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光りもたらす者

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「神は……どんな罪も、許してくださるのでしょうか?」
 黒田さんは目を伏せ、言いにくそうにボソボソと言葉を落とした。


 ここは福音教会。山間にある小さな集落の中にある小さな教会。
 私、明澄清介あけずみせいすけはここで神にお仕えしている。

 両親は信心深い信徒で私も幼児の頃に両親に見守られ洗礼を受けた。
 教会に通い、両親と共にボランティアに進んで参加し、十代の頃には教会の合唱隊に入った。聖書は私にとって愛読書であり、世間のクリスマスは我が家にとって神聖な日だった。
 両親の徹底した教育の賜物か、私自身の信仰心からか、はたまた世間と隔離されていた環境からか。いや、その全てなのだろう。私は信仰を疑うことなく真っ直ぐ大人になり、自らの希望でこの仕事に就いた。

 心穏やかに平和を愛し、人を慈しむことの素晴らしさを広め共に学ぶ。
 私はこの仕事を誇りに思い愛している。

 多くの村人はいつも日曜日の礼拝にこの教会へ顔を出す。仕事のある平日に訪れる人は少ないとは言え、お年寄りや、小さな子供たちとお母さんが顔を見せてくれる。教会は憩いの場にもなっている。朝の礼拝を終え、皆を見送りがてら眩しい日差しの中で少しのおしゃべり。

「へぇ、偉いね。お母さんもお花さんもエミちゃんにお水もらって嬉しかったと思うよ」
「うん! 神父様またね!」

 繋いでいた手が離れる。その紅葉もみじのような小さな手を元気いっぱいに振る子供たちに私も手を振り返した。

「またね。またお母さんのお手伝いをした話を聞かせてね」
「はーい」

清介せいすけ君! あ、いえ、神父様」

 最後の親子に手を振り見送ってると、久しぶりに名前を呼ばれドキッとした。振り返れば、夏の暑い日差しを背に受け農家の仕事を終えたばかりであろう若者がタオルを握りしめ立っている。

 その姿に、自然と頬が緩む。こんなふうに名前を呼ばれるのは久しぶりだった。

 彼の名前は黒田さん。ご両親と十歳以上離れた可愛らしい弟さんとの四人で暮らしている。たしか私と五歳違いだったかな? 年は少し離れているけれど、同じ合唱隊に入っていて、彼を幼い頃からよく知っていた。そんな彼ももうすぐ成人を迎える。あの頃は私よりずっと小さかったのに、今は私の方が彼を見上げなければならない。

 頑丈そうな太い腕を包んだ白いTシャツは汗と埃で汚れている。ジーンズも膝が破れている。きっと仕事の合間に顔を見せてくれたんだろう。

「神父様、あの……」

 彼は手にしたタオルをさらに握り締め、モジモジしながら言った。言いにくそうに目を伏せている。なにか悩みを抱えているらしい。


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