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【完結】皇帝ペンギン【甘め/微ハーレム】
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「ぱ」
尋斗の声で目が覚めた。
とろとろと意識が浮上してきて、ザァッと血の気が引く。
今何時だっ?!
がばっと身体を起こしてから、今日は土曜だったことを思い出してふっと力が抜けた。
壁に掛かった時計を見ると、もう8時を回っていた。いつもなら6時には起きて尋斗の朝ごはんを作るから、今日は随分寝坊してしまったらしい。
「尋斗、ごめん。お腹空いたよな」
久々に、泥のように眠ったことで身体が軽かった。
…いや、腰回りが重い。
身体の不調で、昨日あったことを思い出した。思い出して、腹の奥がきゅんと疼いた。
「っ…」
まだ何か入ってるような感じがする。
どうしよう。昨日俺は、先生と…。
目が覚めるにつれて蘇って来た記憶に心臓がどきどきと早鐘を打ち始めた。最初から最後までしっかり回想して、最後に先生が囁いた言葉を思い出す。
あれは、そういう意味…としか取れないよな。まさか。どうして。
じゃれる尋斗を無意識であやしながら一人でぐるぐると考えていると、寝室のドアがゆっくり開いた。
「あ、起きました?おはようございます」
ドアの隙間から顔を覗かせた先生は、昨日のアレコレが夢だったかのようにいつも通りのほんわかした笑顔を浮かべている。
「勝手にご飯作っちゃいました。尋斗くん、おいで。ご飯食べようね」
ふらふらと立ち上がって歩き出す尋斗を急かすこともなくドアの向こうで待っている先生を見つめると、先生は俺を見つめ返して優し気に微笑んだ。
「…動けますか?まだ寝てても構いませんよ?」
気恥ずかしい気遣いに頬が熱くなる。首を振りながら立ち上がると、自分が最低限の服しか着てないのに気付いた。
「すみません。パジャマまでは着せてあげれなくて」
俺が気を失った後、先生は俺の身なりを整えて布団まで運んでくれたらしい。手間を掛けてしまった。よく運べたな。凄い。
酷く恐縮したが、今は尋斗の朝食だ。いつもより1時間も遅れている。あんまり遅くなると昼食に響く。
とりあえず服を着て、朝日奈先生に促されるようにして食卓に着くと、そこには湯気の立つ朝食が用意されていた。感動だ。
「いただきます」と手を合わせて、尋斗を見ながら3人で食事をとる。外食以外で人の作った料理を食べるのはいつぶりだろう。胸が熱くなった。
「今日のご予定は?」
聞かれて、今日は東とプレイパークに行く約束をしているのを思い出した。準備をしないと。
そのことを伝えると、先生はちょっと残念そうに眉尻を下げた。
「じゃあ、夕方、また来てもいいですか?昨日のことも、お話したいですし…」
昨日のこと。それは多分、あの発言についてだろう。俺もちゃんと話がしたい。
先生は好きと言った。愛してると。どうして、とか、いつから、とか、いろんな疑問が浮かぶ。
頷いて了承の意を示すと、先生はいつものほんわかした笑顔に戻った。
「全部、本気です。また夜にゆっくり」
…プレイパーク、楽しめるだろうか。
「…なんで朝日奈先生がいるんだ」
約束通り昼前に俺の家に来た東が胡乱な目で尋斗を抱っこした先生を見ている。
東は俺の代わりにお迎えに行ってくれることもあるから、先生とは顔見知りだ。
「昨日、千尋さんがあんまりにもお疲れの様子だったんでお手伝いに。色々と」
言いながら、朝日奈先生は口元にちょっとだけ意地悪気にも見える笑みを浮かべて東を見た。
「…"ちひろさん"…?」
東がもの言いたげに俺を見る。
言いたいことはわかる。いくら仕事で参ってたからって一個人がみんなの保育士先生に家の手伝いさせるなんてありえないよな。
あまつさえ、あんな…。
色々思い出してしまって顔が熱くなる。
「…なんで俺に言わないんだよ…」
東はちょっと寂しそうな顔をして、先生の手から尋斗を受け取った。
だって、今日だって世話になるわけだし、昨日はたまたま先生が声掛けてくれたってだけで、本当は一人で頑張るつもりだった。
「千尋さんは自分から頼れる人じゃないですよ。…一緒に働いてるくせにわかってなかったんですか?」
先生の物言いにぎょっとした。その言い方はちょっと。え、なんで喧嘩売ってるの。
「…その、"千尋さん"っていうのは?」
東も買う気満々の顔をしている。どうしたんだ2人とも。落ち着いてくれ。
間に挟まれておろおろと2人の顔を交互に見る。
「ご想像にお任せします」
朝日奈先生はそう言ってにっこり笑った。尋斗もにっこり笑って東に愛想をしているけど、ちょっと、笑顔の質が違う。助けてくれ尋斗。
「…千尋、ゆっくり聞かせてくれ」
……プレイパーク、楽しめるだろうか。
尋斗の声で目が覚めた。
とろとろと意識が浮上してきて、ザァッと血の気が引く。
今何時だっ?!
がばっと身体を起こしてから、今日は土曜だったことを思い出してふっと力が抜けた。
壁に掛かった時計を見ると、もう8時を回っていた。いつもなら6時には起きて尋斗の朝ごはんを作るから、今日は随分寝坊してしまったらしい。
「尋斗、ごめん。お腹空いたよな」
久々に、泥のように眠ったことで身体が軽かった。
…いや、腰回りが重い。
身体の不調で、昨日あったことを思い出した。思い出して、腹の奥がきゅんと疼いた。
「っ…」
まだ何か入ってるような感じがする。
どうしよう。昨日俺は、先生と…。
目が覚めるにつれて蘇って来た記憶に心臓がどきどきと早鐘を打ち始めた。最初から最後までしっかり回想して、最後に先生が囁いた言葉を思い出す。
あれは、そういう意味…としか取れないよな。まさか。どうして。
じゃれる尋斗を無意識であやしながら一人でぐるぐると考えていると、寝室のドアがゆっくり開いた。
「あ、起きました?おはようございます」
ドアの隙間から顔を覗かせた先生は、昨日のアレコレが夢だったかのようにいつも通りのほんわかした笑顔を浮かべている。
「勝手にご飯作っちゃいました。尋斗くん、おいで。ご飯食べようね」
ふらふらと立ち上がって歩き出す尋斗を急かすこともなくドアの向こうで待っている先生を見つめると、先生は俺を見つめ返して優し気に微笑んだ。
「…動けますか?まだ寝てても構いませんよ?」
気恥ずかしい気遣いに頬が熱くなる。首を振りながら立ち上がると、自分が最低限の服しか着てないのに気付いた。
「すみません。パジャマまでは着せてあげれなくて」
俺が気を失った後、先生は俺の身なりを整えて布団まで運んでくれたらしい。手間を掛けてしまった。よく運べたな。凄い。
酷く恐縮したが、今は尋斗の朝食だ。いつもより1時間も遅れている。あんまり遅くなると昼食に響く。
とりあえず服を着て、朝日奈先生に促されるようにして食卓に着くと、そこには湯気の立つ朝食が用意されていた。感動だ。
「いただきます」と手を合わせて、尋斗を見ながら3人で食事をとる。外食以外で人の作った料理を食べるのはいつぶりだろう。胸が熱くなった。
「今日のご予定は?」
聞かれて、今日は東とプレイパークに行く約束をしているのを思い出した。準備をしないと。
そのことを伝えると、先生はちょっと残念そうに眉尻を下げた。
「じゃあ、夕方、また来てもいいですか?昨日のことも、お話したいですし…」
昨日のこと。それは多分、あの発言についてだろう。俺もちゃんと話がしたい。
先生は好きと言った。愛してると。どうして、とか、いつから、とか、いろんな疑問が浮かぶ。
頷いて了承の意を示すと、先生はいつものほんわかした笑顔に戻った。
「全部、本気です。また夜にゆっくり」
…プレイパーク、楽しめるだろうか。
「…なんで朝日奈先生がいるんだ」
約束通り昼前に俺の家に来た東が胡乱な目で尋斗を抱っこした先生を見ている。
東は俺の代わりにお迎えに行ってくれることもあるから、先生とは顔見知りだ。
「昨日、千尋さんがあんまりにもお疲れの様子だったんでお手伝いに。色々と」
言いながら、朝日奈先生は口元にちょっとだけ意地悪気にも見える笑みを浮かべて東を見た。
「…"ちひろさん"…?」
東がもの言いたげに俺を見る。
言いたいことはわかる。いくら仕事で参ってたからって一個人がみんなの保育士先生に家の手伝いさせるなんてありえないよな。
あまつさえ、あんな…。
色々思い出してしまって顔が熱くなる。
「…なんで俺に言わないんだよ…」
東はちょっと寂しそうな顔をして、先生の手から尋斗を受け取った。
だって、今日だって世話になるわけだし、昨日はたまたま先生が声掛けてくれたってだけで、本当は一人で頑張るつもりだった。
「千尋さんは自分から頼れる人じゃないですよ。…一緒に働いてるくせにわかってなかったんですか?」
先生の物言いにぎょっとした。その言い方はちょっと。え、なんで喧嘩売ってるの。
「…その、"千尋さん"っていうのは?」
東も買う気満々の顔をしている。どうしたんだ2人とも。落ち着いてくれ。
間に挟まれておろおろと2人の顔を交互に見る。
「ご想像にお任せします」
朝日奈先生はそう言ってにっこり笑った。尋斗もにっこり笑って東に愛想をしているけど、ちょっと、笑顔の質が違う。助けてくれ尋斗。
「…千尋、ゆっくり聞かせてくれ」
……プレイパーク、楽しめるだろうか。
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