【完結】悪役令嬢に生まれ変わったけど死ぬしかないようです

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王子の苦悩

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<レオランフィス王子視点>

側近候補のカルロスとヘイル、そしてモンベル先生と執務室で話している。

「なぜお前達だけいい思いをして、私はレベッカと一向に進展しないのだ」

「なぜでしょう?」

「お前たちがアイシャという女とかかわったお蔭で真実の愛を手に入れたと言うから、私も我慢してお茶に付き合たり、手作りとかいう気味の悪い弁当まで食べたんだぞ」

「私のココットが言うには、レベッカ様もアイシャ様も同じ未来を信じているようです。アイシャ様の目的は分かりませんが、レベッカ様は多くの人を助けるには婚約破棄をするしかないと考えているようですね。それに王子はアイシャに惚れこんで、すでにレベッカ様にお気持ちはないとも」

「なんだと、完全に裏目に出ているではないか」

「レオ様、私が御身を守りますが目的がはっきりするまでレベッカ様ともアイシャ様ともお会いにならない方がいいでしょう」

「じゃあ、お前達も婚約者に会うのを控えるか」

「嫌ですよ。これはレオ王子の問題です。我々には関係ありません。可愛い婚約者に会えないなど拷問じゃないですか」

「カルロス、お前昨日は納得するまで婚約者の足を舐めたと言っていたな」

「はい。それは夢の中のように幸せでした」

「ヘイルお前は、婚約者と毎日キスし放題。この前は初めて胸を見せてもらったと言っていたな」

「はい。最高の胸でした、思い出しても興奮します」

「モンベル、お前はいつのまにかレベッカのメイドと結婚したらしいな」

「はい。私は平民ですから貴族のような邪魔くさいルールはありませんので、早速レベッカ様の許しを得て結婚しました。初夜は可愛いココットを抱き潰してしまって怒られましたが、毎日ラブラブです」

「ズルくないか!なんで俺だけレベッカに会えないんだ」

「王子には多くの人の命がかかっているのです。卒業まで後2カ月、それが終わるまでは我慢です」

「・・・・2カ月もレベッカに会えない」

「泣かない、泣かない。王子は男の子でしょう。もう少しの辛抱です」

***

<レベッカ視点>

「ココット、モンベル先生とはうまくいっているの」

「ええ、お嬢様より先に結婚することになって申し訳ありません。お嬢様の卒業まではと何度も言ったのですが、モンベル様が・・・」

「ええ、ココットが学園を歩くたびに男の方たちが振り返るのが我慢できないと真剣でしたものね」

「はい。あれはお嬢様を見ているだけで私ではないのですが、惚れたらなんとかというやつですね」

「十分ココットも可愛いわよ。でも明日は卒業式ね・・・」

「本当にお嬢様は婚約破棄をされるのですか?」

「ええ、予言通りであれば」

そう、明日私は死ぬのだ。実感は湧かないが両親・ココット・そしてレオ様へ手紙を書いた。書いた手紙はそっと机の引き出しに入れた。

どうか、私が亡くなっても覚えていて欲しいと願いを込めて。

虐めは思うように行かなかった、ゴロツキと知り合う機会もなく階段から落とすなど絶対できなかった。その代わり、アイシャには散々貴族の常識を教え込んだ。

教室や食堂でなるべく多くの目に晒されるように、叱りつけるとアイシャは「どうして、私ばっかり虐めるのですか」と大きな瞳に涙をためて騒いでいたので、婚約破棄には十分な理由ができただろう。

「さあ、今日は私の最後の舞台だ。思いっきり惨めになりましょう」

私はこのイベントの為に有名な舞台演出家の先生を雇った。明日のために何度も練習をしてきたのだから大丈夫と自分に叱咤する。

幼い時から令嬢として感情をコントロールすることを覚えた私は、泣き叫ぶということがどうしてもできなかった。人前で泣くことも恥ずかしいが『泣きながら叫ぶ』と言うふたつの感情を同時にできず、思いのほか手こずった。両親や使用人たちからすれば、練習風景は異常に見えたのだろう。

オロオロする両親に、卒業式で行う演劇の練習と言って嘘をついた。

先生には「無様な自分という仮面をかぶるのです」と言われたときには、目から鱗が落ちるほど衝撃だった。

私は女優と言い聞かせる。

私の演技ひとつで人々の命がかかっている。

卒業式の当日は本当に雷が落ちるのかと思うような晴天だった。

ココットは涙を流しながら「婚約破棄をされても一生お嬢様に寄り添っていきたいです」と言って髪を結ってくれた。

「ココットあなたには感謝しているわ。モンベル先生と結婚したことが本当に嬉しいのよ。私のことは気にせず、あなたは幸せになってね」

「・・・お嬢様、もう会えないような言い方ですね」

お母様が誕生日に買ってくださったネックレスを付け、上品にドレスアップした私を見て「とうとう卒業なのね・・・綺麗だわ、レベッカ」と褒めてくださった。

物語では、すでにお母様はこの世にいない。

「お母様にこの姿を見てもらえて私も嬉しいわ」そう言って会場に向かった。

なんども空を見上げる。もしものことを考えると婚約破棄をされたら、速やかに全員を避難させる必要がある。卒業式が粛々と終わり、いよいよ卒業パーティーのため隣にできた新しい建物に移ることになった。

国王陛下や著名人が集まり盛大な祝いが行われる予定だ。

王宮で働く父に会場は変更できないのかと聞いてみたが、建物のお披露目会も兼ねているので難しいだろうと言っていた。

建物に移るとき空を見上げると朝とはうって変わって厚い雲が立ち込めていた。パラパラと雨も降りだし、小さく雷鳴が聞こえる。この雷が、私を焼き殺すのだろう。身震いしながらも冷静に会場に入った。

金色の刺繍が入ったタキシード姿のレオ様は王子様そのものだ。モスグリーンの美しい瞳が私を見つめているように思うのは気のせいだろう。

スピーチをする懐かしい声に、死にたくないと弱気になるが今は人命がかかっている。

会場に入るとレオ様はアイシャ様と一緒に立っていた。

アイシャ様は大きなリボンが可愛らしいイエローのドレスを着ている。物語ではアイシャ様は真面目で寝る間を惜しんで勉強をしていたはずだが、現実ではさほど成績が良くないみたいだ。

それでも、この小さな体が男性の庇護欲をそそるのかもしれない。側にはカルロス様もヘイル様も立っていて、楽しそうに歓談している。

このふたりも攻略されたのかしら。

「レベッカはいるか!」

会場にレオ様の通る声が響いた。

(ああ、レイ様・・・今から本番が始まるのね)

私は一度大きく深呼吸をして、仮面をかぶるようなしぐさをした。

(さあ、最後までやりきるのよ。レベッカ)

「ここにおります」

私がレオ様の目の前に立つと、急に腕を引っ張られ抱きしめられた。

「さあ、レベッカ。私の近くにいるのだ」

「はあ?」

(これはアドリブ?!)

「全員部屋に入ったな?扉を閉めよ!」

護衛の騎士達が訓練されたように素早く扉を閉めた。

「魔術省のルーベン、ここからはお前が指揮を取れ!」

「はい、承りました。全員構え!雷をぎりぎりまで引き寄せて結界を張るのだ」

「・・・これは、どういう」

「レベッカ、危ないから私にもっと寄り添って」

レオ様がさらに強く抱きしめてきた。そうして胸の中に納まると、私の顔の位置にレオ様の厚い胸板がくる。ふわっとレオ様の匂いを感じた、久しぶりのレオ様の匂いだ。

(アドリブにどう対応すれば?どれが正解なの)

演技のスタートが分からないと戸惑っていると、アイシャ様が「早くレベッカ様を断罪しないとみんな死ぬわ。早く婚約破棄を発表してください!」という声が聞こえた。

(そっか、今なのね)

「レオ様、私はあなたの愛するアイシャ様を虐めましたわ。大勢の前で𠮟りつけたのです」

「後で説明するけど、君は大切な婚約者だ」

「はい。アイシャ様を泣かしたこともあります・・・・・・え?」

アイシャ様も驚いたのか、目を大きく見開いている。

「レオ様何を言っているのです。私は散々レベッカ様に虐められたのです。騙されてはダメです、早く婚約破棄をしないと私もあなたも死んでしまいます」

「レオ様、アイシャ様の言う通りよ、早く逃げて!早く全員を避難させて」

「レベッカは黙って、ココットから雷の話は聞いた。ひとりでよく頑張ったな」

雷鳴が段々近づいて来る。レオ様が手短にこれから起こることを説明した。すぐ近くに雷が落ちたのだろう、ドーンと言う音と地響きに会場の誰も声を上げずパニックにならないで耐えている。

ルーベン隊長の低い声が響いた。

「今だ!全員放出!!」

魔法省の役人が杖から魔力を放出すると、会場に大きな魔法陣が現れた。何重にも魔法陣は広がり会場全体にいきわたると、光に包み込まれた。

その時、ドーーーーーーン!というひと際大きな雷鳴が鳴り響いた。

「キャ!」

「大丈夫だ、レベッカは私が守る」

レオ様の大きな腕にがっちり閉じ込められて、何分経ったのだろう。
雷鳴が遠くに去っていく、すると雲が晴れたのか会場に光が差し込んだ。

「・・・・成功だ。雷から人々を守ったぞ!」

ルーベン隊長の声が響くと会場から一斉に拍手が沸き起こり、お互いに抱き合って喜ぶ人々の姿があった。魔法省の役人たちも「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」と唸るような雄たけびを上げている。

周りを見ると、いつの間にか舞台から降りカルロス様もヘイル様も自分の婚約者を守るように抱きしめていた。

ぽつんと独りで立つアイシャは茫然としており、段々顔を真っ赤にさせると「なんで私を誰も守らないのよ!」と鼻水と涙を同時に流し泣き叫んでいた。

プライドを捨てた名演技に私は感動して拍手を送る。

「レベッカどうしたんだ?」

「素晴らしい演技だわ。流石アイシャ様だわ。私にはここまで出来なかったの」

「そ、そうか。演技だったのか。素晴らしいな、これがアイシャの真実の愛を教えると言うことか」
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