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第八話 痛み※
しおりを挟む海翔は痛みに喘ぐ私を見て笑みを深め、むしろ、刻み込むようにゆっくりと、深く私の中に入り込んでくる。まるで、私の身体の隅々まで、彼の存在をねじ込むかのように。
「いたぃ、っは……っ、ん……っ」
「力を抜いて。僕だけを感じるんだ……」
痛みに耐え切れず、口から嗚咽が漏れる。視界は涙でぼやけ、熱いものが頬を伝っていく。
海翔は私の手に指を絡める。彼の手は私よりも一回り大きく、力はひどく強い。ベッドに縫い付けられるように、手を強く抑えつけられる。
私は痛みの中、とにかく何かに縋りたかった。この痛みから救ってくれるのは、海翔だけ。その存在に、無意識に縋ってしまう自分がいた。私は押さえつけられた手に、精いっぱいの力を込める。
身体の奥深くに海翔のすべてが収まった瞬間、痺れるような感覚が走った。
「……やっと、君と、繋がれた」
耳元で、海翔の震える声が囁かれる。その声には、抑えきれない切望と喜びが込められていた。彼の言葉に、私の心臓がドクリと大きく脈打つ。
そして、海翔は私の中に深く入れたまま、ゆっくりと、腰を動かし始めた。ギシ、っとベッドが音を立てる。内側から突き上げられるような違和感に、私は思わず唇を噛みしめる。
しかし、海翔が動き続けるにつれて、その痛みは少しずつ、変化していった。
「……っひあっ!」
身体の奥からじわりと広がる熱。次第に強まる、心地の良い圧迫感。そして彼が動くたびに、身体の奥から湧きあがるような、甘く痺れるような感覚。
痛みは溶け、それは確実な快楽へと変わっていく。
呼吸が乱れ、意識が朦朧とする。海翔の翡翠の瞳とばっちり目が合って、彼が口元に笑みを浮かべているのがはっきりと見えた。
海翔の動きは、次第に激しさを増す。
私の奥に深く、何度も、何度も彼の大きなモノが突き入れられる。腰が軋み、頭が揺さぶられる。痛みが消え去り、今や全身を駆け巡るのは、ただ、彼の熱と、私自身の奥から湧き上がる抗えない快感だけだった。
「んっ……あぁ……っ!」
私の口からはとめどなく甘い喘ぎ声が漏れ出す。今や羞恥など感じている暇はなかった。海翔の瞳は熱を帯び、その表情は欲望に歪みながらもどこか恍惚としていた。
「すごいよ、葵。君の身体、こんなに感じるんだね……」
海翔は私の耳元に唇を寄せ、甘く優しい声で囁く。そんなこと、と否定したかったが、奥を突かれて甲高い声が出た。
「もっと欲しいって顔してる。欲しいなら、ちゃんと鳴いてみろよ」
彼のモノが的確に私の一番敏感な箇所を撫で上げるたびに、私は身を捩り、声を出してしまう。それはまるで、彼の言葉通りに鳴いているかのように……。
そして、その激しい動きの合間に、私の中へ、彼の熱い子種が何度も、何度も、注ぎ込まれていく。
「ほら、鳴けよ」
海翔の声が、耳元で熱く響いたその瞬間、彼は私の中の最も奥深い場所を、一気に突き上げた。
「っひ、ゃぁああああああっ!」
理性を突き破るような快感に、私の喉から、制御できない悲鳴にも似た声が爆発した。全身が震え、背中が弓なりに反り返る。
彼のモノが、今まで触れていなかった部分に触れ、ゾワッと全身に快感が巡った。
「ゃ、そこぉ……」
「ここ、きもちぃの? 分かった、かわいがってあげる」
海翔の声が、私の耳朶を甘く、ねっとりと舐めるように囁く。その言葉に込められた確かな愉悦と、獲物を完全に掌握したような自信が、私をさらに追い詰めた。
絶えず、狂おしいほどに腰を動かしながら、海翔は私の中に、彼の熱と魔力を注ぎ込み続ける。私の体は快感の波に翻弄され、もはや自分の意思で動くこともままならない。
その激しい営みの中、誰にも聞こえないほどの、しかし確かに紡がれた言葉が、私の鼓膜を震わせた。
「……愚かな神にも感謝しないとね」
彼の言葉の意味は、私には理解できなかった。
海翔はにこりと笑みを浮かべて、再び奥を突きあげる。私はただ、その快感の奔流に溺れることしかできなかった。
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