルバヌ伯爵の言葉が恐ろしくて、耳を塞ぎ聞きたくなかったが、自分も知るべきだと思い我慢していた。
 シェラビッテ・ホルバヌ伯爵はディムシィア王女を自分の本陣営に呼び出したと言った。
 ニティナを人質に敵の本拠地にディムシィアお姉様が呼び出されたのだと聞き、ニティナはお願いだから来ないでくれと祈った。
 だが分かる。
 きっとお姉様はここに来るだろう。
 そして本当に来たことに涙が出てきた。
 恐ろしい場所に懐かしい姉の姿を見て、ニティナはポロポロと涙が出てきた。ディムシィアは現在十九歳。美しい大人の女性へと育ち、アルファでもあり次期国王としても威厳に満ちた姿に、ニティナは嬉しく思った。

「お姉様………!」

「……………ニティナっ!」

 怪我をしたと聞いていたが、元気そうで良かった。
 悔しそうなお姉様の表情に申し訳無さが込み上げる。

「お前達…………、ただじゃおかないわ。」

 低くディムシィアの威圧が漏れ、北部軍の兵士達はたじろぐ。

「その威圧は抑えて貰おうか。」

 シェラビッテ・ホルバヌ伯爵はニティナの首を掴んでディムシィアを脅した。
 ディムシィアはスッと表情を消して威圧を抑える。

「…………ニティナを解放しなさい。」

「解放は出来ない。」

 伯爵はディムシィアを嘲笑い拒否した。
 ニティナは自分の存在が許せなかった。なんて弱いんだろう。いつも公爵様やノニー任せで守られてばかりで、自分で自分を守ろうとしなかったツケがここにきているのだ。
 魔力が少ないからと諦めず、一つでもやれることを頑張ればよかった。
 
「……うう……。」

 ジワリと涙が浮かぶが、これ以上迷惑をかけたくなくて必死に歯を食いしばる。
 
「さあ、王子の命が大切ならば、このネックガードを外して貰おうか。」

「……………それを外す時は、私がニティナの番と認めた者が現れた時よ。」

 伯爵は歪んだ笑みを浮かべる。額から頬にかけてついた抉れるような傷が引き攣り、美しい顔は歪んでいた。

「ここにいるでしょう。」

 自分こそがニティナの番だと主張する。
 ニティナはその言葉にゾッと身を縮こまらせた。こんなアルファの番なんて嫌だ!
 必死に止めた涙がまた溢れてきて、そんなニティナをディムシィアは優しく見つめた。

「大丈夫よ、ニティナ。」

「お姉様…………。」

 ニティナは無意識にディムシィアの方へ手を伸ばした。
 だがその手はシェラビッテ・ホルバヌ伯爵に奪い取られ、首にかかった手に力が入る。
 
「ぐぅーーーっ!」

 息が詰まり苦しむニティナを見て、ディムシィアの表情が険しくなった。

「…………お前、覚悟なさい。」

「ははっ、何を言うの?今の王国軍では我等に押されて崩壊寸前ではないか!」

「………お前バカね。」

 ディムシィアは笑みを深くした。凶悪に、呪うように。そして嘲る。

「その子の婚約者が動かないとでも思うの?」

「なに?」

 アニナガルテ王国のことを言っているのならば、今国境近辺でも戦闘が開始されている。今や北部軍は巨大に膨れ上がり、サマファル国を覆おうとしているのだ。
 アニナガルテ王国が来る前に、ディムシィアは討たれ、そのまま王国を飲み込む予定だ。
 玉座に座るキーゼアン王家は討ち倒し、ニティナと番い、シェラビッテが玉座に座るつもりだった。
 ニティナを手に入れた者が王だ。
 この王女は何を言っているのか。
 そう瞬時に思考を巡らせた時、何かが降ってくると感じた。殺気はない。だから目眩しの何かだろうと判断し、シェラビッテは避けようとした。
 が、落ちてくるソレは早かった。
 高速で回転し落ちてきたのは人だった。
 そしてニティナを掴んでいた肩に深々と刃がめり込む。

「ぐっっっ!ゔ、ゔぁあぁぁぁぁっ!」

 めり込んだ刃が勢いよく抜かれ、ブシュと血が吹き出た。
 シェラビッテは衝撃と痛みに叫び、周囲は一瞬何が起きたのか理解出来ずに固まった。
 ニティナは掴まれていた首が離されよろめいたが、力強い腕が抱き込み支えてくれた。
 ニティナからは恐ろしい叫び声は聞こえたが、幸運なことに後ろ向きだった為見えていなかった。
 支えてくれた腕が太く逞しくニティナを包み込み、それが誰だかなんなとなく分かった。
 助けに来てくれたのだと心の底から歓喜する。

「大丈夫か?」

 心配そうな声は低く静かで、いつもの通りのその声音に安心した。

「……はい。」

 返事をするとヒョイと抱え上げられた。見上げればフォピレアが心配そうに見つめていた。
 右手に持っていた狩猟刀からは真っ赤な血が滴っていたが、それを一度払って飛ばし、腰に下げた鞘に戻した。
 空いた右手でニティナの首輪に手をかける。グッと掴むとバキッと割れて首輪が取れた。

「足は上げれる?」
 
 ニティナの片足にも重い鉄の足輪がついていたが、重たくて上がらない。歩く時も引きずっていたくらいだ。
 プルプルと首を振ると、フォピレアは腰を落として自分の膝にニティナを座らせると、足輪の付いた足首に手を伸ばして掴んだ。すぐにバキッと音がして足輪が外れる。

「……………。」

 ニティナはキョトンとした。
 あれ?この鉄の輪ってそんな簡単に壊せるものだったの???落ちた鉄の破片を持ってみたが、固かった。ニティナにはただただ不思議だった。
 フォピレアはニティナを抱っこしたまま軽々と立ち上がり、茫然と見ていたディムシィアの方を見た。

「……………。」

「黙ってないで何か言いなさい!」

 来ることは知っていたが、どのタイミングで来るかなどはサッパリ分からなかった為、ディムシィアはいつアニナガルテ王国の援軍が到着するかとハラハラしていた。
 時間稼ぎで会話を続けていたものの、誰が来るのかさえ知らなかったのだが、ちょうど話をしていたニティナの婚約者が空から降ってきて驚愕した。
 ディムシィアがシェラビッテ・ホルバヌ伯爵からニティナを人質に取られ敵の中心に呼び出されたのと同時に、アニナガルテ王国からも早駆けが来て、援軍を寄越すと知らせが入っていた。
 一応場所と時間を紙に記し渡したのだが、ちゃんと間に合うのかすら連絡を取り合う暇もなかった。

「ニティナは連れて帰る。」

「言う言葉がそれなの!?」

 ニティナの婚約者が少し独特なのだと、ディムシィアは初めて知った。









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