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結婚式が終わってレイシャル様と妹のリリアンと一緒に事務所に戻ってきたが、ふたりは話があるといって執務室にも籠ってしまった。
俺はやることがないので、サロンのソファーに寝転がって今日の結婚式を思い出して一人反省会をしている。
(セリーヌにはもう少し明るいピンクの口紅でも良かったかもな・・・)
昔から手先が器用で料理や縫物も好きだった。ヘアメイクはたまたま妹にしてやったら好評で、暗殺者時代に隠れ家にさせてもらっていた娼館の娼婦達にもよく化粧をしたものだ。
(今日は気合入れて働いたから結構疲れた)
それにしても遅いなと考えていたら、紙とペンが見えたのでワイアットに手紙でも書くかとペンを手に取った。
“ワイアットへ
お元気ですか。ワイアットは毎日何を考えていますか。俺はワイアットに会えなくてとても寂しいです。毎晩寝る前になるとワイアットを思い出します。ハネムーン以来ワイアットの絶倫ぶりに1日1回だけとルールを決めたけど今なら朝まで許せる気分です。愛している ミカエル“
「くっく、なんてな~」
(そういえば暗号文のやり取りはしたことはあるけど、プライベートで手紙のやり取りはしたことがないな。恋人や配偶者に宛てた手紙ってみんな何を書くんだろ)
そんなことを考えていたら、強めのノックの音がしてレイシャル様が王宮に戻ると言い出した。
「リリアン・・・お前凄いな。何を言ったんだ?」
ミカエルはレイシャルにウエン王子と話し合ったらどうかと説得を続けていたが、レイシャルが首を縦に振ることはなかったのだ。
「さあ、早くミカエル行くわよ」
「お、おう。じゃあなリリアン。また遊びに来いよ」
急かすレイシャルの後を追いミカエルは事務所を後にした。
「あら、お兄ちゃん・・・ワイアット様への手紙を忘れているじゃない」
***
急いで辻馬車を拾い戻ってきたのはいいが、本来は許可もなく平民が王宮に入ることはできない。謁見の申し出をしても王族に会える確約もないのが普通だ。
「ミカエル・・・戻ってきたけどこれって入れるのかしら?」
「この前出掛けたときは王子達が迎えに来たからな・・・分からん」
「誰か知り合いが出てくるまで待った方がいいのかしら」
「とりあえず門まで行ってみようぜ」
ふたりが辻馬車を降り門番がいるところまで歩いていくと、門番がふたりに気付くと嬉しそうに話しかけてきた。
「レイシャル様、ミカエル様。お戻りですか?すぐに門を開けますね」
他の門番たちにも『お帰りなさい』と笑顔で迎えられ、あっさり門が開いたのだ。
「これって警備上どうなのでしょう?」
「まあ、入れたからいいんじゃないの」
「やっぱり侯爵家と結婚したミカエルの力なのかしら・・・やっぱり私もミカエルに敬語で話した方がいいのかしら」
「前にも言ったけど絶対やめてくれよな」
王宮を歩いていても会う次女や文官に『お帰りなさいませ』と声を掛けられ、咎めるものは誰もいない。
「お、ワイアットだ!」
廊下を歩いていると誰かが知らせに行ったのか、ワイアットが迎えに来てくれた。
「レイシャル様、よくお戻りいただきました」
「今戻りました。ワイアット様・・・ウエンは今どこに?」
「自室でお待ちですよ。さあ、行きましょう」
「ええ、ありがとう」
「ミカエルも元気そうだな」
「ああ、変わりないよ」
「新婚なのにふたりを引き離してしまったわね」
「ハネムーンまでいただけたのですから気にしないでください」
部屋にたどり着くとノックをしたワイアットに『入れ』と声が聞こえた。ウエンの声だ。
(なんだかウエンの声が久しぶりね・・・)
「ウエン王子、レイシャル様が戻られました」
「ああ、レイシャル・・・よく戻ったな」
「では、我々はこれで」
「え?もう行くの?」
「はい。我々は新婚ですから」
「ぐふぅ・・・そうね。ミカエル、2・3日ゆっくり休んで」
「ああ、レイシャル様も」
ワイアット様とミカエルが部屋を出ていくとウエンとふたりっきりになってしまった。
「ウエン・・・私話をするために戻ったの」
俺はやることがないので、サロンのソファーに寝転がって今日の結婚式を思い出して一人反省会をしている。
(セリーヌにはもう少し明るいピンクの口紅でも良かったかもな・・・)
昔から手先が器用で料理や縫物も好きだった。ヘアメイクはたまたま妹にしてやったら好評で、暗殺者時代に隠れ家にさせてもらっていた娼館の娼婦達にもよく化粧をしたものだ。
(今日は気合入れて働いたから結構疲れた)
それにしても遅いなと考えていたら、紙とペンが見えたのでワイアットに手紙でも書くかとペンを手に取った。
“ワイアットへ
お元気ですか。ワイアットは毎日何を考えていますか。俺はワイアットに会えなくてとても寂しいです。毎晩寝る前になるとワイアットを思い出します。ハネムーン以来ワイアットの絶倫ぶりに1日1回だけとルールを決めたけど今なら朝まで許せる気分です。愛している ミカエル“
「くっく、なんてな~」
(そういえば暗号文のやり取りはしたことはあるけど、プライベートで手紙のやり取りはしたことがないな。恋人や配偶者に宛てた手紙ってみんな何を書くんだろ)
そんなことを考えていたら、強めのノックの音がしてレイシャル様が王宮に戻ると言い出した。
「リリアン・・・お前凄いな。何を言ったんだ?」
ミカエルはレイシャルにウエン王子と話し合ったらどうかと説得を続けていたが、レイシャルが首を縦に振ることはなかったのだ。
「さあ、早くミカエル行くわよ」
「お、おう。じゃあなリリアン。また遊びに来いよ」
急かすレイシャルの後を追いミカエルは事務所を後にした。
「あら、お兄ちゃん・・・ワイアット様への手紙を忘れているじゃない」
***
急いで辻馬車を拾い戻ってきたのはいいが、本来は許可もなく平民が王宮に入ることはできない。謁見の申し出をしても王族に会える確約もないのが普通だ。
「ミカエル・・・戻ってきたけどこれって入れるのかしら?」
「この前出掛けたときは王子達が迎えに来たからな・・・分からん」
「誰か知り合いが出てくるまで待った方がいいのかしら」
「とりあえず門まで行ってみようぜ」
ふたりが辻馬車を降り門番がいるところまで歩いていくと、門番がふたりに気付くと嬉しそうに話しかけてきた。
「レイシャル様、ミカエル様。お戻りですか?すぐに門を開けますね」
他の門番たちにも『お帰りなさい』と笑顔で迎えられ、あっさり門が開いたのだ。
「これって警備上どうなのでしょう?」
「まあ、入れたからいいんじゃないの」
「やっぱり侯爵家と結婚したミカエルの力なのかしら・・・やっぱり私もミカエルに敬語で話した方がいいのかしら」
「前にも言ったけど絶対やめてくれよな」
王宮を歩いていても会う次女や文官に『お帰りなさいませ』と声を掛けられ、咎めるものは誰もいない。
「お、ワイアットだ!」
廊下を歩いていると誰かが知らせに行ったのか、ワイアットが迎えに来てくれた。
「レイシャル様、よくお戻りいただきました」
「今戻りました。ワイアット様・・・ウエンは今どこに?」
「自室でお待ちですよ。さあ、行きましょう」
「ええ、ありがとう」
「ミカエルも元気そうだな」
「ああ、変わりないよ」
「新婚なのにふたりを引き離してしまったわね」
「ハネムーンまでいただけたのですから気にしないでください」
部屋にたどり着くとノックをしたワイアットに『入れ』と声が聞こえた。ウエンの声だ。
(なんだかウエンの声が久しぶりね・・・)
「ウエン王子、レイシャル様が戻られました」
「ああ、レイシャル・・・よく戻ったな」
「では、我々はこれで」
「え?もう行くの?」
「はい。我々は新婚ですから」
「ぐふぅ・・・そうね。ミカエル、2・3日ゆっくり休んで」
「ああ、レイシャル様も」
ワイアット様とミカエルが部屋を出ていくとウエンとふたりっきりになってしまった。
「ウエン・・・私話をするために戻ったの」
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