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「…………?」
例えお胸が無かったとしても、それ以外のところで極上の悦びを味わわせてあげる。だから全てを僕に任せて……そう思ったのも束の間、今度は下半身をまさぐる右手に触れた違和感に思わずフリーズ、真顔になった。
「えっ……と……」
これは、一体、何なんだろう?
本来ならば有るはずのない感触が手の平に伝わる気がする。試しに指を動かしてみると、やはり感じるムニュっとした柔らかい感じ。
「…………」
なんかー……女の子には、あり得ないものがある気がするんですけどー……。
頭に過ぎる可能性に、慌てて首を左右にブンブン。それでも確かに触れた指先に伝わる感触が、消えて無くなる事は無さそうで。なんか、色々考えるのが辛いから今すぐにでも現実逃避がしたくなる。
想像したくない事ばかりが次々と浮かび上がるのをどうにかしたい。その気持ちからか、気が付けば考える事を放棄で頭の中は真っ白に。それくらい、今、こうして直面している現実を受け止めたくないと心が必死に抵抗を試みてしまうのだ。
「これってどういうことなのかなぁ?」
でも、幾ら考えたところで彼女の股の間にソレがあるのは事実なワケだし、そもそも『彼女』は『彼女』ですら無かったという事実の方が現実なのかもしれなくて、もう、ホント、泣きそう。
「う……んっ…」
僕の下で彼女が小さく呻くき瞼を開く。でも、あまりにも想定外の出来事に固まっちゃってたから、相手が起きちゃったことに気づけなかったんだ。
「……誰?」
「うわっ!?」
予想外の方向から上がる声に思わず肩が跳ねる。擦った声を出しながら、後ろに後ずさると、ゆっくりと身体を起こした彼女? が訝しげに僕を睨んでいた。
「なっ……どろ……」
『わーっ! わーっ! わーっ!』
言いたいことはもの凄く分かる! でも、それはかなり拙いんです!!
今すぐにでも大声を出して家の人を呼びそうな雰囲気がある彼女の口を、慌てて両手で塞ぐと、僕は必死にこう訴えた。
「声を出さないで!」
そうは言っても素直に『分かった』と頷けるかと言うと、そんなことは無いだろう。当然、彼女の反応は恐怖と不安と訳が分からない……みたいなのが混ざった表情で、怯えるように僕を見たている。ただ、激しく抵抗をするつもりはないらしく、暫く固まった後、僕の言葉に応じるようにコクンと小さく頷いてくれた。
「……で、アンタ、誰?」
塞いでいた彼女の口から両手を話すと、開口一番言われたのはそんな一言。もの凄く的を射た質問で思わず苦笑が出ちゃったよ。
「えーっと……僕、インキュバスです」
「インキュバス?」
素直にその質問に答えた途端、彼女の眉間に深い皺が寄ってしまった。
「ハイ。そうです。悪魔なんデス……」
一体何が悪かったんだろう? 僕としては本当のことを言っただけのに、恐怖に怯えて居たはずの彼女の表情はあっと言う間に曇り空。それどころか、僕に大して軽蔑を含んだ視線が容赦無く投げかけられている気がする。
暫く互いに無言で見つめ合う時間が流れてるんだけど、この沈黙が何よりも辛い! お願いだから何か言って欲しいんですがー!!
「……アンタ、もしかして、頭ヤバい人?」
漸く何かを察したのだろうか。彼女が今度はそんなことを呟いた。と、同時に手探りで掴んだ小さな四角の物体。一体何をするんだろうと不思議そうにその行動を見守っていると、徐に明かりの灯ったソレの画面を叩く動作を始める。
「……一体、何してるんですか?」
「ケーサツを呼ぶんだよ」
そう言われた瞬間、僕の体は勝手に動いてました。
「ケーサツ呼んでも意味ないですから!」
その動作は驚くほど早く、気が付けば光が溢れる箱を反射的に奪っちゃってます、僕。
「よく見てください! 頭に角が有るでしょ! 耳だって尖ってるし! ほらほら、尻尾だってアリマス。翼だって出せるんですよ! 僕、人間じゃないから!」
何をこんなに必死に訴えているんだろう。人間相手に、自分がインキュバスだってここまで必死に説明した事なんて無いから、どうしていいのか分からない。それでも、この状況に第三者が加わるノだけは何としてでも避けたいと思う自分も居て、とにかくここは穏便にお願いしますと、必死に彼女に訴えかけてしまう。
「それって、コスプレか何かだろ?」
それでも彼女は、僕の言うことなんて全然信じてくれなかった。それどころか、僕の格好が格好を変えてキャラクターを楽しむイベントの延長みたいなものだと決めつけ、自慢の角や可愛らしい耳、愛嬌のある尻尾なんかを容赦無く引っ張ったりする。
「痛たたたっ!」
幾ら何でもこの仕打ちはあんまりです!
確かに無言で寝込みを襲ったのは僕ですけど、僕だって痛覚というものはあります! こんなに容赦無く引っ張られると、痛くて涙が出て来ちゃうので、ホント、勘弁して欲しいですー!!
「良くできてるなぁ、コレ。どうやって作ったんだよ?」
僕の(心の)叫びなんてお構いなしに、彼女は触った感覚を確かめながら独り言を呟いている。これだけ確かめたのに、まだ僕の角や尻尾が偽物だと思っているのだろうか。
「コスプレなんかじゃないです! ホンモノなんですってば! 痛っ!」
何度も何度も嘘じゃない事を必死で訴えて小一時間。漸く彼女の手から僕の可愛い角や尻尾が解放さえるまで、結構時間がかかってしまいました。
「ふーん……」
未だ彼女は納得出来ていないみたいだけど、これ以上は僕の方が無理! うー……引っ張られたトコがヒリヒリするよぅ……。
「で、その悪魔が何の用な訳?」
痛みでしょんぼりしてしまった自慢の尻尾を労っていると、目の前に座る彼女が唐突にそんなことを聞いてくる。
「はぁ……それがですね……」
彼女からしてみたら、その質問は当然のことだろう。で、でもですね……気のせいでしょうか? 彼女の態度がガラリ変わった気がするのは……。
で。
気が付いたらこんな状況。今、僕は、何故だか分かりませんが、お説教を受けてるみたいに正座をさせられています。目の前にはちょっと怖い雰囲気の彼女。……正直に言うと、とても居心地が悪い……です、ハイ。
「えーっと……僕たちのお仕事は色々とあるんですけれども、インキュバス的な悪魔のお仕事っていうのは主に、人間の女の人とエッチすることなんですよね。それでー……そのー……」
彼女が悪魔についてどれほど興味が有ったり理解を示したりがあるかは分からないが、今日日色んな情報が飛び交っている世の中だ。流石に悪魔がどういうものなのかくらいは、ざっくりした説明でも理解してくれるはず。そう期待して大雑把に説明してみたところ、彼女は意外にも素直にそれを受け止めてくれたようだった。
「俺んとこに夜這いに来たと?」
その言葉に僕は素直に頷いて見せる。
「まぁ、ソンナトコロデス」
「ふぅん……」
僕の言葉に彼女は小さく呟いただけで、それ以上は何も言わず黙ってしまった。やたらと重たい沈黙が部屋を支配するせいで、益々この場に居づらい僕は、どうにかしてここから逃げ出したい衝動に駆られる。とても気まずい雰囲気。この状況は非常に居心地がよろしくないのですが、どうすればここから出て行けるんだろう。
「残念だったな」
窓の方を見ながら一人そわそわとしていると、彼女が唐突に口を開き意地悪な笑みを浮かべてみせた。
「へ?」
「俺は男だ」
何となく分かっては居たけれど、改めてそう言われると再び思考回路が停止フラグ。あなた今、何と仰いましたか? 確か……ハッキリと、自分は男だ……と? そう仰いましたか?
「えぇぇえっっ!?」
そりゃね! 下半身にないはずの感触がある時点で何となく察してはいたけれどもさ!!
それでも彼女からその言葉を聞きたいなんて、僕はこれっぽっちも願っては居ませんし、なんなら彼女が女であって欲しかったとすら思ってたりもしましたよ!
それでも現実はどこまでも残酷なもので、彼女だと思っていた彼は、面白くないという表情を浮かべながら僕を睨み付け悪態を吐いた。
「何だよ、その態度」
確かに勘違いしたのは僕がわるいんですけど、今、目の前で見せるムッとした彼の表情なんて、僕の目には入っていません。
「……で、でも……」
僕が彼の事を女性だと勘違いしたのはちゃんと理由があるんです! だって、僕、数日前にちゃんと見たんだよ? ピンクのゆるふわワンピースがとても良く似合っていた彼女の姿を。
だからてっきり彼ではなく彼女だと思っていたんだけど……。
「オイ!」
「はへっ?」
僕が一人で考え事をしていたら、いつの間にか直ぐ前に迫る彼女の顔。余りにも至近距離に好みの顔が現れたため、思わずびくっとして変な声が出てしまったじゃないですか。
「ななな、何ですか!!」
幾ら性別が女性ではなかったとしても、元々この人の顔は僕の好みにピンポイントなのです。やっぱり好き! 堪んない! だから、こんな風に迫られると否が応でもドキドキしてしまう。あー……もう、無理。さっきから心臓バクバク言っちゃってるよぉ……辛い。
「勝手にテメェの世界入ってんじゃねーよ」
でも、僕に対して恐怖を感じなくなった彼はどこまでも塩対応を貫くようで、考え事をしていた僕の意識を、容赦無く現実へと引き戻してくれる。
「す、すいません」
反射的にそう謝り顔を伏せてしまうのは、今の状況的に考えて僕の立場がすこぶる悪いからだ。包み隠さず説明したんだから、そろそろ解放して欲しいと肩を落とすと、今度はこんな質問をされたのだった。
「で? アンタ、俺に何したわけ?」
怒っている訳では無さそうだけど、文句は言いたそうな雰囲気。そんな気配を隠すことなく僕を睨み付けている彼女の声は、どこまで低く恐ろしい。その問いに答えを返さないと許さないとでも言うように睨み付けられると、僕は益々小さくなることしか出来ず、段々泣きたくなってきた。
「で。俺に何をしたのかって聞いてるんだけど?」
その問いには答えないとダメですか? やっぱり。
これ、答えたら絶対ヤバイフラグ立ってますよね!? ね!!
例えお胸が無かったとしても、それ以外のところで極上の悦びを味わわせてあげる。だから全てを僕に任せて……そう思ったのも束の間、今度は下半身をまさぐる右手に触れた違和感に思わずフリーズ、真顔になった。
「えっ……と……」
これは、一体、何なんだろう?
本来ならば有るはずのない感触が手の平に伝わる気がする。試しに指を動かしてみると、やはり感じるムニュっとした柔らかい感じ。
「…………」
なんかー……女の子には、あり得ないものがある気がするんですけどー……。
頭に過ぎる可能性に、慌てて首を左右にブンブン。それでも確かに触れた指先に伝わる感触が、消えて無くなる事は無さそうで。なんか、色々考えるのが辛いから今すぐにでも現実逃避がしたくなる。
想像したくない事ばかりが次々と浮かび上がるのをどうにかしたい。その気持ちからか、気が付けば考える事を放棄で頭の中は真っ白に。それくらい、今、こうして直面している現実を受け止めたくないと心が必死に抵抗を試みてしまうのだ。
「これってどういうことなのかなぁ?」
でも、幾ら考えたところで彼女の股の間にソレがあるのは事実なワケだし、そもそも『彼女』は『彼女』ですら無かったという事実の方が現実なのかもしれなくて、もう、ホント、泣きそう。
「う……んっ…」
僕の下で彼女が小さく呻くき瞼を開く。でも、あまりにも想定外の出来事に固まっちゃってたから、相手が起きちゃったことに気づけなかったんだ。
「……誰?」
「うわっ!?」
予想外の方向から上がる声に思わず肩が跳ねる。擦った声を出しながら、後ろに後ずさると、ゆっくりと身体を起こした彼女? が訝しげに僕を睨んでいた。
「なっ……どろ……」
『わーっ! わーっ! わーっ!』
言いたいことはもの凄く分かる! でも、それはかなり拙いんです!!
今すぐにでも大声を出して家の人を呼びそうな雰囲気がある彼女の口を、慌てて両手で塞ぐと、僕は必死にこう訴えた。
「声を出さないで!」
そうは言っても素直に『分かった』と頷けるかと言うと、そんなことは無いだろう。当然、彼女の反応は恐怖と不安と訳が分からない……みたいなのが混ざった表情で、怯えるように僕を見たている。ただ、激しく抵抗をするつもりはないらしく、暫く固まった後、僕の言葉に応じるようにコクンと小さく頷いてくれた。
「……で、アンタ、誰?」
塞いでいた彼女の口から両手を話すと、開口一番言われたのはそんな一言。もの凄く的を射た質問で思わず苦笑が出ちゃったよ。
「えーっと……僕、インキュバスです」
「インキュバス?」
素直にその質問に答えた途端、彼女の眉間に深い皺が寄ってしまった。
「ハイ。そうです。悪魔なんデス……」
一体何が悪かったんだろう? 僕としては本当のことを言っただけのに、恐怖に怯えて居たはずの彼女の表情はあっと言う間に曇り空。それどころか、僕に大して軽蔑を含んだ視線が容赦無く投げかけられている気がする。
暫く互いに無言で見つめ合う時間が流れてるんだけど、この沈黙が何よりも辛い! お願いだから何か言って欲しいんですがー!!
「……アンタ、もしかして、頭ヤバい人?」
漸く何かを察したのだろうか。彼女が今度はそんなことを呟いた。と、同時に手探りで掴んだ小さな四角の物体。一体何をするんだろうと不思議そうにその行動を見守っていると、徐に明かりの灯ったソレの画面を叩く動作を始める。
「……一体、何してるんですか?」
「ケーサツを呼ぶんだよ」
そう言われた瞬間、僕の体は勝手に動いてました。
「ケーサツ呼んでも意味ないですから!」
その動作は驚くほど早く、気が付けば光が溢れる箱を反射的に奪っちゃってます、僕。
「よく見てください! 頭に角が有るでしょ! 耳だって尖ってるし! ほらほら、尻尾だってアリマス。翼だって出せるんですよ! 僕、人間じゃないから!」
何をこんなに必死に訴えているんだろう。人間相手に、自分がインキュバスだってここまで必死に説明した事なんて無いから、どうしていいのか分からない。それでも、この状況に第三者が加わるノだけは何としてでも避けたいと思う自分も居て、とにかくここは穏便にお願いしますと、必死に彼女に訴えかけてしまう。
「それって、コスプレか何かだろ?」
それでも彼女は、僕の言うことなんて全然信じてくれなかった。それどころか、僕の格好が格好を変えてキャラクターを楽しむイベントの延長みたいなものだと決めつけ、自慢の角や可愛らしい耳、愛嬌のある尻尾なんかを容赦無く引っ張ったりする。
「痛たたたっ!」
幾ら何でもこの仕打ちはあんまりです!
確かに無言で寝込みを襲ったのは僕ですけど、僕だって痛覚というものはあります! こんなに容赦無く引っ張られると、痛くて涙が出て来ちゃうので、ホント、勘弁して欲しいですー!!
「良くできてるなぁ、コレ。どうやって作ったんだよ?」
僕の(心の)叫びなんてお構いなしに、彼女は触った感覚を確かめながら独り言を呟いている。これだけ確かめたのに、まだ僕の角や尻尾が偽物だと思っているのだろうか。
「コスプレなんかじゃないです! ホンモノなんですってば! 痛っ!」
何度も何度も嘘じゃない事を必死で訴えて小一時間。漸く彼女の手から僕の可愛い角や尻尾が解放さえるまで、結構時間がかかってしまいました。
「ふーん……」
未だ彼女は納得出来ていないみたいだけど、これ以上は僕の方が無理! うー……引っ張られたトコがヒリヒリするよぅ……。
「で、その悪魔が何の用な訳?」
痛みでしょんぼりしてしまった自慢の尻尾を労っていると、目の前に座る彼女が唐突にそんなことを聞いてくる。
「はぁ……それがですね……」
彼女からしてみたら、その質問は当然のことだろう。で、でもですね……気のせいでしょうか? 彼女の態度がガラリ変わった気がするのは……。
で。
気が付いたらこんな状況。今、僕は、何故だか分かりませんが、お説教を受けてるみたいに正座をさせられています。目の前にはちょっと怖い雰囲気の彼女。……正直に言うと、とても居心地が悪い……です、ハイ。
「えーっと……僕たちのお仕事は色々とあるんですけれども、インキュバス的な悪魔のお仕事っていうのは主に、人間の女の人とエッチすることなんですよね。それでー……そのー……」
彼女が悪魔についてどれほど興味が有ったり理解を示したりがあるかは分からないが、今日日色んな情報が飛び交っている世の中だ。流石に悪魔がどういうものなのかくらいは、ざっくりした説明でも理解してくれるはず。そう期待して大雑把に説明してみたところ、彼女は意外にも素直にそれを受け止めてくれたようだった。
「俺んとこに夜這いに来たと?」
その言葉に僕は素直に頷いて見せる。
「まぁ、ソンナトコロデス」
「ふぅん……」
僕の言葉に彼女は小さく呟いただけで、それ以上は何も言わず黙ってしまった。やたらと重たい沈黙が部屋を支配するせいで、益々この場に居づらい僕は、どうにかしてここから逃げ出したい衝動に駆られる。とても気まずい雰囲気。この状況は非常に居心地がよろしくないのですが、どうすればここから出て行けるんだろう。
「残念だったな」
窓の方を見ながら一人そわそわとしていると、彼女が唐突に口を開き意地悪な笑みを浮かべてみせた。
「へ?」
「俺は男だ」
何となく分かっては居たけれど、改めてそう言われると再び思考回路が停止フラグ。あなた今、何と仰いましたか? 確か……ハッキリと、自分は男だ……と? そう仰いましたか?
「えぇぇえっっ!?」
そりゃね! 下半身にないはずの感触がある時点で何となく察してはいたけれどもさ!!
それでも彼女からその言葉を聞きたいなんて、僕はこれっぽっちも願っては居ませんし、なんなら彼女が女であって欲しかったとすら思ってたりもしましたよ!
それでも現実はどこまでも残酷なもので、彼女だと思っていた彼は、面白くないという表情を浮かべながら僕を睨み付け悪態を吐いた。
「何だよ、その態度」
確かに勘違いしたのは僕がわるいんですけど、今、目の前で見せるムッとした彼の表情なんて、僕の目には入っていません。
「……で、でも……」
僕が彼の事を女性だと勘違いしたのはちゃんと理由があるんです! だって、僕、数日前にちゃんと見たんだよ? ピンクのゆるふわワンピースがとても良く似合っていた彼女の姿を。
だからてっきり彼ではなく彼女だと思っていたんだけど……。
「オイ!」
「はへっ?」
僕が一人で考え事をしていたら、いつの間にか直ぐ前に迫る彼女の顔。余りにも至近距離に好みの顔が現れたため、思わずびくっとして変な声が出てしまったじゃないですか。
「ななな、何ですか!!」
幾ら性別が女性ではなかったとしても、元々この人の顔は僕の好みにピンポイントなのです。やっぱり好き! 堪んない! だから、こんな風に迫られると否が応でもドキドキしてしまう。あー……もう、無理。さっきから心臓バクバク言っちゃってるよぉ……辛い。
「勝手にテメェの世界入ってんじゃねーよ」
でも、僕に対して恐怖を感じなくなった彼はどこまでも塩対応を貫くようで、考え事をしていた僕の意識を、容赦無く現実へと引き戻してくれる。
「す、すいません」
反射的にそう謝り顔を伏せてしまうのは、今の状況的に考えて僕の立場がすこぶる悪いからだ。包み隠さず説明したんだから、そろそろ解放して欲しいと肩を落とすと、今度はこんな質問をされたのだった。
「で? アンタ、俺に何したわけ?」
怒っている訳では無さそうだけど、文句は言いたそうな雰囲気。そんな気配を隠すことなく僕を睨み付けている彼女の声は、どこまで低く恐ろしい。その問いに答えを返さないと許さないとでも言うように睨み付けられると、僕は益々小さくなることしか出来ず、段々泣きたくなってきた。
「で。俺に何をしたのかって聞いてるんだけど?」
その問いには答えないとダメですか? やっぱり。
これ、答えたら絶対ヤバイフラグ立ってますよね!? ね!!
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