お人好しアンデッドと フローラの旅は道連れ世は情け。 骨まで愛してる。

あべ鈴峰

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救出作戦・その2

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犯人の馬車で モントス村に無事潜入することに成功したフローラは、リンダを連れて そのまま犯人の男の後をついていく。

 建物と建物の間をぬって 男が 何の変哲もない大きな倉庫のような建物に入っていく。
 ここに村人たちが 捕らわれてるの?  その割には見張りの人間もいないし、 厳重な作りにもなっていない。
( ホントに、ここが そう?)
 首をひねって建物を見上げていると 男がすぐに倉庫から出てきて 来た道を戻っていく。
 手には何も持っていない。 ただ 袋を置きに来ただけだのようだ。
 男の後を追うべき・・。
 いや、今は倉庫の中を確認する方を優先しよう。


 リンダを待たせて 一人で倉庫の前まで来た。
扉に耳を押し当ててみる。
(・・・)
何の音もしない。中に誰も居ないようだ。
ダメ元で 倉庫のドアノブを回すとスムーズに動く。鍵が かかってない。
 アンデッドの胴体だから盗まれないと思っているのか、それとも価値がない物しか保管して無いのか・・。
「・・・」

いや、相手は誘拐犯だ。
もしかしたら、鍵の代わりに魔法陣が仕掛けてあるのかもしれない。確かめる為にリンダを呼び寄せる。
「リンダ。 ゆっくりとこっちに来てみて」
 リンダが頷くと 一歩一歩 確かめるように、こっちに向かってくれる。  しかし、魔法陣の仕掛けも無かった。

倉庫の中に入ると 同じような袋が 山積みになっている。 100や200の数じゃない。
「 これは何?」
手近にあった袋を開けると アンデッドとの胴体と
服が入っている。 何個か調べたが、やはりどの袋の中にも 頭がなくて胴体と服だけだ。私と同じように 袋を調べているリンダに 声をかける。
「リンダ。頭が入っているのあった?」
「ううん。 みんな体だけ」
 フローラは部屋をグルリと見回す。
ここにある袋全部アンデッドたちの体だ。
(この数・・)
 リンダの村だけじゃない。他のアンデットの村からも同じように拐ってるんだ。


 きっと、頭は別の場所に保管されてるにちがいない。
「ふむ・・」
 この村のどこかに、ジャックの頭があるのは間違いない。 しかし、どこを探したらいいのか・・。
 何か手がかりになるようなものが、あればいいんだけど・・。
「リンダ。 お父さんの気配とか感じない?」
「ううん」
感じないとリンダが首を振る。
 ここに来て行き詰ってしまった。どうしよう・・。

リンダを見ると 期待していただけに、 私以上にしょんぼりしている。 それを見て自分の頬を叩く。 私は弱気になってどうする。 年上の私が、しっかりしなくちゃ。
『力になってくれたジャックを見捨てるの?』
 そう自分に聞いて、諦めそうになる自分を奮い立たせる。 道は ある。
 ・・とは言え策があるわけでは無い。
(こんな時ジャックだったら?・・)
そうだ。
ジャックを見習って、聞き込みしよう。そうしよう。 しかし、これだけ大きな村だ調べるのにしても時間がかかる。
そうなると・・。

俯いて 小石を蹴っているリンダを見流す。
 リンダが不安がるだろうが 一緒には連れて行けない。待ってもらうしかない。
 フローラはリンダを説得しようと両肩に手を置く。
「リンダ。良く聞いて。 ちょっと出掛けるから、ここに隠れてて欲しいの」
「嫌だ。一緒に行く」
「 すぐに戻ってくるから。ねっ」
「駄目。ついて行く」
リンダが私の袖を掴んで地団駄を踏んで嫌がる。 リンダの気持ちは十分理解できる。 見知らぬ場所に、ひとりぼっちにされるなんて 私だって心細い。 でも、情にほだされて 連れて歩いたら、 それこそ危険だ。

 フローラは 心を鬼にして 連れていけないと首を横に振る。 どんなに不安でも耐えてもらうしかない。
「駄目! ここは人間の村だよ。 見つかったら大変なことになるんだから」
「 大丈夫。見つからないようにする。 私、かくれんぼは得意だもん」
「・・・」
 しかし、リンダが絶対 ついていくと私の服を掴んで離さない。  フローラは自分の気持ちを伝えようと 身を屈めてリンダと目を合わせる。
「 お姉ちゃんを信じて、待ってて」

「・・ お父さんも そう言ったけど。 戻ってこなかったもん」
「 リンダ・・」
 お父さんの事があるから、私も戻ってこないかもと心配なんだ。 そうなったら、人間の村で一人取り残される。 もしかしたら、ジャックにもリンダのお父さんの 二人とも見つからないかもしれない。もしそうなったら リンダの面倒は私を見よう。 それが私にできる責任の取り方だ。

 フローラはジャックの胴体が入っている袋を肩
 から外すとリンダに渡す。
「 じゃあ、お姉ちゃんが一番大切にしているお兄ちゃんの体を預ける。どう、 これなら信じてくれる?」
「・・・」
 リンダがジャックの胴体の入った袋をじっと見ていたが、納得できたのか私を見る。
「 わかった。待ってる。でも、絶対に戻ってきてね」
 リンダに我慢を強いることに 罪悪感を抱く。
 しかし、 フローラは立ち上がると笑顔でリンダに向かって親指を立てる。
「 任せて!」

*****

「倉庫、倉庫。 倉庫は何処だ?」
胴体の入った袋の数が 数百なら、頭も数百ある。 となると 、それなりに大きい倉庫のはずだ。そう思って それらしい大きさの建物を探して 辺りを見回していると 急に背後から声をかけられた。
「 おい!」
「はっ、 はい!」
ドキン!
 心臓が口から飛び出る。
完全に気を抜いていた。 逃げ出したくなるのを堪えて 振り返ると 中年のおじさんが立っている。表情から怒ってはいないと読み取れる。
(良かった・・)

 よそ者だと気付いて 呼び止めたんじゃない。
「びっ、びっくりさせないでくださいよ」
 胸を押さえて変な態度をとった事を誤魔化す。
すると、おじさんが 悪かったと言うように笑い出した。
「はっ、はっ、はっ。 驚かせたか。心配することはない。アイツらが勝手に動いたりしない」
(アイツら?)
 話しの内容からしてジャックたちの事らしい。
この村ではアンデッドを囲っていることは秘密じゃないんだ。
とい言うことは、 村の人全員が何らかの形で関与しているということ?もしそうなら、なかなか大がかりなこ事をしているのかもしれない。

 いい具合に勘違いしてくれたし 探りを入れてみよう。
「 本当ですか? 私。怖くて 」
「大丈夫だ。頭と胴体が別々に保管されてるかぎり襲ったりしないらしい」
 ビンゴ! 
やっぱり別々の倉庫に置いてあるんだ。
「 そんな事だけで、動けなくなるもんですかね~。 信じられないです」
「 ああ、そうだ 。デイビットの話じゃ。そうらしい」
(デイビット?その人が 主犯ね)

 もっと聞きたいところだが、これ以上しつこく聞いてボロが出るとまずい。ここら辺で 聞き込みを切り上げよう。
「 そうなんですから。それなら平気ですね。あっ、そう言えば、何の用ですか?」
「ああ、 サムのところに昼食は運んでくれ。 忙しくて食べてないらしい」
「 わかりました」
 元気よく返事をすると おじさんの姿が見えなくなるまで見送る。
ばれなかったと 心の中で、ほっとする。

大きな村だから 使用人も多い。 だから見知らぬ人がいても誰も気に留めないんだ。
都会ならではの事情だ。 田舎だったら考えられない。 フローラは用を言い付けられたことで、 逆に堂々と歩き回せると、人の出入りの ある方へ歩きます。
 声をかけられた道に迷ったと言えばいい。

ふらふらと探し回っていたが、 あることを思いついて一番高い建物に登ると 建物の位置関係を見る。 こうすれば調べる建物を絞り込める。
 頭が保管されている建物は みんなが怖がるから敷地の外れにあるはず。
「あそこが・・ 胴体があった倉庫だから・・」
「 ここで何してるの?」
ドキッ!
 今度は女の人の声だ。

平静を装って振り返ると見るらかにキツそうなおばさんがが立っている。 村のお節介やのサリーおばさんと 同じ臭いがする。
フローラは正直に サムに昼食を届けたいが 、アンデッドの頭のある建物のそばを通りたくないから、道順を考えていたと 言うと。説教 と共に頭の保管されている倉庫の場所を丁寧に教えてくれた。村の秘密を簡単にバラすことに驚いたが、 よく考えれば アンデッドを助ける人間がいるとは 誰も予想しない。 礼を言って、その場を去ると、 後で 怪しまれないように、 おじさんの言いつけを守って サムに昼食を届けた。


「ただいま」
 フローラはその足でリンダを迎えに行くと飛びつくように抱きつかれた。
「お姉ちゃん!お帰り」
その力 強さに よほど不安だったんだと感じて 宥めるように 背中をさする。
自分じゃ、そんなに時間が、 かかってないと思っても 、待つ方からしたらすごく長く感じたんだろう。リンダが 我慢してくれたおかげで、情報が手に入ったと 成果を伝える。
「リンダ。 お父さんたちの 頭のある所へ行こう」
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