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第二十七話 勉強
しおりを挟む侍女達が持ってきてくれた本を見て、私は目を丸くした。
「これ……日本語で書かれてる」
「過去に、日本からの渡り人が、この世界について詳しく書き残してくれた書物だよ。とても助かるよね」
そう言って、海翔は本を開いた。
「沢山の渡り人がこの世界に現れて、それぞれの時代で大きな足跡を残しているんだって」
私は、彼が開いたページを読み上げる。
「剣聖アルフレッド。最も有名な渡り人と言っても過言ではない。当時魔王の脅威に晒されていた五百年前に転移してきて、その圧倒的な剣技で魔王軍を次々と打ち破り、最終的には魔王を討伐した。彼の剣術は現在の騎士団の基礎となり、多くの騎士が彼を武の神として崇めている」
「僕も剣を学んだけど、その基礎を作ったのがこの人だと思うと、尊敬するよ」
「大賢者エミ。アルフレッドの時代からおよそ二百年後に現れる。異世界の科学知識とこの世界の魔法を融合させて、画期的な魔法陣を数多く生み出した。特に、魔物の襲撃から守るための結界術や、人々の生活を豊かにする新たな農業技術の開発に貢献したと言われている。彼女の知識は、現在の魔術師ギルドや学術機関の礎となり、その功績は現代においても研究され続けている」
「この人が現れる以前は、結界魔法もひ弱なものだったらしいね。今では、強固な結界魔法が日常に溶け込むように存在している」
「癒しの聖女リアナ。エミの時代からおよそ百年後に現れる。この世界を覆っていた疫病を治癒し、荒廃した大地に再び生命の息吹を吹き込んだ。彼女の清らかな光は、人々の心を癒し、絶望に打ちひしがれていた人々に希望をもたらした。彼女の存在は、現在の教会が聖女の覚醒を強く願う理由の一つとなっている」
「葵と同じ、聖女の力を持っていた人だ。この人の癒しの力は、本当に強大だったみたい」
他にもたくさんの人の情報が載っている。海翔はその全てを把握しているのか、わざわざコメントを付けてくれる。
「海翔もこうやって名前が残るのかな」
私が本の文字を読みながら訪ねると、彼は笑って首を振った。
「僕には偉人たちのように目立った力はないよ。渡り人は彼ら以外にもたくさんいて、普通に一生を過ごしている人が大半だと言われている。まあ、葵の名前は、永遠に語り継がれていくだろうけどね。そうだな、僕は『聖女様の最愛の護衛』として名を刻みたい」
それは恥ずかしいからやめてほしい。
日中は異世界のことを勉強し、夜になると、私の身体は完全に海翔のものになる。
彼の腕に抱かれ、熱い口づけを交わし、その体を受け入れた。彼は時に優しく、時に獣のように激しく、私の全てを貪る。彼のものが私を満たし、その度に私は甘い声を漏らし、快楽の淵へと沈んでいく。彼の魔力は、私の身体と心を彼のものとして刻みつけるかのように、深く、深く、私の中に注ぎ込まれた。
「葵、愛してるよ」
耳元で囁かれる彼の甘い言葉は、どれだけ聞いても慣れることはなかった。
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