婚約破棄されることは事前に知っていました~悪役令嬢が選んだのは~

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(本当に長かった!)

レイシャルの婚約破棄が決まった時点ですぐにでも婚約したかったが、運命に翻弄されているかのように時間がかかった。

(キースとミリタの約束を反故にしたせいで嫌味を言われるし、父上には身体に問題があるのかとまで言われる始末だ)

やっと婚約パーティーの日程が決まった時にはひとりで泣いた。レイシャルと同じベッドで寝ているのに手が出せない苦しみは、限界を通り過ぎ無の境地に到達した気もする。

アンヌが子供の頃のように一緒に寝ればいいと言った時『良く言った!』と内心歓喜した。もう手放したくなかったのもあるが、レイシャルが幼いときは本当に引っ付き虫だったのだ。どこに行くにも私の後ろを付いてきたし、寝るときもミノムシのように私の腕にすがって眠っていた。

昔も可愛くてしょうがなかったが、これからも昔のように私だけを見て欲しいと願ったのだ。そして、当時を思いださせるように腕枕をして頬にキスもした。

レイシャルは真っ赤になって恥ずかしがっていたが、あまり緊張をさせてはいけないと寝たふりをしてのが悪かった。環境が変わって寝れないのか、レイシャルが『結構筋肉が付いているのね』とか言って確かめるように胸や腕を触ってくるのだ。

(くすぐったい・・・駄目だ。耐えるんだ)

満足したレイシャルが次は寝位置が定まらず、ごそごそしていたが何か思い出したように腕に抱き着いてきた。確かに昔と同じ寝方だが、腕に感じるレイシャルの胸の感触に驚いた。子供の頃は胸などなかったからだ。

(もしかして、この柔らかい感触は胸なのか)

そしてレイシャルが寝ぼけて私の身体に足を絡めてきたり、胸を押し付けるように腕にしがみつくのだ。偶然手が股間に触れたときは、もう拷問かと思った。勃起しているのをレイシャルに悟られないように体をよじったり、寝返りを打ったり忙しくて寝れたものじゃない。

その日から毎朝レイシャルより早く起きて、元気な息子を見られないようにトイレに駆け込むのが日課になっている。

「あと半年・・・」

「ウエンどうしたの?」

「いや、幸せを噛み締めていた」

「ふっふっふ、私も幸せだわ」

「それは良かった。夜風が出てきた、そろそろ王宮に戻ろう」

「ええ、私たちの部屋に帰りましょう」

「今日は疲れただろう。朝まで熟睡できそうだ」

「ウエンも私も寝つきがいいからいつも熟睡じゃない。そういえばミリタが、普通は異性とベッドに寝れば襲われていると言っていたわ。初夜まで待ってくれるウエンの理性に感謝ね」

「っく、レイシャルを大切に思っているからね」

私の瞳の色に合わせたブルーのドレスを身にまとうレイシャルは、贔屓目なしにしても会場にいる誰よりも美しかった。

最近ではレイシャルを落とした者は世界を牛耳るとまで言われている。宰相のリーベルは国益を心配しているのか『レイシャル様と上手く行っているか?』としつこく聞いてくるが、私は純粋にレイシャルを愛している。

(もちろんレイシャルを大切に思っているが、結婚式まで半年もあるのか・・・何か理由を付けて部屋を別にした方がいいのかもしれない)

レイシャルは絶大なる信頼を私に向けている。そんなレイシャルの期待を裏切ることはできない。

(ミカエルがワイアットに1日1回までと言っていたな。祭りごとがあるときは3回までいいのか?普通は何回までなら許されるのだ。良く分からん)

最近騎士たちの訓練場に顔を出すと騎士団長は私を引き合いに出し『何をするにもウエン王子のように冷静になれ』と教え込んでいる。

(っふ、心の中は乱れまくっているがな)

団長の意図に反して気の毒そうにウエンを見つめる騎士達に、複雑な心境のウエンだった。
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