悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

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断罪事件の真相

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 翌日、午前中シャーリングさんと書類仕事をしていると、今度はローベルハイム公爵家の使用人が手紙を届けにきた。痛む歯を抑えた痩せこけた男性は私から返事をもらえるまで帰ってくるなと言われたそうだ。 

 あれ?本当に公爵家で流行っているんだ歯痛。私にたいした闇魔法は使えない筈なのに。 

 そう………シリウスの後ろ楯を得られたあの日の夜。私は旦那さまにお姉さんが人を操る魔法が使えたかどうかを尋ねてみた。 

 結果はやはりと言うか……有りませんでしたー!

 傀儡魔法は、魔人クラスの闇魔法の強さ、魔力量じゃないと使えないそうです。 

 学園の時はミリヤ妃を僻み羨んだ周りがお姉さんに関係なく勝手にいじめをしていたようで。 
 おかしいと思ったよ。お姉さんがジャスティン王子ごとき取られたからって、嫉妬に狂うわけないもの。 
 ジャスティン王子は全てをお姉さんの所為にしたくて、操ったと騒ぎ。いじめを処罰されたくない学生たちはジャスティン王子に便乗してお姉さんの闇魔法で操られたと訴えたと。全部お姉さんの責任にして、胸が痛まないのかな?
  
 その後に起きた、ミリヤ妃凌辱未遂事件。 
 直接ごろつきたちを捕まえた旦那さまが言うには、ミリヤ妃を助け出した時、ごろつきたちはぼーっと立ち尽くし何の抵抗もしなかったそうだ。その部屋の中にお香の匂いが充満していて、ごろつきたちは記憶が曖昧だった。 
  
 その時は、まだ旦那さまは私が闇魔法で操ったと思っていたそうだけど、結婚してお姉さんが弱い闇魔法しか使えないことに気づいてからは、あの匂いはただのお香の匂いてはなく。何かの薬を気化させたものではと疑った。思考や記憶を奪うような強い薬。 
 今では、薬の匂い漂う中、唯一正常で無傷だったミリヤ妃の自作自演だと考えているそうで。検証しようにも四年近く前の話。使用した薬の残骸もなく、特定は難しいだろうとのこの。

 もし、本当に自作自演だったらお姉さん冤罪だよね?死刑にまでしようとしといてさー。今さら侍女になってなんてよく言えたものだよ。


 酷いって言ったら王様もそうだよ~。 
 人間のお姉さんに使えた闇魔法の力は対して強くなく、お姉さんが傀儡魔法を使えないことを知っていたのに、ジャスティン王子がミリヤ妃に乗り換えたことを許した。 
 更に、旦那さまは魔力が豊富で強いので産まれた子供も当然強くなる。お姉さんとの間に子供が産まれたら、強力な闇魔法使いになるかもしれないと、期待を込めてジャスティン王子の提案に乗ったみたい。 

 あんな、無害そうなぽやんとした顔してるのに。国益になるならどんなことでも利用しようとする姿勢は、施政者としては正しいのかもしれないけど、侮れない。
  
 今はジャスティン王子よりダニエル王子を立太子に押しているようだけど、国益を秤にかけたら簡単に覆りそう。国益の為なら、王命で公妾を命じかねない腹黒さ。タスクさんがタヌキ爺と例えた理由がわかる。 
  

 えっと、話しを戻すと……。 
 公爵家からのお手紙の内容は思っていた通りでした。貴族らしく回りくどく色々書いてあったけど。
 簡単に言うと『速やかにジャスティン王子の公妾になり、世継ぎの子供を産むように』でした。 
 一方的過ぎだし、お姉さんの気持ちは全く考えてない。 
 お姉さんと中身を交換してから何度か公爵家からの手紙を受け取った。どれも内容は似通っていて、『早く離婚しろ』とか、『公爵家に戻って子を産め』とか、気分悪くなる内容だった。 
 お姉さんの部屋の机の引き出しには封がそのままの手紙も何通もあった。気持ちはわかるよ。同じ内容なら読む価値ないもの。 
 同じ引き出しの奥の奥に、小さい白猫のぬいぐるみが隠すように入っていた。手乗りサイズで可愛らしい……お姉さんもしかして猫好きだったのかな? 
 旦那さまが猫科の獣人だったから公言出来なかったのかも……素直に言える性格なら、お姉さんと旦那さまの関係は少しは変わっていたのかもしれない。 
…きゅっと胸が切なくなる。 
 
「公爵家の人間なんて、塩でも撒いて追いだしゃあいいのによー」  
 マルセルさん襲撃事件で活躍したスージーさんは容赦がない。 

「ホッホッ、彼が悪いわけではありませんから」  
 顔色の優れない男性を憐れと思ったのか、シャーリングさんが暖かな紅茶を淹れてあげた。一瞬、呆気にとられた男性は涙ぐむと紅茶を受け取った。 

 なんだか、とても哀愁を誘うな~。 

 公爵家の望む色好い返事は書けないけど、ちゃんと返事の手紙を書いて持たせた。手紙の中身はミリヤ妃の内容と同じく……『お断りします』の一択しかないけど。 
 シャーリングさんが男性に二、三声を掛けてにこやかに送り帰していた。 
 
 そして、今日こそ旦那さまの代わりに留守番をするタスクさんたちを労おうと、料理長に頼んだ差し入れを受け取り準備を進める。
  
 そこにポヨンポヨンとお肉を揺らしミミさんがやって来た。確か今日の午前中はお休みだったはずだけど。 

「ミミさんっ。どうしたんですかー?」 
「奥様……今日息子と町に出ましたら気になることがありました」ゼイゼイと息を切らしてミミさんは続けた。ミミさんの息子さんは、町の中等学校に通っている。 

「うちの息子が……身なりの良い男に話しかけられ、獣人に割り良い仕事がある。獣人たちに有名なさる高貴なお方の元で働かないかと誘われまして」 

「ん?さる高貴なお方って、怪しさ大爆発ですねー?」  

「そうです。怪しんだ息子が、『それはマクガイヤ家の英雄シオン様ですか?違うならどこの家ですか?』っと尋ねたところ、『想像にお任せします』と逃げられました」 
  
 うわーっ、ハッキリ家名を言わないところが益々怪しいです。 
 念のためシャーリングさんに今、マクガイヤ家が働き手を募集中かどうか聞いたところ募集中していないそうです。

「うーん、困りますね。マクガイヤ家からの仕事の斡旋だと勘違いされますね」
 シャーリングさんが髭を撫で付け唸った。 

「奥様、申し訳ありませんが騎士団に行くなら、あたかもマクガイヤ家からのように、怪しい仕事を斡旋する男がいると副団長にお伝え下さい。すでに被害に遭った獣人が居るかもしれません。私は、町の古い知り合いの獣人に聞いてみます。  
 それから、ミミは、町の学校に同じように説明して、獣人の生徒に付いて行かないように注意喚起してもらって下さい」 
 テキパキとシャーリングさんに指示をもらい、私とミミさんは大きく頷いた。
 

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