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第128話 父の回想録
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シャルルが10歳になった翌日、私はベッドの上で上半身を起こし本を読んでいた。
もう寿命だと思っていたのだが、昨日、ルーシャやシャルル達と色んな話をしたり、“あかべりーシャルル”を食べながらシャルルの嬉しそうな表情を見ていたら、不思議ともう少し生きられるのではと思えてきたのだ。
そして、以前から気になっていた男性の寿命の短さや、魔法が使えなくなった原因が何なのだろうかと、体調が良い時に古い書物を読んでいるのだ。
以前から少しずつ調べていたのだが、結論はやはり大戦までさかのぼることになる。
大陸内及び大陸間大戦は数百年続いたとあり、大戦が終わる数十年前には男性の若年層も戦争に参加していたという。
女性も魔法士として戦争に参加はしていたが男性と比べるほど多くは無かったようだ。
大戦期間中に男性がたくさん亡くなったので、必然的に子供、特に男性を増やそうと短期間で子供を誕生させる技術が発展していったみたいだった。
体外受精が一般的になったのもこの頃からで、男性と女性の間で“生殖行為”がほぼなくなったと記されている。
“生殖行為”…?
一体どんな行為なのだろう?
歴史書だからかそこまでは具体的に書かれていなかったが、とりあえずそうした技術の発展が今日の“誕生の儀”となっているのは分かった。
では、男性が魔法を使えなくなったのはどうしてだろう…。
大戦中の男性は魔法が使えたとある。
今では想像も出来ない、人を大量に殺傷できる攻撃的な魔法も使えていたようだ。
男性が突然魔法を使えなくなったわけではないだろう…。
となると、子供を誕生させる度に使えなくなっていったと言うのだろうか…。
安易に繰り返されてきた体外受精のために人類は退化したのではないだろうか。
「退化…かぁ(ボソッ)」
“生殖行為”というものが無くなったのも一つの要因になっているのかもしれないなぁ。
コンコン、コン。
部屋の扉がノックされた音がしたが返事をする前にガチャっと扉が開き、ルーシャが入ってきた。
『今日の体調はどう?』
『昨日はシャルルに付き合って、いつもより遅くまで起きていたみたいだけれど…』
「ああ、大丈夫。シャルルと遊んでたら元気をもらったみたいだよ」
『そう、良かった…』
「ん、どうしたんだ? 何かあったのかい?」
『シャルルも10歳になったし、あなたが寿命で亡くなる前に話しておこうと思うことがあるの…』
「なんだい? そんな神妙な面持ちをして…」
『実は、シャルルが生まれた直後に金色に輝きだしたの。そう、輝きだしたのっ!』
「はぁ? 何を言っているんだい」
それも2回も…。
『確かに信じてもらえないかもしれないわね。だから今までその場にいた者達だけで秘密にしていたというのもあるわ』
『でも、やっぱりあなたが亡くなってしまう前に知っておいて欲しかったの』
「……」
私は話を続けるように促します。
『あの子はこれまでの男性とはまったく違うはず…。もしかしたら寿命も長く、魔法だって使えるようになるかも知れない。そんな可能性が感じられるのよ』
「……そうか、話してくれてありがとう」
「男の子だったばかりに、私のように寿命が短いと考えると辛かったよ」
「それよりもいつかルーシャが一人で寂しい思いをするんじゃないかって…」
『ラルク…』
「昨日も思っていたんだ…。10歳にしては大きいし、弱々しくもなく本当にたくましく育っているなぁと。そうか…安心したよ」
ルーシャがそこまで言うのだったら、シャルルはきっと世界を変える男になるのだろう。
『ラルク、黙っていてごめんなさい…』
「今ちょうど、大陸間大戦からの歴史について本を読んでいたんだ。なぜ男性の寿命が短くて、魔法も使えなくなったとかね…」
「ルーシャの話を聞いていると、本当にシャルルはこれらの問題を解き明かしてくれる男になってくれるのかもしれないね」
『そうだと良いわね…』
「僕は君やシャルルの行く末を見ることは出来ないけれど、ルーシャ、頼んだよ…」
話を終えるとルーシャは部屋を出て行きました。
少し疲れたのでベッドに横になり、シャルルが“男”になるのを見届けるぞと思いながら目を瞑るのでした。
もう寿命だと思っていたのだが、昨日、ルーシャやシャルル達と色んな話をしたり、“あかべりーシャルル”を食べながらシャルルの嬉しそうな表情を見ていたら、不思議ともう少し生きられるのではと思えてきたのだ。
そして、以前から気になっていた男性の寿命の短さや、魔法が使えなくなった原因が何なのだろうかと、体調が良い時に古い書物を読んでいるのだ。
以前から少しずつ調べていたのだが、結論はやはり大戦までさかのぼることになる。
大陸内及び大陸間大戦は数百年続いたとあり、大戦が終わる数十年前には男性の若年層も戦争に参加していたという。
女性も魔法士として戦争に参加はしていたが男性と比べるほど多くは無かったようだ。
大戦期間中に男性がたくさん亡くなったので、必然的に子供、特に男性を増やそうと短期間で子供を誕生させる技術が発展していったみたいだった。
体外受精が一般的になったのもこの頃からで、男性と女性の間で“生殖行為”がほぼなくなったと記されている。
“生殖行為”…?
一体どんな行為なのだろう?
歴史書だからかそこまでは具体的に書かれていなかったが、とりあえずそうした技術の発展が今日の“誕生の儀”となっているのは分かった。
では、男性が魔法を使えなくなったのはどうしてだろう…。
大戦中の男性は魔法が使えたとある。
今では想像も出来ない、人を大量に殺傷できる攻撃的な魔法も使えていたようだ。
男性が突然魔法を使えなくなったわけではないだろう…。
となると、子供を誕生させる度に使えなくなっていったと言うのだろうか…。
安易に繰り返されてきた体外受精のために人類は退化したのではないだろうか。
「退化…かぁ(ボソッ)」
“生殖行為”というものが無くなったのも一つの要因になっているのかもしれないなぁ。
コンコン、コン。
部屋の扉がノックされた音がしたが返事をする前にガチャっと扉が開き、ルーシャが入ってきた。
『今日の体調はどう?』
『昨日はシャルルに付き合って、いつもより遅くまで起きていたみたいだけれど…』
「ああ、大丈夫。シャルルと遊んでたら元気をもらったみたいだよ」
『そう、良かった…』
「ん、どうしたんだ? 何かあったのかい?」
『シャルルも10歳になったし、あなたが寿命で亡くなる前に話しておこうと思うことがあるの…』
「なんだい? そんな神妙な面持ちをして…」
『実は、シャルルが生まれた直後に金色に輝きだしたの。そう、輝きだしたのっ!』
「はぁ? 何を言っているんだい」
それも2回も…。
『確かに信じてもらえないかもしれないわね。だから今までその場にいた者達だけで秘密にしていたというのもあるわ』
『でも、やっぱりあなたが亡くなってしまう前に知っておいて欲しかったの』
「……」
私は話を続けるように促します。
『あの子はこれまでの男性とはまったく違うはず…。もしかしたら寿命も長く、魔法だって使えるようになるかも知れない。そんな可能性が感じられるのよ』
「……そうか、話してくれてありがとう」
「男の子だったばかりに、私のように寿命が短いと考えると辛かったよ」
「それよりもいつかルーシャが一人で寂しい思いをするんじゃないかって…」
『ラルク…』
「昨日も思っていたんだ…。10歳にしては大きいし、弱々しくもなく本当にたくましく育っているなぁと。そうか…安心したよ」
ルーシャがそこまで言うのだったら、シャルルはきっと世界を変える男になるのだろう。
『ラルク、黙っていてごめんなさい…』
「今ちょうど、大陸間大戦からの歴史について本を読んでいたんだ。なぜ男性の寿命が短くて、魔法も使えなくなったとかね…」
「ルーシャの話を聞いていると、本当にシャルルはこれらの問題を解き明かしてくれる男になってくれるのかもしれないね」
『そうだと良いわね…』
「僕は君やシャルルの行く末を見ることは出来ないけれど、ルーシャ、頼んだよ…」
話を終えるとルーシャは部屋を出て行きました。
少し疲れたのでベッドに横になり、シャルルが“男”になるのを見届けるぞと思いながら目を瞑るのでした。
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