【R18】幼馴染と一緒に異世界転移しました。聖女の私が力を保つには、幼馴染としなくちゃいけない

ラム猫

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第二十話 呼び出し

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 海翔はしばらく私の髪に触れていたが、呟くように言った。

「……とはいえ、君は聖女だから、絶対に殿下としないとだめなんだよねぇ」

 どこか他人事のようなつぶやきだ。彼の言葉に、私は理解が追いつかない。

「え……どういう、こと?」

 思わず問い返すと、海翔はベッドの縁に腰掛け、私の手を握りながら説明を始めた。

「聖女の神聖力は、この世界の『闇』を浄化するために存在する。でも、その力を完全に覚醒させるには、聖女自身の『器』が完全に開かれ、この世界の『光』と結びつく必要があるんだ」

 彼は、淡々と続ける。

「この世界で、『光』を最も強く宿しているのは、王族だ。特に、最も神聖な血を引く王太子が、その象徴とされている。だから、聖女の器を開き、力を最大限に引き出すためには、殿下と『契り』を結ぶ必要があるんだ。この契りというのは……簡単にいうと、セックスだね」

 彼の言葉に、私の頭は混乱する。つまり、レオンハルト殿下と『契り』を結ぶ必要があるということだろうか。昨夜、海翔と行った行為が、今度は彼と……。

「……海翔以外と、しないといけないの?」

 思わず、そんな言葉が口から出た。初めて海翔にあんなことをされたばかりなのに、今度は会ったばかりの王子様と、同じことをしなければならないなんて。

 私の言葉を聞いた途端、海翔の顔が輝いた。

「それは、僕相手ならしても大丈夫ってこと? そういうことだよね。僕相手なら、いいんだ!」

 彼は私の手をぎゅっと握りしめ、まるでこの上ない褒め言葉をもらったかのように、心底嬉しそうに言った。その瞳には、子供のような純粋な喜びと、明確な愉悦が揺らめいている。

 そういう意図はなかったけど、確かにそういう風に聞こえてしまうかもしれない。困ったように海翔を見ると、彼は満足げな表情を浮かべたまま、首筋に顔を埋めてきた。

「ひゃ……っ」

 鼻先が触れたかと思うと、すぐに熱い吐息がかかる。そのまま、ねっとりとした舌が私の首筋を這いあがっていく感触に、全身が泡立った。ぞわり、と背筋に悪寒が走る。

「やめ……」

 思わず声を上げそうになるが、寸前で飲み込んだ。羞恥と、彼から放たれる圧倒的な熱に、なんとか声を抑え込む。昨晩、やめてとか嫌だとか言うと、海翔は余計にひどくしてきた。あまりそういったことは言わないほうがいいのかもしれない。

 それでも何もしなければ、このまま、彼の思うがままにされてしまう。どうにかして彼の気を逸らすことができないかと考えていたその時だった。

 コンコンコン、と扉が叩かれる音が部屋に響き渡った。

 海翔の動きがぴたりと止まる。

「*”カイト様。至急、お呼出しです!”*」

 扉の向こうから、切羽詰まった男性の声が聞こえてきた。

「*”魔物の群れが、南門を突破したとの報が入りました! 大至急いらしてくださいと、隊長様からの言伝です!”*」

 海翔は、私の首筋からゆっくりと顔を上げた。彼の表情には、心底面倒くさそうな色が浮かんでいる。まるで、大切な時間を邪魔された子供のように、不満げに眉をひそめた。

「*”……わかった。すぐに行く”*」

 低い声の返事の後に舌打ちのような小さな音が聞こえ、驚いて彼を見上げた。彼は私を見下ろしながら、優しい笑みを浮かべる。

「ごめんね、葵。せっかくいいところだったのに」

 彼はそう言って、私の唇に、深く、熱い口づけを落とした。その口づけには、まだ満たされない欲求と、私への強い執着が込められているように思えた。

「すぐに帰ってくるから。いい子で待っててね」

 そう囁くと、彼は私の頬を優しく撫で、ベッドから立ち上がった。扉を開け、騎士服の乱れも気にせず、彼は足早に部屋を出て行く。

 残された部屋には、海翔の匂いと彼の熱が、まだ残っているように感じた。
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