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第六話 治療※
しおりを挟む私は震える手を伸ばして、血が流れている海翔の指に触れた。
「……海翔。一人にしちゃって、ごめんね」
あまりにも苦しそうで、あまりにも申し訳なくて。涙を流しながら彼の手を私に引き寄せた。
「葵……?」
目を細める彼の顔は見ていられず、彼の指を見る。嚙みついた痕が痛々しく、本当に強く噛んだのだと分かる。
……もし私が聖女なら、癒しの魔法みたいなものが使えるのだろうか。
軽く目を瞑って、心の中で念じてみる。海翔の傷を癒したい。不思議な力で、癒せるのなら、どうか。
すると、胸のあたりに温かいものを感じた。その力が指先に移っていって、そっと目を開ける。
「これは……癒しの魔法?」
呆然とした彼の声に、成功したことが分かった。傷がなくなっていて、元の綺麗な細い指に戻っている。
「でき、た……」
「ありがとう。すごいね、葵。癒しの魔法って、とても難しい魔法なんだよ。初めてでこんなにできるなんて、葵は天才だね」
海翔は優しく微笑んで、私の頭を撫でる。
「……かわいいなぁ」
撫でながらぼそりと呟かれ、私は頬に熱が集まるのを感じた。海翔は何度か私のことをかわいいと言っていたが、冗談のような言い方だった。でも、今の言葉は、自然と出たような感じで。無性に、恥ずかしい。
「ふふっ。葵、顔赤くなってる」
するりと頬を撫でられ、もっと顔が熱くなる。すると、海翔は翡翠の瞳をゆっくりと細めた。
「ぐちゃぐちゃにしてやりたい……うそ、うそだよ!」
海翔は慌てて手を振りながら笑っている。その笑顔は今まで見てきたのと同じように見えて心が安心するが、彼がその笑顔の裏で苦しんでいるのかと思うと……。
「……ちょっとだけ、なら」
無意識のうちに、そんな言葉が零れ落ちた。それは、こういうことをすることに覚悟ができたのか、海翔への同情だったのか、あるいは彼の切羽詰まった様子が私の中の何かに触れたからなのか。自分でも判別がつかない。
私の言葉を聞いた途端、海翔の顔が、ぱあっと輝いた。先ほどの苦痛の表情が嘘のように消え去っている。
「葵……!」
海翔は私の名を呼んで、まるで獲物を捕らえるかのように、喰いつくように私の唇に口づけを落とした。切望と、焦がれるような熱が込められていると伝わってくる。
深く、熱い口づけが繰り返される。私の口内を彼の舌が熱く探り、絡めとる。頭が真っ白になり、呼吸もままならないほど絡みとられる。抗うほど苦しくなるので、身を委ねるしかなかった。
彼の手が、ローブの裾からするりと潜り込んでくる。指が肌に触れ、背筋にゾクリとした感覚が走った。その指が私の敏感な部分に触れた瞬間、びくりと全身が震える。
「っ……ん……っ」
指先が優しく、私の秘部を弄り始めた。これまで感じたことのない種類の快感が、体の奥からじわりと広がり、混乱していた神経を覚醒させていく。
あまりにも激しい刺激に、頭の中が真っ白になった。思考が途切れ、理性が溶けていく。
「や、だ……」
かすれた声が、喉の奥から絞り出された。消え失せそうな弱々しい声。
私のこの言葉は、海翔の理性を繋ぎ止めるどころか、逆効果だったようだ。
彼は私の口づけをさらに深く、激しくした。同時に、服の下で動く指も、先程よりも一層激しく、容赦なく私の嬲り始める。快感と羞恥が混じり合って、私の思考をかき乱していく。
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