【完結】全てが嫌いな不憫Ωの少年が初恋相手のスパダリαに愛される？ふざけんなお前のことなんか大っ嫌いだ！

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傷 れおんside

気絶してしまった周を抱えて車に乗り込む。

「村重、頼む。急いで病院へ。」

どうしたらこんなにボロボロになるんだ。この間会った時は痩せてはいたがこんなに怪我なんてなかった。
出てってしまった時も怒らせてしまったんだと時間をおいてまた会いに行こうと思っていたのに。
いると思っていたここらへんで1番大きい私立学校にもいないし、近隣の学校にもいない。

こんなことなら、あの時追いかけていればよかったのに。
後悔で頭がパンクしそうだ。

熱も高いし、顔も体も痣だらけ。
それにガリガリだ。折れてしまいそうなくらい。

「村重、病院に着いたら人を集めて猫の捜索をしてくれないか？サバトラと茶トラの子猫2匹だ。必ず見つけてくれ。」


「かしこまりました。・・・・その方が、坊ちゃまが昔からおっしゃっていた方ですか？」

「うん。俺の初恋の人。」


幼稚園の時、出会ってすぐ一目惚れした。離れていた間もずっと好きで、再開できて嬉しかったのに、周はあのころと違っていた。

全てを諦めたような目をしていて、今にでもいなくなってしまいそうな儚さがあった。

日本に戻ってきたのは父さんの仕事の拠点が日本に戻るから。
アメリカで大学まで飛び級で卒業してしまった俺は高校に行く必要なんてなかったが、行っていた幼稚園の高等部に入れば周が入ると思って高校に通うことにしたんだ。

日本に来て最初に手伝った仕事は警察と手を組み勝俣という男の罪を暴くことだった。
俺の家は会社経営が主だが、政府からの依頼で他の財閥の不正を暴く仕事もしている。アメリカにいる間は父さんの弟がその仕事を請け負っていたが、少しずつ俺にもその仕事が回ってくる。
その資料で周が勝俣の嫁であることを知った。

嫉妬でおかしくなりそうだった。
こんなに好きなのに周はもう誰かの手に渡ってしまった。
悔しくて仕方なかった。

摘発して、周を元気づけたかったのに、周がヤるの？とか言ってくるからつい体を大事にって言って、周を怒らせた。

その時周が言っていたことが気になり、周の実家を今調べているところだ。
でも、それより先にすることがあったんだ。周をもっと早く助け出さなければいけなかったのに。俺は無能だ。

「坊ちゃま、着きました。」

「ありがとう、猫のこと、よろしくね。」

「はい。帰りはお迎えに参りますので。」

医者と看護師が待機していてすぐに治療が始まった。

「南様、緊急手術の必要があります。」

「・・そんなにひどいのか。」

「腹部打撲により内臓が傷ついて出血しています。1秒でも早く手術が必要です。」

「・・・頼む。俺の大事な人なんだ。」

「全力を尽くします。」

周、頼む。生きてくれ。