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私は精進する
歪みを作ろう
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「待っていてはいつになるか分かりません。しかも、出現したということは魔族がこちらに来たという印。新たな火種に対応することになります。ですから、その前にこちらで歪みを作り出した方が賢明かと」
「なるほど。して、歪みを作れる算段はあるのか?」
「歪みの一部を保存しております。そちらを増幅させれば発生させられると思います」
「あっぱれ!」
大将軍に背中を思い切り叩かれた。褒められているというより拷問である。
決行は一週間後になった。それまでに歪みの元を増幅出来るか確認しなければならない。しかも、新兵が入ったばかりの混乱状態で。
──教育係を決めておこ。
楊相信あたりでいいだろう。性格的にいじめないか心配だが、胡威風が前もって注意しておけば怪我人は出さないはず。彼は東軍一番隊の隊長を務めているので、新人たちがどの隊に配属されるか決まるまでの教育係にはもってこいだ。
さっそく翌日の鍛錬で楊相信を呼び出したら、しっぽを振って走り寄ってきた。
「──ということで、私がいない間は教育を頼む。二、三日の予定だが、延びる可能性もあるので、そのつもりでいてくれると有難い」
殊更丁寧に説明したところ、楊相信が急に震え出した。
「私めが胡威風将軍の代わりに教育監督を……つまりそれは将軍代理ということでしょうか!」
「そこまでは言っていない。新人の教育を頼むと言った。まだ入ったばかりで右も左も分からぬ者たち、出来る限り優しく教えなさい」
「承知致しました!」
分かったのか分かっていないのか、元気よく返事をして楊相信が去っていった。幾ばくかどころか多大なる不安に襲われるが、彼以外を指名したら今度は嫉妬で指名された兵士を襲わないとも限らない。全くもって扱いづらい部下である。
「さて」
胡威風は鍛錬の風景を眺めた後、参加せず自室へと戻った。歪みの増幅が出来るか試すためだ。
引き出しから小瓶を取り出し、散りばめられた護符の上に置く。蓋を開けると、禍々しい空気が中から伝わってきた。
護符を細く丸めて小瓶に入れる。少し染み込んだそれを取り出し、胡威風の霊力を注いだ。護符から歪みの元になる靄がどんどん湧き上がる。慌てて右手を翳して護符を消滅させる。
「出来た……」
予想以上に増幅速度が速くて焦ったが、この分なら人が通れる大きさの歪みを作ることが出来るだろう。恨国に行くことが現実味を帯びてきて、小瓶を持つ手が震えた。
怪我無く帰ることを祈るしかない。胡威風の耳に、聞き慣れた軽快音が響いた。
「なるほど。して、歪みを作れる算段はあるのか?」
「歪みの一部を保存しております。そちらを増幅させれば発生させられると思います」
「あっぱれ!」
大将軍に背中を思い切り叩かれた。褒められているというより拷問である。
決行は一週間後になった。それまでに歪みの元を増幅出来るか確認しなければならない。しかも、新兵が入ったばかりの混乱状態で。
──教育係を決めておこ。
楊相信あたりでいいだろう。性格的にいじめないか心配だが、胡威風が前もって注意しておけば怪我人は出さないはず。彼は東軍一番隊の隊長を務めているので、新人たちがどの隊に配属されるか決まるまでの教育係にはもってこいだ。
さっそく翌日の鍛錬で楊相信を呼び出したら、しっぽを振って走り寄ってきた。
「──ということで、私がいない間は教育を頼む。二、三日の予定だが、延びる可能性もあるので、そのつもりでいてくれると有難い」
殊更丁寧に説明したところ、楊相信が急に震え出した。
「私めが胡威風将軍の代わりに教育監督を……つまりそれは将軍代理ということでしょうか!」
「そこまでは言っていない。新人の教育を頼むと言った。まだ入ったばかりで右も左も分からぬ者たち、出来る限り優しく教えなさい」
「承知致しました!」
分かったのか分かっていないのか、元気よく返事をして楊相信が去っていった。幾ばくかどころか多大なる不安に襲われるが、彼以外を指名したら今度は嫉妬で指名された兵士を襲わないとも限らない。全くもって扱いづらい部下である。
「さて」
胡威風は鍛錬の風景を眺めた後、参加せず自室へと戻った。歪みの増幅が出来るか試すためだ。
引き出しから小瓶を取り出し、散りばめられた護符の上に置く。蓋を開けると、禍々しい空気が中から伝わってきた。
護符を細く丸めて小瓶に入れる。少し染み込んだそれを取り出し、胡威風の霊力を注いだ。護符から歪みの元になる靄がどんどん湧き上がる。慌てて右手を翳して護符を消滅させる。
「出来た……」
予想以上に増幅速度が速くて焦ったが、この分なら人が通れる大きさの歪みを作ることが出来るだろう。恨国に行くことが現実味を帯びてきて、小瓶を持つ手が震えた。
怪我無く帰ることを祈るしかない。胡威風の耳に、聞き慣れた軽快音が響いた。
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