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セデス村
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旅の初日に盗賊に襲われたりと色々あったが、 無事 次の村に到着し フローラは ジャックと明日の約束をして一人で宿屋に泊まることに。
一緒に宿屋に泊まれないことが残念だ 。
(肩の一つでも 揉んであげたかった)
アンディーブだと、バレないから 大丈夫だと誘ったのに かたくなに断られてしまった。 絶対 一緒の方が楽しいし、安全なに・・。
まあ、 でも いいや。 どうせ明日の朝には会えるんだから。
フローラは煤けて汚れた宿屋の天井の梁をなんとなく見ながら 今日を振り返ってジャックに迷惑をかけてしまったと反省する。
お金を払うと言っても 誰一人 協力しても良いと
言ってくれた人は 居なかった。逆に 姉のことは諦めろと 諭された。 だけど、ジャックは 無償で自ら協力するとまで言ってくれた。
初めて自分の理解者が現れたことが嬉しかった。
それに、ずっと一人旅だったから、 話し相手が出来て楽しくてテンションが上がってしまった。
「ふふっ」
ジャックの瞳の奥の 光を見ると、いけない事だと分かっていても 甘えて わがまま言いたくなってしまう。
昨夜のあの戦い思い出すだけで、ドキドキ ワクワクして興奮する。まさか、あんなに強かったなんて 思ってもみなかった。 優しくて 頼りになって
最高のパートナーだ。
(お兄ちゃんが居たら あんな感じなのかな?)
お姉ちゃんも きっとジャックの事 好きに・・。
そう考えた途端 忘れていた厳しい現実が押し寄せてくる。
姉の事を考えると喪失感に つつまれる。
「お姉ちゃん・・」
姉に会えなかったばかりか、売られてしまったなんて・・。
もしかしたら、もう二度と会えないかもと思うと辛くて涙がじわりと瞳を縁取る。もしそうなったら、私は天涯孤独の身に なってしまう。
ジャックの村まで行くのも苦労した。でも、村だから 聞けば誰かが 知ってた。
でも 今度は人だ。探し出せるのか不安になる。
悩みを聞いてほしいのにジャックは ここに居ない。そのことが新たな心配の種になる。
もしかしたら、ジャックも両親や姉のように 私に黙って居なくなるかも・・。
今の私に とってジャックが 希望だ。それが 無くなったら・・。
そう考えると眠れない。 一秒でも早くジャックに会いたい。 でもこれ以上 迷惑かけられない。嫌われてしまったら本当に 居なくなってしまう。
(・・・)
駄目だ。
悪い事ばかり考える自分の気持ちを切り替える。
旅は続くんだから、休息は大事だ。
寝よう。
(大丈夫。ジャックは 私を置き去りにしない)
フローラは心の中で自分に言い聞かせて目を閉じて寝ようとするが、 壁越しに聞こえる物音とか人の気配で何度も目が覚める。
うまく言えないけれど、 こういう物音が不安を掻き立てる。 別に追われる身では 無い。
でも、心がざわつく。
久々に湯船に浸かった。 虫刺されの跡は あったが髪も洗ってさっぱりした。
それなのに寝れない。
安宿のせいか寝返りを打つたびベッドが軋む。
結局、寝返りを打ってばかりで熟睡できなかった。ゆっくりと起き上がるとカーテンを開ける。
かすかに空が白み始めた。 やっと朝だ。
朝ごはん用のパンを買うとフローラは開けきれない空を見ながら、待ち合わせの場所に急ぐ。
*****
コーヒーの匂いに目を覚ますと、いつの間にか隣にフローラが座っている。
(えっ?)
辺りは 薄暗く まだ星も消えてない。
こんなに早くに、どうしたんだと訝しく思いながら起き上がる。
「フローラ。約束の時間には早いぞ」
「 おはようございます」
振り返ったフローラの顔を見て ジャックは唖然とする。
目の下にクマが あって 心なしか顔色も悪い。
「どうしたんだ。その顔は?」
「私、枕が変わると寝れなくて」
いや、いや、それは無い。
昨日も 野宿している。下手な言い訳を言うフローラに、 何か あったのかは 丸わかりだ。
でも、自分からは 言いたくないらしい。
(・・・)
ジャックはフローラの肩を掴んで顔を覗き込む。
「なにが あった?言ってみろ。遠慮はいらない」
「・・・一人だけ宿に泊まるのは気が引けます」
そう言うと俯いて 薪の小枝で地面を削り始める。単に、そうい言う問題では なさそうだ。
どうして素直に理由を言わないんだ?ここは、もう少し話を聞かないと言いそうにない。
「 気にするな。ここは人間の村だ。俺は最初から泊まれない 」
「・・・」
「人間のフローラは、ベッドで寝た方が疲れがとれる」
「私は平気です。野宿には慣れてます」
「・・・」
頑なに 宿屋に 泊まる事を嫌がるフローラを見つめながら その理由を推測する。
もしかして、宿屋で嫌な思いをしたのか?
だからと言ってフローラと一緒に泊まるのは・・。アンデッドと人間という事もあるが、何より男女だ。 同じ部屋に泊まるのは まずいだろ。
「 私のことは気にしないで 寝てください」
「・・・」
フローラの気持ちを読み解こうとすると硬い笑顔を返される。
これ以上 聞いて欲しくない。と言う事なのか俺の両鎖骨を押して寝かせようとする。
ジャックは、その手を掴むと第七頚椎の隆椎と頭蓋骨を左右に動かす。詮索つもりは無い。
それに、休息が必要なのはフローラの方だ。
「フローラこそ寝ろ。火の番は俺がするから」
「でも・・」
なかば強引にフローラの両肩を押すとジャックは有無を言わせず寝かせて自分の上着を掛ける。
それでも起きようとするフローラを押し止める。
「良いから」
「・・・」
ほどなくしてフローラの寝息が聞こえる。
垂れた前髪を耳にかける。すると、フローラが 甘えるように擦り寄ってくると俺の服を掴んで引き寄せる。
その仕草に心細かったんだと、察する。
そんな事に気付かなかった不甲斐ない自分に腹を立てて 歯牙を噛む。女一人で泊まらせるのは危険がつきまとう。
少し考えれば、分かりそうなものだ。一人旅ばかりだったから、連れのことまで考えが及ばなかった。 もっと、フローラを大切に扱わないと。
気付かすごめんよと、自分の前頭骨をフローラの額にコツンと打ち付ける。
**セデス村 **
野宿を続けて2日。
目的のセデス村についたが、人も家も多くて迷子に なりそうだ。
初めて、こんな大きな村に来た。何かあるのか、賑やかだ。
「ジャック。 お祭りでもあるんですか?」
「いいや、これが普通だ」
ジャックの話では半分は村人で、残り半分は旅人らしい。しかも、その3割は私的な旅行らしい。仕事以外で村の外に出るなど考えた事もなかった。村の外の人は思った以上に旅をするんだ。うちの村で外に出かけるのは村長ぐらいだ。
私みたいな貧乏な村の娘は 村から一歩も出ずに一生を過ごすことも珍しくない。
初めて見るものばかりで、物珍しさにフラフラしているとジャックに手招きされる。
「フローラ、こっちだ」
「あっ、はい」
ジャックが 指し示したのは 脇道だ。
どうして、そっちに行くんだろう。理由が分からないままついて行く。
先を行くジャックの後をついていくと 表と違って 馴染みのある普通の家や店が並ぶ場所に出た。
(こう言う所もあるんだ・・)
裏と表。ピンからキリまで。
亡くなったお父さんが同じ町でも二つの顔があると言っていた。こう言う事だったんだ。
しかし、ジャックが もっと奥へ進む。
すると、さっきよりも貧しい暮らしの場所に出た 。廃墟みたいに埃っぽくて人の気配がない。
でも ジャックは、迷いなく歩いて行くところを見ると、お目当ての場所があるんだろう。
不安なまま ついていくとジャックが寂れた酒場に入った。
閑散とした店内を見回す。 お酒とタバコの臭いが染み付いている。
もしかしたら、ここはアンテッドの店?
だから 昼間は客が いないんだろうか?
「 ここで、待っていてくれ」
「はい」
ジャックが、そう言うと 店の奥へ入った行く。
慣れた感じから 何度も利用してるのは間違いない。こんな場所に何の用で出入りしてるんだろう・・。
そういえばジャックが 何の仕事をしてるのか知らない。
強かったから、剣客商売とか?
道が詳しかったから旅人?それとも商人?
どれも ありそうで 、なさそうだ。
今度、聞いてみようかな。 でも・・自分の事を話したく なさそうだから、 素直には答えなさそうだ。聞いても人間みたいに顔色が 分からないから 嘘をつかれても わからないし・・。
う~ん。
どうしたものかと 腕組みして悩む。
顔色が 分からないなら、骨の色を見るとか?
否、 骨の動きを見る方が 分かりやすそう。
とにかく、よく観察して微妙な違いを見つけよう。聞くのは、それからだ。
そんな事を考えていると、戻って来たジャック
が私の手をつかんで外に出る。
「出るぞ」
「何してたんですか?」
「情報を仕入れてた」
「えっ」
嬉しい驚きに思わず立ち止まる。村に 着いたとたん 情報を仕入れるなんて仕事か早い 。
ジャックを頼ったのは間違いじゃなかった。
私たったら 一軒、一軒聞いて回ってた。
(そうか、情報屋に 会ってたのか)
「お姉ちゃんの居場所が 分かったんですか?」
期待してジャックを見る。
しかし、ジャックが首を振ると 何も言わずに表の通りに連れて行かれる。
「 落ち着け。そうじゃない。7日前に、この村に宿泊した金持ちの客の宿屋を聞いてきたんだ」
そう言ってジャックが 小さな紙を開く。
「おぉ!」
フローラはジャックの確かな実力に歓喜の声を上げる。奴隷を買ったぐらいだから、 それなりに お金持ちのはずと考えたわけね。 さすが 目の付け所が違う。
それにしても、あんな短い時間で よく調べられだものだ。
「では、早速」
「 待て!」
歩きだそうとすると、ジャックが私の襟首を掴まれて引き戻さる。
「お前が、聞き込みに行くのは、こっちだ」
そう言ってジャックが、紙を懐から取り出して私に渡す。 何が書いてあるのかと 開くと
『セデス衣装店。 マイラの服屋』と洋服屋の 名前が 二つ書いてある。
何故 洋服屋?
聞き込みするのに着替える必要があるとか?
自分の着ている服を見下ろす。普通では?
行き交う人の服も似たり寄ったりだ。 服を新しく買う意味が分からず首をひねる。
「 洋服屋・・ですか?」
「そうだ。 奴隷を連れて歩くにも、一人だけ汚れてたら目立つから 新しく服を買ったはずだ」
「あっ、なるほど」
フローラは納得とポンと手を打つ。
姉が 拐われたとき 野良仕事の最中だった。
それにアイツらが、わざわざ奴隷のために服を調達するとは思えない。
「 一つは庶民の店。もう一つは高級店だ」
「 了解です。それで、何を聞けばいいんですか?」
意味は分かるが 何をどう聞けば姉の情報を引き出す事になるのか 分からない。
「 聞くことは、ドレスに靴。下着など 洋服一式を買った人間が いないかどうか。 もしかしたら荷物の量が多いから宿泊先に届けてるかもしれない」
そうか、 配達を頼んだなら店の人に 届け先を
伝えているはずだ。
「それなら 名前も聞いてますね」
「そうだな。もしそうでなかったら買いに来た人の 服装とか口調を聞け」
「口調?」
服装ならわかるけど・・。口調?
「お前は知らないだろうが 意外に訛りのある村多いんだ」
「私・・訛りってますか?」
ジャックの言葉に、どきりとする。
ジャックの村の人に訛ってると陰で馬鹿にされてたかもしれない。
ジャックも田舎者だと思ったんだろうか?もしそうなら嫌だ。
「訛りと言うか・・話すスピードが早い」
いままで気づかなかった。でも、訛りで何処の村か 判るなんて、 ジャックは どんな生活を送って来たんだらう。
「ジャックは、何でも知ってるんですね」
「そんな事は いいから。聞き込み行こう。もし空振りだったら 他の方法で 探さないとイケなくなるから、時間が 勿体無い」
そんなことは重要ではないと ジャックに手で追い払われる。
ジャックの秘密主義の態度に少々傷つく。
でも 確かに 世間話をしている時間も惜しい。
まずは 姉の行方を調べないと。
「分かりました。行ってきます」
フローラはジャックに向かって親指を立てると人混みに紛れる。初対面の人と、おしゃべりするのは苦手じゃない。
一緒に宿屋に泊まれないことが残念だ 。
(肩の一つでも 揉んであげたかった)
アンディーブだと、バレないから 大丈夫だと誘ったのに かたくなに断られてしまった。 絶対 一緒の方が楽しいし、安全なに・・。
まあ、 でも いいや。 どうせ明日の朝には会えるんだから。
フローラは煤けて汚れた宿屋の天井の梁をなんとなく見ながら 今日を振り返ってジャックに迷惑をかけてしまったと反省する。
お金を払うと言っても 誰一人 協力しても良いと
言ってくれた人は 居なかった。逆に 姉のことは諦めろと 諭された。 だけど、ジャックは 無償で自ら協力するとまで言ってくれた。
初めて自分の理解者が現れたことが嬉しかった。
それに、ずっと一人旅だったから、 話し相手が出来て楽しくてテンションが上がってしまった。
「ふふっ」
ジャックの瞳の奥の 光を見ると、いけない事だと分かっていても 甘えて わがまま言いたくなってしまう。
昨夜のあの戦い思い出すだけで、ドキドキ ワクワクして興奮する。まさか、あんなに強かったなんて 思ってもみなかった。 優しくて 頼りになって
最高のパートナーだ。
(お兄ちゃんが居たら あんな感じなのかな?)
お姉ちゃんも きっとジャックの事 好きに・・。
そう考えた途端 忘れていた厳しい現実が押し寄せてくる。
姉の事を考えると喪失感に つつまれる。
「お姉ちゃん・・」
姉に会えなかったばかりか、売られてしまったなんて・・。
もしかしたら、もう二度と会えないかもと思うと辛くて涙がじわりと瞳を縁取る。もしそうなったら、私は天涯孤独の身に なってしまう。
ジャックの村まで行くのも苦労した。でも、村だから 聞けば誰かが 知ってた。
でも 今度は人だ。探し出せるのか不安になる。
悩みを聞いてほしいのにジャックは ここに居ない。そのことが新たな心配の種になる。
もしかしたら、ジャックも両親や姉のように 私に黙って居なくなるかも・・。
今の私に とってジャックが 希望だ。それが 無くなったら・・。
そう考えると眠れない。 一秒でも早くジャックに会いたい。 でもこれ以上 迷惑かけられない。嫌われてしまったら本当に 居なくなってしまう。
(・・・)
駄目だ。
悪い事ばかり考える自分の気持ちを切り替える。
旅は続くんだから、休息は大事だ。
寝よう。
(大丈夫。ジャックは 私を置き去りにしない)
フローラは心の中で自分に言い聞かせて目を閉じて寝ようとするが、 壁越しに聞こえる物音とか人の気配で何度も目が覚める。
うまく言えないけれど、 こういう物音が不安を掻き立てる。 別に追われる身では 無い。
でも、心がざわつく。
久々に湯船に浸かった。 虫刺されの跡は あったが髪も洗ってさっぱりした。
それなのに寝れない。
安宿のせいか寝返りを打つたびベッドが軋む。
結局、寝返りを打ってばかりで熟睡できなかった。ゆっくりと起き上がるとカーテンを開ける。
かすかに空が白み始めた。 やっと朝だ。
朝ごはん用のパンを買うとフローラは開けきれない空を見ながら、待ち合わせの場所に急ぐ。
*****
コーヒーの匂いに目を覚ますと、いつの間にか隣にフローラが座っている。
(えっ?)
辺りは 薄暗く まだ星も消えてない。
こんなに早くに、どうしたんだと訝しく思いながら起き上がる。
「フローラ。約束の時間には早いぞ」
「 おはようございます」
振り返ったフローラの顔を見て ジャックは唖然とする。
目の下にクマが あって 心なしか顔色も悪い。
「どうしたんだ。その顔は?」
「私、枕が変わると寝れなくて」
いや、いや、それは無い。
昨日も 野宿している。下手な言い訳を言うフローラに、 何か あったのかは 丸わかりだ。
でも、自分からは 言いたくないらしい。
(・・・)
ジャックはフローラの肩を掴んで顔を覗き込む。
「なにが あった?言ってみろ。遠慮はいらない」
「・・・一人だけ宿に泊まるのは気が引けます」
そう言うと俯いて 薪の小枝で地面を削り始める。単に、そうい言う問題では なさそうだ。
どうして素直に理由を言わないんだ?ここは、もう少し話を聞かないと言いそうにない。
「 気にするな。ここは人間の村だ。俺は最初から泊まれない 」
「・・・」
「人間のフローラは、ベッドで寝た方が疲れがとれる」
「私は平気です。野宿には慣れてます」
「・・・」
頑なに 宿屋に 泊まる事を嫌がるフローラを見つめながら その理由を推測する。
もしかして、宿屋で嫌な思いをしたのか?
だからと言ってフローラと一緒に泊まるのは・・。アンデッドと人間という事もあるが、何より男女だ。 同じ部屋に泊まるのは まずいだろ。
「 私のことは気にしないで 寝てください」
「・・・」
フローラの気持ちを読み解こうとすると硬い笑顔を返される。
これ以上 聞いて欲しくない。と言う事なのか俺の両鎖骨を押して寝かせようとする。
ジャックは、その手を掴むと第七頚椎の隆椎と頭蓋骨を左右に動かす。詮索つもりは無い。
それに、休息が必要なのはフローラの方だ。
「フローラこそ寝ろ。火の番は俺がするから」
「でも・・」
なかば強引にフローラの両肩を押すとジャックは有無を言わせず寝かせて自分の上着を掛ける。
それでも起きようとするフローラを押し止める。
「良いから」
「・・・」
ほどなくしてフローラの寝息が聞こえる。
垂れた前髪を耳にかける。すると、フローラが 甘えるように擦り寄ってくると俺の服を掴んで引き寄せる。
その仕草に心細かったんだと、察する。
そんな事に気付かなかった不甲斐ない自分に腹を立てて 歯牙を噛む。女一人で泊まらせるのは危険がつきまとう。
少し考えれば、分かりそうなものだ。一人旅ばかりだったから、連れのことまで考えが及ばなかった。 もっと、フローラを大切に扱わないと。
気付かすごめんよと、自分の前頭骨をフローラの額にコツンと打ち付ける。
**セデス村 **
野宿を続けて2日。
目的のセデス村についたが、人も家も多くて迷子に なりそうだ。
初めて、こんな大きな村に来た。何かあるのか、賑やかだ。
「ジャック。 お祭りでもあるんですか?」
「いいや、これが普通だ」
ジャックの話では半分は村人で、残り半分は旅人らしい。しかも、その3割は私的な旅行らしい。仕事以外で村の外に出るなど考えた事もなかった。村の外の人は思った以上に旅をするんだ。うちの村で外に出かけるのは村長ぐらいだ。
私みたいな貧乏な村の娘は 村から一歩も出ずに一生を過ごすことも珍しくない。
初めて見るものばかりで、物珍しさにフラフラしているとジャックに手招きされる。
「フローラ、こっちだ」
「あっ、はい」
ジャックが 指し示したのは 脇道だ。
どうして、そっちに行くんだろう。理由が分からないままついて行く。
先を行くジャックの後をついていくと 表と違って 馴染みのある普通の家や店が並ぶ場所に出た。
(こう言う所もあるんだ・・)
裏と表。ピンからキリまで。
亡くなったお父さんが同じ町でも二つの顔があると言っていた。こう言う事だったんだ。
しかし、ジャックが もっと奥へ進む。
すると、さっきよりも貧しい暮らしの場所に出た 。廃墟みたいに埃っぽくて人の気配がない。
でも ジャックは、迷いなく歩いて行くところを見ると、お目当ての場所があるんだろう。
不安なまま ついていくとジャックが寂れた酒場に入った。
閑散とした店内を見回す。 お酒とタバコの臭いが染み付いている。
もしかしたら、ここはアンテッドの店?
だから 昼間は客が いないんだろうか?
「 ここで、待っていてくれ」
「はい」
ジャックが、そう言うと 店の奥へ入った行く。
慣れた感じから 何度も利用してるのは間違いない。こんな場所に何の用で出入りしてるんだろう・・。
そういえばジャックが 何の仕事をしてるのか知らない。
強かったから、剣客商売とか?
道が詳しかったから旅人?それとも商人?
どれも ありそうで 、なさそうだ。
今度、聞いてみようかな。 でも・・自分の事を話したく なさそうだから、 素直には答えなさそうだ。聞いても人間みたいに顔色が 分からないから 嘘をつかれても わからないし・・。
う~ん。
どうしたものかと 腕組みして悩む。
顔色が 分からないなら、骨の色を見るとか?
否、 骨の動きを見る方が 分かりやすそう。
とにかく、よく観察して微妙な違いを見つけよう。聞くのは、それからだ。
そんな事を考えていると、戻って来たジャック
が私の手をつかんで外に出る。
「出るぞ」
「何してたんですか?」
「情報を仕入れてた」
「えっ」
嬉しい驚きに思わず立ち止まる。村に 着いたとたん 情報を仕入れるなんて仕事か早い 。
ジャックを頼ったのは間違いじゃなかった。
私たったら 一軒、一軒聞いて回ってた。
(そうか、情報屋に 会ってたのか)
「お姉ちゃんの居場所が 分かったんですか?」
期待してジャックを見る。
しかし、ジャックが首を振ると 何も言わずに表の通りに連れて行かれる。
「 落ち着け。そうじゃない。7日前に、この村に宿泊した金持ちの客の宿屋を聞いてきたんだ」
そう言ってジャックが 小さな紙を開く。
「おぉ!」
フローラはジャックの確かな実力に歓喜の声を上げる。奴隷を買ったぐらいだから、 それなりに お金持ちのはずと考えたわけね。 さすが 目の付け所が違う。
それにしても、あんな短い時間で よく調べられだものだ。
「では、早速」
「 待て!」
歩きだそうとすると、ジャックが私の襟首を掴まれて引き戻さる。
「お前が、聞き込みに行くのは、こっちだ」
そう言ってジャックが、紙を懐から取り出して私に渡す。 何が書いてあるのかと 開くと
『セデス衣装店。 マイラの服屋』と洋服屋の 名前が 二つ書いてある。
何故 洋服屋?
聞き込みするのに着替える必要があるとか?
自分の着ている服を見下ろす。普通では?
行き交う人の服も似たり寄ったりだ。 服を新しく買う意味が分からず首をひねる。
「 洋服屋・・ですか?」
「そうだ。 奴隷を連れて歩くにも、一人だけ汚れてたら目立つから 新しく服を買ったはずだ」
「あっ、なるほど」
フローラは納得とポンと手を打つ。
姉が 拐われたとき 野良仕事の最中だった。
それにアイツらが、わざわざ奴隷のために服を調達するとは思えない。
「 一つは庶民の店。もう一つは高級店だ」
「 了解です。それで、何を聞けばいいんですか?」
意味は分かるが 何をどう聞けば姉の情報を引き出す事になるのか 分からない。
「 聞くことは、ドレスに靴。下着など 洋服一式を買った人間が いないかどうか。 もしかしたら荷物の量が多いから宿泊先に届けてるかもしれない」
そうか、 配達を頼んだなら店の人に 届け先を
伝えているはずだ。
「それなら 名前も聞いてますね」
「そうだな。もしそうでなかったら買いに来た人の 服装とか口調を聞け」
「口調?」
服装ならわかるけど・・。口調?
「お前は知らないだろうが 意外に訛りのある村多いんだ」
「私・・訛りってますか?」
ジャックの言葉に、どきりとする。
ジャックの村の人に訛ってると陰で馬鹿にされてたかもしれない。
ジャックも田舎者だと思ったんだろうか?もしそうなら嫌だ。
「訛りと言うか・・話すスピードが早い」
いままで気づかなかった。でも、訛りで何処の村か 判るなんて、 ジャックは どんな生活を送って来たんだらう。
「ジャックは、何でも知ってるんですね」
「そんな事は いいから。聞き込み行こう。もし空振りだったら 他の方法で 探さないとイケなくなるから、時間が 勿体無い」
そんなことは重要ではないと ジャックに手で追い払われる。
ジャックの秘密主義の態度に少々傷つく。
でも 確かに 世間話をしている時間も惜しい。
まずは 姉の行方を調べないと。
「分かりました。行ってきます」
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